ビジネス文書のススメ・上巻

*** 上巻・ビジネス文書って何だろう ***

これまで繰り返し使っている
「ビジネス文書」という単語ですが
ここで本書における定義を決めておきましょう。

その前に、ビジネスと文書という単語を
オンライン辞書で調べてみるに、

・ビジネス  仕事、職業、事業、商売
・文書    文字で書き記したものの総称、書き物

という解説が書かれてました。

これらを組み合わせて考えてみるに、
ビジネス文書とは「仕事において作成される書き物」
それらの総称であると言えます。

が、いまいちピンと来ませんね。
では、例えばどんなものがあるかと言うと、

・企画書
・報告書
・議事録

まずはこんなところでしょうか。

***

ドラマとかで「こんな企画書が通るわけないだろ」とか
怒鳴っている登場人物を見た記憶がありますが
「上司であるお前の指導が悪いからやろ」と思ってます。

で、主人公は「良い考えが思い浮かばない」とか
ウンウン言いながら机の前で悩むわけですが
「企画は突然思い付くものじゃないぞ」とも思ってます。

***

話を元に戻しますと、

ビジネス文書にはそれぞれ役割があります。
決して、仕事している感を味わうために
暇なおじさんや若手が何となく作るものではありません。

本章では、その役割などを分かりやすく
代表的なビジネス文書を図鑑のように紹介いたします。

そして、次の中巻で
企業の事業活動における一連の流れの中で
誰がビジネス文書を作り、誰がそれを読み、
事業活動にどう影響するのかを解説いたします。

***

とりあえず、主なものを10種類取り上げました。
五十音順で大まかに紹介いたします。

(1)アンケート
 -目的 世間の方々の本音、評価、要望を探る
 -その後の展開 回答内容に基づき、商品開発やサービス改善に反映する
 -主な作成者 マーケター
 -作成時の留意点
  得たい情報、仮説の検証に適した
  質問が設定されていること
 -備考
  アンケート実施時の要点を掴むならば
  専門の解説書を読むのも良いですし、
  企業主催の無料セミナーに参加するのもお薦めです。

(2)企画書
 -目的 新しい案をまとめ、上位者などに伝える
 -その後の展開 該当する決裁者の承認を得て、案を実現する
 -主な作成者 事業開発、商品開発、マーケター、営業
 -作成時の留意点
  自社ならではの強みを活かして、
  顧客の要望を実現する案であること
 -備考 
  企画書と提案書(後述)の違いですが、
  企画書は社内向け、提案書は社外向けだと
  考えれば整理しやすいと思います。

  企画提案書も世の中には存在しますが
  自治体などの受託事業でよく見られ
  「受注したら全て代行する」というものです。
  ゆえに企画書と提案書、両方の要素を含みます。

(3)議事録
 -目的 会議や商談内容を要約し、次の「5W1H」を明確にする
 -その後の展開 明確にされた「5W1H」の達成を目指す
 -主な作成者 営業など会議や商談に参加する方々
 -作成時の留意点
  単なる録音テープの書き起こしではなく、
  議題ごとにまとめ、発言内容を要約するなど
  参加していない人が短時間で読めて要点が把握できること
 -備考 
  備忘録としての役割も担っているため、
  正確に記述しておく必要があります。
  厳密には発言者全員のレビュー(査閲)を受けた上で
  最終版が確定となりますが、それは稀でしょう。
  一般的には作成者の上位者レビューを経て確定とします。

(4)契約書
 -目的 関係各位が同意した内容を明文化する
 -その後の展開 記載された目標達成のために協力する
 -主な作成者 営業、マーケター、法務担当者
 -作成時の留意点
  当社の思惑が正しく文書に反映されていること
  また、もし何らかの問題が発生した場合でも
  関係各位が納得いく結論に落ち着けそうなこと
 -備考
  「秘密保持契約(NDA)」「覚書」も契約書の一種です。

(5)セールスツール
 ※例えばチラシ、カタログ、パンフレットなど。
 -目的 商品、サービスの良さを伝えて売上に繋げる
 -その後の展開 営業などを通じて顧客に届け、見てもらう
 -主な作成者 商品開発、マーケター、営業企画
 -作成時の留意点
  誰に対して何を訴えているのかが一目でわかること
  訴えている内容が、顧客の要望と一致しており
  最終的に顧客の利益に結び付いていること
 -備考
  自画自賛のお絵描きにならないよう注意が必要です。
  実際に制作する際にはデザイナーと調整するでしょうが
  見栄えも大切にしつつ、売上に繋がるか否か判断しましょう。

(6)電子メール
 ※文書の種類ではなく、伝達手段なのですが
  ここでしか触れる機会がなさそうなので
  わざと記載しております。
 -目的 いわゆるホウレンソウ(報告、連絡、相談)のため
   報告 依頼事項に対する回答として、事実や所感を他人に伝える
   連絡 依頼はなかったが、重要であろう事実や所感を他人に伝える
   相談 質問や依頼など、相手からの意見を求める
 -その後の展開
   報告 依頼主からの指示を待つ、もしくは次の行動を提案する
   連絡 上位者などからの指示を待つ、もしくは次の行動を提案する
   相談 相手からの回答内容を受けて、次の行動を決定する
 -主な作成者 ほぼ全員
 -作成時の留意点
   件名 内容を推測できる単語が含まれていると親切でしょう
    例:(報告)A社の市場シェア調査
      (連絡)B社とC社の協業が今朝発表
      (相談)弊社主催イベントでの協賛
   内容 明確な結論を先に書いた後に補足情報を記載すると親切
      また、事実とそれ以外(所感、意見、感想、個人の希望)とは
      きちんと分けた上で、主語を明記することもお忘れなく。
 -備考
  電子メールの書くコツはそれだけで1冊本が書けちゃうので
  ここでは最小限の解説に留めます。
  そのような本が既に世の中に出回っているのでそちらをご覧下さい。

(7)調査資料
 -目的 今後、必要になると思われる情報を入手、整理し活用するため
 -その後の展開 企画書や提案書などにおける根拠として利用される
 -主な作成者 マーケター、営業企画
 -作成時の留意点
  正しい情報、信頼できる情報、一次情報に基づくこと
  例:官公庁や公的機関の発表資料、新聞社の報道
  Wikipediaや個人ブログなどは誰でも書くことが出来るため
  信頼度は低く、調査資料を作成する際の参照元としては相応しくない
 -備考
  調査資料を作成することが目的にならないよう注意が必要。
  何のためにこれらの情報をとりまとめる必要があるのか、
  に関して事前に把握しておくことをお勧めします。

(8)提案書
 -目的 社外の方々に意見し、関係各位が利益を得る仕組みを作るため
 -その後の展開 本提案の実現に向けて、必要な資源を調達する
 -主な作成者 営業、マーケター、事業戦略
 -作成時の留意点
  自社の主張を一方的に押し付けるのではなく
  関係各位の背景や立場を理解した上で
  それぞれの利益を生み出すことに繋がる内容であること
 -備考
  定性的な結論ではなく、定量的であり、
  良い数値を伸ばす/上げる(悪い数値を減らす/下げる)という
  効果が明記されているかが非常に重要です。
  「貴社のために全力で頑張ります」は提案ではありません。

(9)報告書
 -目的 実施された施策の目標と実績を比べ、その効果を検証するため
 -その後の展開 予め立てた仮説の検証や、改善の立案に活用する
 -主な作成者 営業、マーケター、商品開発
 -作成時の留意点
  客観的な事実に基づく数値や情報を掲載すること
  また、報告者や作成者の所感や感想などを記載する場合は
  主語を明確にした上で報告内容と別にまとめること
 -備考
  報告書を作成する場合、忘れられがちなのが
  「誰から」「誰に」向けた報告なのか、という観点です。
  これを見誤ってしまうと頓珍漢な内容になるかも知れません。

  また時には報告された人が報告する人として同じ報告書を
  別の人(上司の上司など)に見せることもあり得ます。
  報告書の作成を依頼されるというのは上司からの信頼の証でしょう。

(10)稟議書
 -目的 施策実施に必要な経費を会社に負担してもらうため
 -その後の展開 施策を滞りなく実施し、結果を報告する
 -主な作成者 営業、マーケター、事業開発、商品開発
 -作成時の留意点
  経費が必要となる理由を誰が見ても分かるように記載すること
  また、その経費の金額に見合った定量的な見返りが
  今後得られるであろうと判断した根拠も併せて記載すること
 -備考
  経理の方がこれを読んで承認するかを判断すると思われるので
  専門用語の私用や小難しい表現はなるべく避けた上で、
  適切な費用対効果があることを訴えましょう。

その他にもビジネス文書は沢山あるのでしょうが
一旦、これらに限って話を進めたいと思います。

***

ビジネス文書を10種類も並べられたところで
だから何なんだ、よく分からんぞ、余計に混乱するわ
と思われるかも知れません。

それはそれで当然だと思います。

但し、これらを個別に並べて
「はい、おしまい」とするつもりはありません。

これらを体系付けて解説するところに
本書の値打ちがあると思っております。
そして、体系付けることで

「あ、だから議事録って大事なのか」
「あ、だから企画書ってそういう構成になってるのか」

と納得していただけるとも思っております。
騙されたと思って読み続けてみて下さい。

それでは「ビジネス文書のススメ」
中巻に続きます。

追伸

決裁権を持った社長や業界の超大物でもない限り
庶民個人の力量で出来るお仕事なんて
基本的には、たかが知れているわけです。

しかし、ビジネス文書を正しく理解し、扱うことで
上司や会社、時には他の会社などを巻き込み
個人の力量以上のお仕事を動かせることも出来ちゃいます。

まさしく、漫画「キングダム」の世界でありまして
一雑兵からどのように将軍となるのか。
そういう観点でもビジネス文書は必須科目だと思いますw


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