運命は叩扉するか

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 運命が扉を叩いた、とは作り話らしい。私の運命も扉を叩かなかった。光より速く私の胸に飛び込んできて、気づけば運命を家に連れ帰っていた。矯めつ眇めつして写真を撮り、SNSにアップし、存分に眺め、やってやったぜという気分で眠った。
 運命は餌を食べない。鳴かず、散歩も不要。構う必要はないが構ってしまう。おまえは美しい子だねと呟く。写真にたくさんいいねがついた。
 運命は語らない。歌わない。これが運命だと保証するものは私の直感だけ。私が運命を選んだのか、それとも運命に選ばれたのか。はたまた溶鉱炉で見る幻か。
 運命は手元にあるが、私の前に道はない。たぶん運命ってそういうものだ。あなたの運命はどんなかたちだろうか。


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