概念の仁王を掘り出す話(小説執筆にまつわるあれこれ)

ちょっと間が空いてしまいました。
書くことがなかったというか、前回触れた「Forest」を試すべく、早朝からお作業していたら日記を書く時間が失われてしまい、かつ、いま作っている本の修正が佳境に差しかかってきたためです。
まあぼちぼちいきましょう。

Twitterでは何度も触れているのですけど、私にとって小説を書く作業は「夢十夜」の第六夜、木から仁王を掘り出す話のようなものです。(しょっちゅうこの「仁王」を「仏像」と書くのですが、掘り出すのは仏像とか神像のイメージなのでごっちゃになる)

「能くああ無造作に鑿を使って、思うような眉や鼻が出来るものだな」と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若い男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだから決して間違うはずはない」といった。

……というところですね。
私にとっての執筆も同じで、小説の完成形は確かにどこかにあって、そこを目指して切って貼って磨く、イメージです。
最初(初稿)はとても粗い、なんかよくわからんかたまりだけども、そこから理想に近づけてゆくのです。

こんな書き方をしているから、修正にはものすごく時間がかかるし、時間をかけます。

そんな「小説を書く」作業には、自分の中でいくつかの段階があります。

1:ひたすらインプットする
2:クロッキー帳にイメージノートやプロット的なものを作る
3:手で構想を書くより小説を書いた方が早いわい、と見切り発車する
4:初稿の完成後、修正する
5:なんかもうどうでもよくなる
6:いやいやちょっと待て、仕上げよう(仕上げる)
7:燃え尽きる
(しばらく時間をおいたのち、1に戻る)

このうち、4~7くらいのフェーズではほとんど何もインプットできなくなり、インプットしたものに影響を受けやすい、という悪癖(?)があります。
つまり今です。

赤入れと修正を繰り返すのは心の中の仁王(でも仏像でも神像でも理想でもなんでもいい)に近づいてゆく作業で、自分の抱いたイメージに潜ってくことでもあるので、外部からの刺激がかえって妨げになるのです。
で、そんなピリピリしたところに、良いインプットがあるとコロリといっちゃう。チョロい。とてもチョロい。

そうやって軸がぶれると困るので、この期間は敢えてインプットを遠ざけるのですが、アンテナの感度が普段とは違うから、良い刺激を受けて良い方向に変わることも多々あるのが悩ましいところです。(※インプットを遠ざけられてないのでは……というのはノーツッコミで)
とくに今は二次創作なので、強固な「私のかんがえたさいきょうの原作」イメージがあるため、あまり他の作品に触れたくない、お籠もりモードになっています。積極的なインプットを避け、どうしても溜まるぶんをちょこちょこガス抜きして(つまりこういう毒にも薬にもならない文を書く)、自分の水位を動かしたくない……っていうの、伝われ……(ろくろ)
だから「Forest」がしっくりきたのかもしれません。これについてはまた今度書きます。

「サイエンスファンタジー」を名乗っているので、作るものはある程度論理的でありたいと思うのですけど、作ってる人はかように感情的です。
なかなか伝わらないとも思う……共感を求めてはいませんが、他の方がどんな具合なのかは興味があります。

そんなわけで、私に何かを布教するときは、「入稿しましたー!」とツイートした後がいいと思います。
「これほんまに面白いんやろうか」とか「誰やねんこれ書いたやつ……」とか呪詛ってるときはほぼ聞く耳を持ちませんので……。よろしくお頼み申します(?)


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