見出し画像

祖母が嫌いだった私が介護の仕事を選んだ理由(前編)

介護の業界でも何でも、(昔、こういう経験をしたから、その仕事に就いている)ということがあると思います。

「自分はおばあちゃん(おじいちゃん)子で、おばあちゃん(おじいちゃん)が好きだったから」という人がこの業界では多いような気がします。そういう人は、心からお年寄りたちと接することが大好き!て感じで仕事をされていて、うらやましく思うことがあります。

自分はそうではありません。むしろ、一緒に住んでいた祖母のことを「鬱陶(うっとう)しい人」ぐらいに思っていました。
たとえば、新聞をめくるとき、めくる指をなめるので(うわ、汚な…)みたいなことを思っていました。
今思えば、大変申し訳ないと思うのですが、祖母に対しては、そういう感情が強くありました。

では、私が介護の仕事をしようと思ったきっかけって何だったんでしょう。
それは、たぶんですけど、母親のことではないかと思います。
しかし、母親が介護の仕事をしていた、とかそういうのではありません。



私が中学2年生のときに、祖母が脳梗塞で倒れました。半身まひで寝たきりになりました。当時、少しは呆けていましたが体は元気だったので、それなりにショックな出来事で、それこそ初めて、ぐらいに心配をしました。

しかし、それ以上に心配したのは母親のことです。

母親は専業主婦ではなく、縫製工場に勤めていました。フルで働いていました。洋裁学校を卒業してましたので、その道の職人と言っても良いと思います。

そんな母が祖母の介護で働きに出られなくなりました。

今のように介護保険もないので、ヘルパーを派遣してもらうこともできず、ベッドも借りられず、畳に布団。膝をついて腰を曲げて体を拭いたりしていました。

そんな姿を見て、私は母親に「いつまでこういうことが続くのかな」と言った記憶があります。「さあ、どうなるだろうね」と母親は言いました。

嫁いだ女性が嫁ぎ先の姑をひとりで介護するのが当たり前の昭和の時代でした。
外に出てイキイキと働く母親の姿は見られなくなりました。

                             (つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?