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アポロンの巫女の話を聞いた

先週、藤村シシンさんの講座にて、古代ギリシャの神託について話を聞いてきました。
(以前シシンさんの講座に行った話はこちら)

古代ギリシャの神託と言えば、
デルフォイの神託所!
アポロンの神託が巫女の口を通して聞けると言う紀元後の人間からしたらミステリアスで魅力的な神託所です。

私がこの神託を知ったのは小学生のころ「ソフィーの世界」を読んでから。
哲学の話を物語に織り込んだもので、古代ギリシャの話もたくさん出てきます。

そこで読んだ巫女のイメージはこんな感じでした。

「神託所の奥には巫女が大地の裂け目に三脚の椅子を置き腰掛けている、裂け目からは火山ガスが漂い、朦朧とした巫女の口から神託が紡がれる」

み、ミステリアスでアメージング!!
古代の巫女カッコいい。小学生の私はそう思いました。そして古代のギリシャに想いを馳せました。
そんな思い出のある神託の話がシシンさんの口から聞ける。とワクワクしながら講義を受けていたのですが、

シシンさん曰く
「この大地の裂け目から火山ガスが〜という話は考古学的には証拠がありません。後世の創作ではないかと言われています。」

マジかー!!

これが今回の講義の1番の衝撃でしたw

アポロンの巫女、ピュティアに関しては当時誰も目にする事が出来なかったようで、古代ギリシャの資料はほぼなく、古代ローマにおいては誇張した文献も出て来て、元資料がブレブレらしく。

厳格で神聖な巫女像から、狂乱の巫女までイメージは様々

その中でも古代ローマのルカーヌス『ファルサリア』に出てくる話が特に際立っていてかいつまんで話すと...

"巫女にアポロンが入り込み、彼女は半狂乱になって洞窟の中で奇行に走った、
首は狂ったようであった...ついには泡を吹き唇から狂気が溢れていく。
彼女は吐き気を催し、大きなうねり声を上げて、苦しそうに息をする。
かくして、神託が大きな丸天井に響き渡った"

つまり奇声をあげて一人モッシュ→そしてヘドバン→陶酔してからの予言。

アポロンこんなロックですかね?!

秩序の神はロック好きじゃなさそうですよね...どちらかというとディオニュソスのお得意ジャンルでは??

この話、実は前振りがありまして。

"すでにデルフォイの神託所は閉鎖されて久しいが、アポロンの神託を聞きたくて近くの娘を捕まえて無理やり巫女役をやってもらった"

という前提が...もうリアルに宗教として機能してない時代の話じゃないか!
あと娘さんかわいそう!っていう。

ただ、ここまで行かずとも、先に話した火山ガス説など陶酔してやや暴れながらうわごとのように神託を告げる巫女の姿、

魅力的なのか、後世にずっとそのニュアンスが伝えられていく

小学生の私もこちらのイメージにまんまと魅了されましたからね。

「でも古代ギリシャの巫女の姿はもっと異なったイメージだった可能性がある」

今回の講座、シシンさんは古代ギリシャの少ない資料から、当時の巫女の姿をあぶり出そうと丁寧に解説してくれました。

「古代ギリシャ人も巫女の姿は見れなかったので、これが正しいとも言えませんが、古代ギリシャの、デルフォイの神託所が賑わっていた頃の人々からすれば、巫女の神託はこのようなイメージが一般的だったと推測できると思います。」

これが意外なイメージで、発見と好奇心で脳が刺激されるとても楽しい講座でした!

いつも思いますがシシンさんの語り口調は意識を古代ギリシャに導くような、ありありと情景が浮かぶ、そんな話し方で。古代ギリシャにタイムトラベルしている気持ちになりますね。

そんなシシンさんの講座、ほかにもいろいろやっているので気になった方はこちらからどうぞ。

ところで、この「狂乱の巫女」のイメージの方、シシンさん自身も説明し終わったあと、
「まるで悪魔憑きみたいな...」
と言っていたので、突然のアポロン悪魔化に悪魔勢の私は申し訳なく思いました、が、よく考えるとこのころまだ悪魔の概念もできておらず、ルシファーも爆誕する前なので、

悪魔が取り憑くイメージ..."狂乱のアポロンの巫女"が元イメージなのかも

ということを考えるとかなりエモかったです。
全てはローマを通り越して古代ギリシャにつながっている...。

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