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#1 アミタヴ・ゴーシュについて

海外の大型書店で、小説がならんでいる Fictionのコーナーにいくと、きっと、'G' の欄に、アミタヴ・ゴーシュの作品が何冊か並んでいると思います。

アミタヴ・ゴーシュ - Wikipedia

私の知る限り(というのは実際のところアジアの書店ばかりですが)、海外の小説コーナーは、日本のように、「イギリス文学」「ロシア文学」「フランス文学」「中国文学」というようなエリア別の細切れ展示方式を採用していないように思います。SFとか、推理小説、ファンタジーを独立したコーナーにしている書店はありますが、英訳された小説は、基本的には著者の苗字のアルファベット順にずらりと並んでいることが多いのではないかと思います。

ずらっと並んだ著者の名前を眺めていくと、あまり日本ではなじみのない不思議な名前の作家の名前に気づくかもしれません。
 J : Balli Kaur Jaswal
M:Rohinton Mistry
R:Arundhati Roy
など。
彼らはいずれもインド系の英語小説家で、世界中で高い評価を得て、沢山の読者を抱えている作家です。英語だけでなく、いくつもの言語に翻訳されて愛読されていますが、もったいないことに、日本ではほとんど知られていません。
いずれも、これほどの作品が日本で読めないことは日本の読者にとっての強大な損失!と言える作家たちですが、その中でもひときわ著名な人気作家がアミタヴ・ゴーシュです。

この方、知れば知るほど、本当に凄い方なんですね。
小説家としてもちろん超一流ですし、
まず、アジア史に関する知識の深いこと深いこと、
さらに、なんとオクスフォードに留学して、エジプトの村落社会の研究で人類学博士号まで取っている。
生まれはインド カルカッタですが、
その後スリランカ、ダッカなどで少年時代を過ごし、
使える言語は英語ヒンディー語ベンガル語アラビア語などなど。
少年・青年時代には、当時インドで発生した宗教・政治紛争に現場で巻き込まれるという壮絶な体験もしています。
名作「シャドウ・ラインズ」は、発表後30年以上が経った今も、
インドの学校などで読まれる古典作品となっています。

最近では、
「なぜ文学は、気候変動問題と向き合うことができないのか」という問題意識を出発点に、
『大いなる錯乱』(2022年、以文社)という評論を発表し、
世界の文学界をざわつかせました。

「前衛的といった表現は見せかけにすぎず、文学界の本質は信じがたいほどに保守的で、変化にたいして強く抵抗する性格を持っています」
なかなか、これだけ辛辣なことを言える作家はいないですよね。

あまりこういう情報ばかり取り上げると、
理屈っぽい、小難しい、実験的で読みにくい作品を書くのかな?
と思われるかもしれませんがさにあらず、
ゴーシュは世界的ストーリーテラーとして有名で、
ぐいぐい読ませる作家です。
インド系作家でも、サルマン・ルシュディなどは、込み入った文章が多いのですが、ゴーシュの文章は、素直に美しい。

そんなゴーシュの『飢えた潮』、
どうぞお楽しみに!





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