夏がきた

夏になると祖母のことを思い出してしまう。

そんな祖母との思い出を気の済むまで書き記していこうと思う。

すこし遡り3年前の夏

祖母の手を病室で握っていた。
祖母の手は骨とだるだるになってしまった皮だけ。
握っている手と手がすこし汗ばんでいた。
でも何故だろう。
触り心地がいい気がする。
何故だろうこの手を握っているだけで
愛しいとも愛らしいとも言葉では言い表せない
母に向ける愛ともまた違う祖母への愛が芽生えた。
何故だろう。
何故。
何故。
何故…

声にならない声が言葉に出来ない感情が頭の中でぐるぐるしていた。

思い返せば
祖母はかなりのテキパキおばあちゃん。
朝、4時半には必ず目覚めている。
そしてドタバタドタバタと洗濯物を干し
私、弟の朝ごはんを用意し食べさせてから
ラジオ体操の場所まで連れていく。

あぁー
思い出してしまった…
ラジオ体操…
思い出すのも嫌なラジオ体操…。
毎朝起きるのが辛くて仕方がなかった。
私たちの辛さも知ってか
祖母はあの手この手で起こしてくる。
まずは朝食のいい匂い。
そして、かけ布団を剥ぎ取られる。
応答がないと敷布団からも追い出される。
ゴロゴロゴロー
そんな効果音とともに畳に転がる。
応答がない。
そんな時はとっておき!
祖母が考えた最終手段。
井戸水で冷たくなったおしぼりを顔に当てられる。

ヒヤっ

ヒヤっとしたら夢見心地だった気分ともお別れ。
閉じていた目も若干開いてしまう。
そうなってしまったら…

よいっしょ!

その掛け声と共に祖母に抱き抱えられ
台所にある食卓テーブルまで運ばれる。
テーブルにはこんがり焼けたトーストがあったり
子ども用のコーンフレークがあったり
祖父や叔父、叔母のコーヒーも挿れてあったり
様々だ。

あーあ…
気持ちよく寝てたのになー

と、思っている側で
弟は食べながら寝ていた。
さすが…と思わずにはいられなかった。

さ!ラジオ体操ー!!!!!

掛け声とともに祖母と一緒に自転車に乗る。
そう、3人乗りだ!!!
今のように子ども用のシートがあふるわけでもない自転車。
どうやって乗っていたのだろう??
思い出せない…。
当時の私はこの時点でも寝ぼけていたのだろうか?

いやはや…祖母の苦労がわかる。

ラジオ体操の広場につく
何人かの子ども達の中に祖母が1人

元気よくラジオ体操をやる祖母。

眠たかし…

そんな気持ちのままラジオ体操をやっていた事を思い出した。

祖母の手をしっかり握りながら。

そしてこの日が祖母に触れた最後の日だった。

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