考え直す力:アンラーニング
管理人Oです。
今回は、巷でよく耳にする『社会人の学び直し』にも通ずる考え方について触れていきます。
と言っても、大学に入って学位取得をすることについてフォーカスするのではなく、日常、自分の手の届く範囲の行動に影響する『アンラーニング』に着目し、大学職員一般の考え直す力として考察を述べたいと思います。
今回の内容は、米国 Wharton School of the University of Pennsylvania の Adam Grant 教授の著書 Think Again: The Power of Knowing What You Don't Know の内容を中心に話を展開してまいります。
私達は3つのモードを使い分ける
Grant 教授は、私達はよく物事を考えたり発言する際に3つのモードに陥ると述べています。
Preacher(説教者)
自分の理想となる考えが危機に直面すると、その理想を弁護し、反対に押し付けるために "Preacher(説教者)" となりがちです。
Prosecutor(検察官)
他者の理論・推論に誤りを見つけると、"Prosecutor(検察官)"となり、議論をしかけて他者の考えが間違いであることを証明し、自説が正しいと認識させようとしてしまいます。
Politician(政治家)
自分の考えに対して聴衆の支持を欲している際には、他者に対してロビー活動をして支持を受けようとする等、"Politician(政治家)"になることもあります。
物事を考え、伝える際に潜むリスクは、私達自身の考え方を考え直すことに注意が向かないほどに、私達はこれら3つのモードを駆使して、自分の考えが正しいと他者に説教し、他者の考えは間違っていると問い詰め、そして、自分の考えに支持を得ようと政治活動にいそしむ傾向が強いということである、と説かれています。
私は上述の3つのモードの特徴を読み、直感的に『こんな人に会ったら頑固そうで話するのはイヤだなぁ』と感じました。
Grant教授は、これら3つのモードをもって考察・議論するのではなく、そもそも理論を熟考・再考することが当たり前な "Scientist(科学者)" になることが重要であると述べています。
Scientist(科学者)
私達が真実を追い求める際に、"Scientist(科学者)"モードに入りやすく、自分の仮説をテストしたり、新たな知識を発見するために、実験を行う傾向にあります。
考え直す重要性
『考え直すこと』自体に触れず、私達が考えを伝える際にスイッチが入りがちな3つのモードと、それらと対照的な "Scientist(科学者)" というモードに触れました。
そもそも、『考え直すこと』は重要なのでしょうか。
私達は、日々、大なり小なり何らかの決断を下していることと思います。日常のシーンで言えば『どの服を着るのか』『ご飯は何を食べようか』、仕事であれば『この案件はどう処理しようか』『どの人に相談しようか』など挙げられるでしょう。
恐らくですが、これらの決断の大多数は、今まで蓄積されてきた『自分の中にある知識・経験』に基づいて下されているのではないでしょうか。
日々の多くの決断が『自分の中にある知識・経験』に基づくと仮定するならば、その知識・経験をアップデートすることが、正しい決断を下す確率を上げることに繋がると言えるかと思います。
このため、『考え直すこと』は、私達が生活を送るうえで非常に重要な基礎力であると言っても過言ではないかもしれません。
アンラーニング
『考え直すこと』を実行するうえで、ネックとなるのが『すでに習得・獲得した知識・経験のアップデート』でしょう。
Grant 教授も、数ある研究の成果を引き合いに出し、小学生の頃に誤った科学的知識を教わり、特に指摘・訂正がないままにしてしまうと、後々その知識の間違いを正すことに強い抵抗を示した、と説明しています。
Grant 教授は、『考え直すこと』を習慣づけるために、既得の知識を一度捨てる練習を頻繁に行うことが重要であるとも説いています。
心理学者の言葉を引用し、"予想・直観に反する科学的なアイデアを学ぶことは、考え直す段階が遅くなればなるほど飛躍的に困難であり、また、断片的な考え直しの機会や、実践機会が少ない人ほど実現不可能" とも説明されています。
既得の知識を捨てることがアンラーニング(=Unlearning)であり、私達の考え直しの力を向上させる重要な要素であると思います。
大学におけるアンラーニング
今回の内容は大学職員だけにあてはまるものではないのですが、私自身大学職員であるため、日常でどのように扱えるか考えてみました。
既に現在の部署に配属となって6年目になっており、私の関わる業務については、知識・経験が蓄積されて、ある種効率よくこなせているように思います。
しかしながら、世界は6年間のうちに尋常ではない速度で変動しており、現時点で私のやり方は時代にそぐわないやり方になっている可能性もあります。
恐らく、この『自分のやり方はすでに時代に取り残されている恐れがある』という視点を持ち、現状を分析して自分のやり方に異を唱えることが、大学職員一般のアンラーニングと呼べるのではないかと考えました。
日頃このように考えられている方も、そうでない方も、今回の内容が何かしらの一助となれば幸いです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
【管理人O】
※書籍
https://www.amazon.co.jp/Think-Again-Power-Knowing-What/dp/1984878107
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