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銀鏡反応

概要

我々が普段使っている鏡を作る際に使われている原理と同じ方法で、鏡を作っていく。


実験試薬

硝酸銀 (AgNO3,0.2mol/L)
アンモニア水 (NH3) 適量
グルコース (C₆H₁₂O₆,0.1mol/L)
水酸化ナトリウム (NaOH,0.1mol/L)


使用器具

50mLビーカー×4、300mLビーカー×2
2mLピペット×3、5mLピペット×1
メートルグラス×2、薬さじ、三脚、金網、ガスバーナー、時計皿


実験手順

1. 硝酸銀水溶液5mLを、50mLビーカーにとる。
2. 硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると褐色の沈殿ができる。その後、沈殿がなくなるまで適度にビーカーを振りながら、アンモニア水を加える。
3. メートルグラスに入れておいた2つの溶液を、手順2で作った溶液に入れる。
4. 作った溶液を素早く時計皿の上に注ぐ。
5. 数分間待って反応が適度に進行した後、残った溶液を廃液として捨て、時計皿の外側を見る。


原理説明

※noteの仕様上、イオンの正負符号などを小文字で表記できていません。
 気になる方は、PDF版をご覧ください。

まず、手順2で褐色の沈殿ができたとき、塩基性を示すアンモニア(NH3)が水(H2O)と酸塩基平衡反応を起こして生じた水酸化物イオン(OH-)と銀イオン(Ag+)が結びつき、酸化銀 (Ag2O)が生成されている。
この酸化銀は水に溶けないため、褐色の沈殿となっている。

NH3 + H2O ⇄ NH4+ + OH-
2Ag+ + 2OH- → Ag2O(褐色の沈殿) + H2O

この酸化銀を含む水にアンモニア水をさらに加えることで酸化銀とアンモニアが反応して水溶性のジアンミン銀(Ⅰ)イオン ([Ag(NH3)2]+) ができる。

Ag2O + 4NH3 + H2O → 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-

銀が単体でも存在するためには銀イオンの電荷が0でなければいけないため、ここに電子を加えて電荷を0にする必要がある。

そこで、手順3でグルコースに含まれるアルデヒド基(R-CHO)と水酸化ナトリウム(NaOH)を反応させて電子 (e-)を発生させる。この電子がジアンミン銀(Ⅰ)イオン内の銀イオンと反応して、銀イオンの電荷が0になることによって銀が単体でも析出するようになる。つまり鏡ができる。

R-CHO + 2OH- → R-COOH + H2O + 2e-   …①
[Ag(NH3)2]+ + e- → Ag(鏡) + 2NH3     …②

上記の2式を組み合わせて式が成り立つようにすると(①+②×2)

2[Ag(NH3)2]+ + R-CHO + 2OH- → 2Ag + R-COOH + H2O + 4NH3

となる。また、①の反応で出てきた水酸化物イオンは水酸化ナトリウムから供給されている。

この反応の実用例としては、ガラス製魔法瓶や鏡の銀メッキなどが挙げられる。


参考文献

卜部吉庸 『化学の新研究』 三省堂
海城学園化学部『白クマの化学』2021年


KCC Quiz 銀鏡反応編

Q1.この銀鏡反応は生活で使う色々なものに銀メッキをする際の方法として用いられている。この銀鏡反応が使われているものを下から選べ。
①マイク ②缶 ③銀色のヘアカラー ④ガラス製魔法瓶

Q2.今回使った試薬のうちアルデヒド基が含まれているのはどれか。
①硝酸銀 ②アンモニア ③グルコース ④水酸化ナトリウム

Q3.金属鏡が初めて作られたのはいつ頃と考えられているか。
① 紀元前5700年頃 ②紀元前2800年頃 ③400年頃 ④今




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