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呼気性喘鳴と吸気性喘鳴

 一般に、管のある部位が狭窄/閉塞すると、そこを空気が通るときに音が出る。さらに、気道は吸気相/呼気相によって、上気道と下気道が生理的に狭窄する。健常な気道では、呼吸による生理的な狭窄でいちいち音が出るようなことはないが、疾患によって気道が狭窄ないし閉塞すると、その部位が呼吸によってより狭窄したときに異音、すなわち喘鳴が発生することがある。本記事では喘鳴の種類による気道狭窄の鑑別について整理する。

なぜわかりにくいのか

 本項目において重要な点は、内腔が陰圧か陽圧かはその部位の狭窄と必ずしも対応しないということである。吸気相における上気道狭窄は上気道の陰圧化が原因だが、呼気相の下気道狭窄時には下気道は陽圧になる。

 では何が関係するのかというと、下気道は内圧ではなく呼吸筋による胸腔の拡大/縮小の影響を受けるが、上気道は胸腔外にあるため、内圧の影響を強く受けるのである。このことがよく整理できていなかったので筆者はいつまで経っても本項目が理解できなかった。これを踏まえて以下で教科書通りの解説を行う。

吸気相/呼気相における気道の狭窄

 吸気相では上気道、すなわち喉頭以上の部位が狭窄する。

 息を吸う際、胸腔が広がることで肺胞や下気道は広がるが、気道の内圧が下がることで上気道は狭窄する。上気道狭窄は腔の陰圧化が原因である。

 一方、呼気相では下気道、すなわち気管以下の部位が狭窄する。

 これは息を吐く際に、胸腔内圧を上げるために胸腔を圧縮することによる。このとき胸腔から送られる空気によって上気道は陽圧になるため、狭窄をきたさない。下気道狭窄は内腔の陰圧化ではなく、呼吸筋による胸腔の圧縮によることに注意する。

気道狭窄と喘鳴

 以上解説した呼吸による気道の狭窄に、疾患によるさらなる狭窄や閉塞が合わさると、病的な喘鳴をきたすことになる。呼気相と吸気相の片方のみで喘鳴が観察されるということは、その相で狭窄する気道部位が病変部位と一致するということである。このことから、吸気性喘鳴と呼気性喘鳴によって疾患を鑑別することが可能になる。

吸気性喘鳴は、上気道の狭窄・閉塞を示唆する

 疾患例:クループ症候群、上気道の浮腫・炎症・腫瘍(ex:急性喉頭蓋炎)、声帯機能不全など

呼気性喘鳴は、下気道の狭窄・喘鳴を示唆する

 疾患例:喘息、COPD、下気道の炎症・浮腫・肺水腫など

最後に

 本記事は特に医学の勉強に熱心というわけではない医学生が、物書きが好きだという理由で、整理のために数周遅れで基本事項をまとめたものであり、内容の正確さを保障するものでは全くない。語の用法や内容について気づいたことのある方や補足したい方は是非とも遠慮なく指摘して筆者の勉強を後押ししてほしい。


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