【開業医必見】MS法人とは?設立のポイントを徹底解説!
医療機関の経営を考える中で、「MS法人って何だろう?」「他の法人形態と比べてどんな特徴があるの?」と疑問に思う方も多いです。
本記事では、MS法人の概要や個人開業医にとってのメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、設立時の注意点や税務上のリスクについても触れていきます。
MS法人は医療機関の非診療業務を独立して運営できる特性を持ち、節税効果や事業拡大の可能性を提供します。一方で、設立コストや消費税の増加など、考慮すべき点もあります。
この記事を読むことで、MS法人設立が自身の医療経営にとって適切な選択かどうかがわかるでしょう。ぜひ本記事でご紹介する内容を参考にしてみてください。
MS法人とは?
MS法人(メディカルサービス法人)とは、医療法人が行えない営利事業を担うために設立される組織です。医療機関の診療業務以外の関連サービスを提供することが可能で、株式会社や合同会社と同様の形態を取ります。ただし、MS法人自体が医療行為を行うことはできません。
MS法人と医療法人の違い
医療法人は医療法に基づいて設立され、非営利目的で医療行為を行うことを主な使命としています。診療や患者対応に特化し、利益の分配が禁止されているため、収益は医療サービスの向上に再投資されます。
一方、MS法人は医療機関が直接行えない周辺事業を担う営利目的の組織です。法律上の特別な法人格ではなく、一般的な株式会社や合同会社として運営されます。
主に医療関連のサービスや商品の販売、不動産賃貸、会計業務、医療機器の管理・販売など、医療行為以外の業務を行います。
個人開業医がMS法人を設立するメリット
個人開業医がMS法人を設立することで得られる主なメリットは、税制面での優遇や事業継承の円滑化、医療機器の共同利用などです。これらのメリットについて、より詳しく以下で解説していきます。
節税効果により法人税率が約30%になる
個人開業医は最高55%の所得税・住民税が課されますが、MS法人設立により税負担を軽減できます。
法人税率は約30%で、年間800万円までの所得には15%の軽減税率が適用されます。それ以上の部分には23.20%の税率が適用され、個人事業と比べて大幅な節税が可能です。
さらに、MS法人を通じて医療機器をリースすることで、経費計上が容易になり、追加の税務メリットも得られます。
家族を役員にして所得を分散できる
個人開業医がMS法人を設立する主な理由は、所得税や住民税の累進課税を回避し、税負担を軽減するためです。家族を役員にすることで、所得を分散し、各個人の所得税率を下げることができます。
一方で、MS法人設立には運営コストの増加や税務リスクがともないます。
MS法人と医療法人間の取引が不適切と判断された場合、税務調査で否認される可能性があります。しかし、これらのリスクは適切な税務管理と専門家の助言を受けることで軽減可能です。
会社の活動範囲を広げ、新しい分野にも挑戦できる
MS法人は、医療機関の非診療業務を独立して運営できます。これにより、直接的な医療行為以外の事業展開が可能となります。具体例として、不動産投資や資産管理などが挙げられます。
社会的信用の向上
MS法人の設立では、組織的な経営が可能となり、社会的信用が高まります。これにより、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなり、事業拡大や資金調達がスムーズになる可能性が高まります。
また、会計や保険請求業務を法人として行うことで、経営の透明性が向上します。さらに、法人税の適用を受けることで、税務上の優遇措置を活用でき、経営の安定性を強化することができます。
個人開業医がMS法人を設立するデメリット
MS法人設立には税制優遇や資産保護などのメリットがありますが、注意すべきデメリットも存在します。個人開業医がMS法人を設立する際に直面する可能性のある課題や不利益について、以下で詳しく解説します。
税務上の認定が否認される可能性
MS法人の設立は、所得税と法人税の税率差を利用した節税手段として期待されます。しかし、この手法を過度に活用すると、税務当局からの否認リスクが高まる可能性があります。
注意すべき点は、医療法人とMS法人間の取引価格が市場価格と著しく乖離している場合や、その取引に合理性が認められない場合です。このような状況下では、税務調査により取引が否認され、結果として多額の追徴課税が課せられる可能性があります。
設立コストと時間がかかる
MS法人の設立には、法的手続きや許認可申請が必要です。これらの過程には時間と費用がかかります。
株式会社の場合、法定費用は約25万円、合同会社では約11万円が必要となります。加えて、専門家への依頼費用、運営に必要な設備や物品の購入、会計・税務処理のための経費なども考慮しなければなりません。
上述の点より、一般社団法人での開設を選択するクリニックが増加している背景があります。
法務局への登記申請は通常2週間程度で完了しますが、申請書類に不備がある場合は再申請が必要となり、予定以上に時間を要する可能性があります。
消費税の増加
MS法人の設立により、医療行為に直接関連しない業務を分離することが可能になります。しかし、この手法には消費税の負担増加というデメリットもあるので注意が必要です。
医療行為自体は非課税ですが、MS法人が提供する不動産賃貸や医療機器リースなどのサービスは課税対象となります。そのため、医療法人がMS法人から受けるサービスに対して消費税が発生し、全額控除できないケースがあります。
法人税や所得税の節税効果によって、この消費税増加分が相殺されると考えられることもあります。しかし、消費税はキャッシュフローに直接影響を与えるため、短期的には財務上の課題となります。
MS法人設立の注意点
MS法人の設立には、役員と株主の構成に細心の注意を払う必要があります。
医療法人の非営利性を維持するため、役員構成に制限が設けられており、医療法人の理事長や個人開業医がMS法人の役員を務めることは原則として認められていません。これは、両者間で生じうる利益相反のリスクを回避するためです。
ただし、医療関係者がMS法人の株主として参加することは可能です。しかし、役員の選定には慎重なアプローチが求められます。
個人開業医が家族をMS法人の役員に任命し、所得分散による節税効果を狙うケースがありますが、これも行政指導の対象となる可能性があります。
まとめ|営利重視ならMS法人、非営利重視なら一般社団法人
MS法人は医療機関の非診療業務を担う営利目的の組織ですが、税制優遇や事業継承の円滑化などのメリットがある一方で、税務上のリスクや設立コストなどのデメリットも存在します。
MS法人に対し、非営利活動や社会貢献を重視する場合は、一般社団法人がより適しています。一般社団法人は公益的な活動に向いており、利益分配の必要がない点が特徴です。
クリニックの長期的な運営方針や社会的役割を考慮すると、一般社団法人の選択が望ましいでしょう。法人形態の選択は経営戦略に大きく影響するため、専門家に相談しつつ、慎重に検討することをお勧めします。
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