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福祉用具のレンタル・販売選択制スタートで思うこと

2024年4月から介護保険レンタル種目の一部について、レンタルだけでなく販売も選べるようにルールが変更されることになりました。今回は、この「福祉用具レンタル販売選択制」について取り上げてみます!


レンタル販売選択制スタート

まだ、具体的な話は不明な部分もあって、続報を待ちたいところではありますが、福祉用具貸与・販売の選択制について、下記記事でも説明されていますので、よかったら参考にしてみて下さい。

ということで、具体的な内容は?といいますと・・・


具体的なルールはこんな感じ

福祉用具のレンタル・販売の選択制の対象となるのは以下の4つ

・固定用スロープ(ミニスロープ)

・歩行器(車輪が付いていないものが対象)

・単点杖(松葉杖を除く)

・多点杖

販売にあたっては
●選択制の利用者への説明・提案
・福祉用具専門相談員が、貸与と販売のどちらかを選択できることを利用者へ説明
・医師や専門職の意見、利用者の身体状況などを踏まえ、提案を行う

●福祉用具販売計画を作成・達成状況の確認
・福祉用具専門相談員が、特定福祉用具販売計画の作成後、その目標の達成状況を確認する

●アフターフォロー
・福祉用具専門相談員が、利用者からの要請に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認、必要な場合は使用方法の指導、修理など(メンテナンス)を行うよう努める

という流れになっていきます。

このルール変更はどんな影響がある?

このルール変更、まだ概要程度しか情報が流れてきていないので、なんとも言えない部分がありますが、気になるのは、

販売に当たり「医師や専門職の意見」を踏まえ…という点。

例えば、既存のルールでは、福祉用具の軽度者への介護ベッドのレンタルにあたって、医師のお伺いが必要なケースがあるのですが、ケアマネさんが医師にお伺いを立てる際に、困られている姿をよく見かけます。
具体的には、なかなか医師の意見がいただけなかったり、医師からの意見聴取が難しいことで、安易に自費ベッドの利用に回避されてしまうケースが多く存在してしまったりします。
販売にあたって、「医師や専門職の意見」というものが、どのあたりの範囲を示しているのか、どういう着地点になるのか、非常に気になるところです。

さらに、販売後のアフターフォローについて、利用者の要望に基づいて実施、ということですが・・・アフターフォローで気になるのは、レンタルしているケースに比べ、販売の場合はどんな温度感で実施すればいいのか、利用者から声がかかるまで放置していてもいいのかな、なんて思ってしまったりもします。

なんせ、これまではレンタルで半年毎にアフターフォローを当たり前にやっていたので、そこを声がかかるまで放置してしまっていいのかな、と気になってしまうのです。

また、販売の場合のアフターフォローは、都度訪問にあたっての移動コストや、対応時のコストもかかるため、その際の料金設定もどうしていくべきなのか、明確なルールが示されるのか状況を見ていかなければなりません。

あまり販売を選ぶ人は少ないような・・・

実際にはレンタル・販売、どちらの割合が多くなるのか、正直なところ、検討も付きません。
実際には、福祉用具事業所の担当がどういう話の持っていき方をしていくか、によって大きく変わりそうな気が…。

私は、お年寄りの状態の変化を見越してレンタルのほうが都度その時その時で最適な商品を使うことができるので便利ですよ、とこれまでもおすすめしてきたので、レンタルの方をすすめてしまうかな・・・なんて思ったりしますが、実際に販売定価分を超えても、延々同じものをレンタルし続けているケースが多く存在するのも確か・・・。

介護保険の限られた財源のことを考えると、今回のように、商品によっては販売を選択するシステムも致し方ない、というのが私の考えです。

そんなことよりも気になるのは・・・

そんなことよりも、私が気にしているのは、この選択制が、他の種目に飛び火する可能性が出てくるのではないか?ということです。

今回の選択制は、データ上ではレンタル期間が長く、販売額よりもレンタル給付額が多くなる、という裏付けを持ってルール変更に至ったのですが、これまでレンタル一択だった仕組みが変わる、すなわちレンタルだけでなく、販売となる前例ができてしまうことで、いずれ他の種目でもやればいいじゃん!ということになってしまわないか、ちょっと心配しています。

皆さんご存知のように、日本は高齢化真っ只中であり、当然介護保険の財政も非常に厳しい状況が続いています。
団塊の世代も後期高齢者となり、お年寄りの生活を支える介護保険を存続していくうえで、厳しい財源をなんとかせねば!となりふり構っていられないタイミングがどこかで来る、というかもう来ている、と思います。
少しでも削れるところは削りたい、という国の思惑から察していくと、今回レンタルから販売へのルール変更の前例ができてしまったことで、次は何が狙われるのか?注視して見ていく必要があると思っています。

制度ビジネスは危うさもある。何があっても耐えられる会社としての余力が必要。

ということで、2000年介護保険スタート以来、レンタルの商品はずっとルールも変わらずレンタルのまま、という状況が続いていましたが、今回、その概念が崩れるルール改正となりました。
考えてみれば、ずっと20年以上もこのルールが変わらずに運用されていたことで、私たちもそれが当たり前、とそれに慣れきってしまっていたのかもしれません。

福祉用具の仕事も、介護保険という制度に乗っかった制度ビジネスであり、制度が変われば、仕事もそれに沿って変化していく必要があります。
制度ビジネスはそのような危うさのなかでやりくりしていく側面もあり、大事なのは、何か有事があった際でも、それに耐えられる会社でいられるように体力・余力を持っておくことなのかな、なんて思ったりしています。

未来永劫、介護保険制度は全く変わらず、その波に乗っていれば安泰!なんてのんびり構えていては、どこかで足元を救われるときがやってくるのかもしれません。
何があっても、耐えられるような準備をしていけるように、備えあれば憂いなし、でやっていきましょう!

ではでは。

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