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物価が高騰しても福祉用具貸与価格は上げづらい

昨今、日本では物価が高騰してきて、それに伴い給与も引き上げする企業が増えるなど、停滞をずーっと続けていた日本の経済も動きが出てきました。物価に対して給与の上がり幅が弱い、という声はあるものの、長い目で見れば、ようやくポジティブで活発な動きになってきましたね!!
でも、実際に物価は上がるけど、介護保険の福祉用具貸与の価格設定はこれからどうなるのか?
単純にあげればいい、という話ではない面もあって、なかなか悩ましい・・・そんな福祉用具貸与の価格設定について書いてみたいと思います。




◯福祉用具貸与の価格設定について

介護保険制度における福祉用具貸与の価格設定は、もともと自由価格。事業者によって自由に設定していいことになっています。
例えば介護ベッド、事業所Aでは8,000円の価格設定でも、事業所Bでは同じベッドが7,000円だったり、事業所それぞれで価格が違ったりします。


◯上限価格ルールは、物価高騰を想定していない

そんな自由価格の福祉用具貸与の金額設定なのですが、数年前から上限価格ルールがスタートし、自由価格の価格設定に一部制限がかかることになりました。
上限価格ルールとは、かつて、一部の事業者が法外な価格設定をしていたケースがあり、ちょっとそれ金額上げ過ぎじゃね?ということで、各商品ごとに貸与価格の平均値を集計し、上限価格を設定、これを超えた価格設定をしないように!という経緯で始まったルールのことです。
この上限価格、3年毎に見直しが入るのですが、なんせ上限を下げる意味合いの見直しなので、全体的に見ると見直しが入る毎に価格は下がる一方。消費者からすれば嬉しいことかもしれませんが、福祉用具事業者からすれば、物価高騰しても、価格が下がる一方なのは正直厳しいです。
福祉用具メーカーは商品の小売価格を軒並み値上げしているのに、福祉用具貸与の価格は据え置きしているところが多い状況です。


◯価格の値上げへのケアマネジャー・利用者の理解度はちょっと心配

じゃあみんなで値上げして平均価格を上げていけばいいじゃん!という話ですが、個人的に、福祉用具貸与の値上げを、ご利用者・ケアマネジャーに理解してもらえるのかちょっと心配しているところです。
値上げ=悪であるという感覚、介護業界は他の業界に比べて強いように感じています。
社会的弱者であるお年寄りに負担を強要するのか!という声が、物価高騰している今の状況でも、声高に訴えられる方が一定数いるのでは?と危惧しているところです。

しかしながら、私の考えは、物価が上がれば、値上げをするのは真っ当なこと!

どちらかというと、物価も上がっているのに、やせ我慢で値上げもしないのは、一見消費者に優しい、なんていう風にみられるかもしれませんが、実は全然違って、社員さんへの給料も増えないし、サービスもやせ細りし、最終的には会社が傾き、最悪潰れちゃうところも増えてしまうのでは?と危惧してしまいます。

さらに心配なのが、価格変更すると、レンタル中のお客様・担当ケアマネジャーへの変更の案内が必要となり、その案内の手間も結構大変です。
さらに、単に金額変更を案内すればいいわけではなく、ケアマネジャーは利用者毎にサービスが使える限度額を考えながらどのサービスが必要か、各サービスを組み込んで調整・やりくりしています。当然、すでに限度額ギリギリのところで各サービスを計画して回しているそんなところに、「福祉用具値上げします!」といって、簡単に「ああそうですか、わかりました!」とはならないような気がします。
少しの金額の負担すら厳しい利用者もいます。そんな場合は他の福祉用具会社に入替するケースもあるかも知れません。ケアマネジャーの業務も増やしてしまう。その手間を嫌がるケアマネジャーも多いような気がします。


◯国主導で値上げOKの号令を出して欲しい(そんなことは絶対しないと思うが…)

最終的には、物価高騰で「背に腹はかえられぬ!」という事で、価格を上げようとする動きはあってしかるべきだと思います。
しかしながらあくまで値上げ幅については、上限価格を超えない範囲で価格をあげる必要があり、上限価格ルールで見直しが入る毎にちょっとずつ平均価格が上がり、次の見直しタイミングでまたちょっとずつ価格を上げる…、という感じで、物価の上がるスピードからすれば、かなり鈍足なスピードになってしまうでしょう。

こんな鬱陶しい状況ですが、できれば、国の方から、福祉用具貸与は物価高に合わせて◯%値上げしてもいい!という大号令を出してくれないかな…なんて思ったりします。
値上げは悪!と漠然と声高に叫んでいる人たちも、国が言うならしゃーないか、となるように思うのですが。
とはいえ、介護保険の財政は少子高齢化もあって厳しい状況であることを考えると、国としてもかかるコストを少しでも下げれるものは下げたいはずであり、まさか値上げOKなんて、言うはずがない、と思っています。

なかなか悩ましいですね…

ではでは。

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