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「ボディメカニクスって!?」        ~介護者も体を守ろう~

ボディメカニクスという言葉を聞いたことはありますか??

メカニクスと聞くと、何か機械的な事を想像してしまいますが、ボディメカニクスという言葉を直訳すると、「ボディー(体)」+「メカニクス(構造)」という意味になります。

 体の構造を知って、上手に活用していくためのテクニックをボディメカニクスといいます。

介護職員でもなかなか修得が難しいとされていますが、ご自宅で介護をされている家族にも十分活用できるテクニックですので、ぜひ参考にして頂きたいと思います。

ボディメカニクスとは?

人間の体は「骨・筋肉・関節」それぞれが作用しあう事で、様々な動作をする事ができます。「ボディメカニクス」とは、それらの相互作用を活用し、「最小限の力で介護ができる」介護技術の事を言います。

身体を起こしたり、支えたりする時に力任せの介助をせず、安定した姿勢でスムーズに介護する事ができます。
そのため、介護される側も安心する事ができ、事故やけがなども回避する事ができます。
また、長年悩まされていた腰痛の負担を軽減する事ができるといわれています。
介護のあらゆる場面で活用する事ができるので、介護職員だけに関わらず、ご自宅で介護をされる方にも、大変役に立つ介護技術です。

ボディメカニクスの7原則

ボディメカニクスを活用するには、しっかりと基本原理を理解しておく必要があります。ここでは7原則をもとに、それぞれのポイントについて確認していきましょう。

  両足を開き、「支持基底面積」を広くする。
支持基底面積とは、体を支えるための床面積のことです。
両足を開いた部分が基底面積となり、これを広くとることで、ぐらついたり、転倒せずに介助をすることができます。
基本は肩幅くらいに両足を開けるように心がけましょう。
また、前後左右に足を開くことで、より安定感が増します。
介護者の体が安定すれば腰への負担を軽減する事ができます。 

  体の重心を低くする。
支持基底面積を広く取った後は、膝を曲げて体の重心を低くすることを覚えておきましょう。
腰を少し落とすイメージです。
膝をピンと伸ばした状態ではバランスもとりにくく、腰に負担がかかってしまいます。
重心が高いまま介助をした時にぎっくり腰を引き起こす恐れもありますので、重心を低くするように心がけましょう。

  相手と重心を近づける。
介助をする時はできるだけお互いが密着し、重心を近づける事がポイントとなります。
相手に気を使うがあまり、離れて介助をしようとすると、力任せの介助になってしまいます。重い段ボールを想像してみてください。
腕だけで持ち運ぼうとするととても重たく感じますが、体に密着して持つ事で、安定して持ち運びする事ができます。
重心を近づける事で力が伝わりやすくなり、安定感が増すだけでなく、介助される人にも安心感を与える事ができます。

④  相手の体を小さくまとめる。
同じ重さであっても、動かすときはより小さなものの方が動かしやすいですよね?
体も同じで、相手の身体を小さくまとめる事で、力が分散せず摩擦も少なくなるため、動かしやすくなります。
具体的にいうと、腕などは伸ばしたままではなく、胸の前で組んでもらったり、足は伸ばしたままではなく、膝を曲げてもらうだけで、かなりコンパクトになります。
床に触れている部分が減ると摩擦もそれだけ減らすことができますので、介助の負担を大きく減らすことができます。 

  大きい筋群を使う。
体の中で最も大きい筋肉は太ももの筋肉です。
相手を動かそうとするとき、どうしても私たちは腕の力だけを使い、力任せの介助になりがちです。
一部の小さな筋肉だけを使うと負担がかかってしまうため、できるだけ体全体を使うよう意識し、中でも一番大きな太ももの筋肉を使って介助ができるよう心がけましょう。

   水平移動を行う。
介護では身体を持ち上げるイメージがありますが、持ち上げる動作は重力に逆らうことになり、余分な力が必要になります。
しかし水平に動くことで最小限の力で介助する事ができます。
上下の動きではなく、常に水平移動を心がけましょう。 

⑦  てこの原理を応用する。
てこの原理とは弱い力で重たい物を動かすという事です。
支点(支える部分)・力点(力を加える部分)・作用点(加えた力が動く部分)の原理を利用し、介助に応用する事ができます。
例えば、寝ている方を起こすときに肘やお尻を支点にし、遠心力を使うと、弱い力でも起こす事が可能です。

ボディメカニクスを行う時の注意点

  声をかけながら行う。
介護の基本にもありますが、介助の際には必ず声掛けを行いましょう。
これから介助を行う事を知ってもらう事で、不安が解消され、協力的に体を動かしてもらう事ができます。
その為にも普段からのコミュニケーションを通して信頼関係を構築する事が重要です。

  無理な態勢をとらせない。
いくらボディメカニクスの原理をわかっていても、相手に無理な態勢をとらせてしまっては本末転倒です。
こちらの身体を守る事も大切ですが、相手の負担になってしまっては元も子もありません。相手にむりがないかどうかを確認してから実践するようにしましょう。
いつもと違う態勢や動きをしてしまうと、かえって危険が増す場合もあります。 

  相手の力も利用する。
いくらボディメカニクスを活用できるからと言って、なんでも噛んでも介助してしまわないようにしましょう。
本来できる事まで介助をしてしまうと身体の機能が低下してしまい、できる事が少なくなってしまいます。
できる部分は協力を依頼し、必要な部分のみ、介助する事を心がけましょう。

ボディメカニクスの実用例

ボディメカニクスが実際に活用できる場面や、具体的な例を挙げて少し紹介します。

①  ベッドから起き上がって座る時
相手をベッドから起き上がらせる介助は、腰に大きな負担がかかります。
まずは介助がしやすいようにベッドの高さを自分に合った高さに調節し、両腕を胸の上で合わせてもらいましょう。
さらに膝を曲げて相手を小さくまとめます。
あとは腕を相手の首下とひざ下に入れ、相手を引くようにしてお尻を支点にしたてこの原理で起こす事ができます。

②  座った状態から立ち上がる時
まずは相手に少し浅く座ってもらい、足の少し引いてもらいます。
相手の両腕を包むように抱えて、相手の重心に自分の重心を合わせます。
支持基底面積を広く取り、相手にお辞儀をするように前にかがんでもらうよう声掛けをすると、てこの原理で頭の重みでお尻が上がり、スムーズに立ち上がる事ができます。 

③  立った状態から座る時
筋力が弱ってしまっている方は「ドスン」と座る事があります。この場面でもボディメカニクスを活かす事ができます。
まずは相手の両脇に手を入れ、支持基底面積を広く取り、相手と一緒に座るタイミングを合わせて重心を落とすように座ってもらいましょう。車椅子やベッドへ移動する時でも活用する事ができます。

まとめ

ボディメカニクスを意識して介助する事で、腰痛などの身体的負担を大きく軽減する事ができます。
また、介助される側も痛みを伴わずに介助を受けられることで安心して過ごすことができ、精神的な負担も解消する事ができます。
介護の現場では腰痛を経験したことがある介護士は7割以上いるといいます。
腰痛は悪化するとぎっくり腰や椎間板ヘルニア、座骨神経痛を誘発する恐れがあります。
仮に痛くなくても、腰の疲労というものは蓄積されるといいます。
腰痛や痛みを感じる前に、ボディメカニクスを意識して、無理のない介護をしてみませんか?

 東住吉介護センターでは、随時介護相談を承っております。些細なお悩みでもお気軽に相談下さい。

東住吉介護センター | 大阪市東住吉区内の住民の方々のご要望により、地元在住のスタッフにより平成11年に設立しました地域密着型の在宅介護事業所です。 (hscc.co.jp)









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