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読書チャレンジ#65 多死社会に備える

多死社会に備える 介護の未来と最期の選択 長岡美代
 
【おひとりさまの支援に乗り出す自治体】
品川区では、家主の不安を解消して高齢者が転居先を探しやすくなるよう、入居後の見守りや家財処分などを支援する事業を独自に行なっている。区が委託した品川区社会福祉協議会の職員やアパートを毎日訪問して安否を確認するとともに、緊急時にも対応。日常生活での困りごとなど相談にも応じる。さらに、死亡後も速やかに家財道具を処分できるよう、事前に本人と契約を交わしておく。これなら、家主も安心して部屋を貸すことができるだけでなく、高齢者も認知症になったり、介護が必要になったりしても素早く必要な支援につなげてもらいやすくなる。同事業はまだスタートして間もないので普及しきれていない面はあるものの、孤独死を防ぐことにもつながると期待されている。貸し手と借り手の双方の不安に配慮した至れり尽くせりの仕組みと言えるだろう。
 
 
【終活情報を一元管理する横須賀市】
横須賀市は、2018年から終活情報を生前に登録しておく『わたしの終活登録』という事業をスタートさせた。あらかじめ、本人が葬儀の契約先や墓の所在地などを市に登録しておくと、死亡時に関係先に情報が伝えられる仕組みだ。
 
 
【心肺蘇生の要否をルール化】
東京消防庁は、心肺蘇生を望まない傷病者への対応について初めてルールを取り決め、2019年12月から運用を開始した。ルールは、家族から心肺蘇生の中止を求められた場合には、その場でかかりつけ医に連絡をとって、事前に本人や家族を交えて終末期の医療について話し合いによる意思決定がなされていることなどを確認できれば、蘇生を中断し、かかりつけ医、または、家族に引き継ぐ。運用開始から2020年6月中旬までの6か月間で救急隊が家族から心肺蘇生を望まない意思を示されたのは63件。このうち心肺蘇生を中止して、かかりつけ医、または家族らに引き継ぐことができたのは、9割超の58件にのぼった。この結果について、東京消防庁の救急部長は、『思いのほか、かかりつけ医が駆けつけてくれる。なぜもっと早くやらなかったのかと思っているくらいだ。』と手ごたえを感じている。かかりつけ医の役割がいかに大切か思い知らされたという。
 
 
【伴走者となるケアマネジャーをいかに探すか】
病院の都合や家族の意向に流されず、最期まで自己決定を貫けるようにするためには、信頼できるケアマネジャーを見つけることも欠かせない。
【病院信仰がもたらす弊害】
せっかく自宅での療養を開始したとしても、いざ最期が近づいてくると病院に入院する(させる)ことを望んだり、ときには家族が救急車を呼んでしまったるする場合もある。その結果、帰らぬ人になってしまう例は少なくない。そうした行動をとる背景には、根強い“病院信仰”があると指摘する。『たとえ、終末期であっても入院させれば助かるのではないかという考えがあるのでしょう。点滴すれば症状が改善すると思い込んでいる場合もあります。しあkし、代謝が低下しているのに、点滴で過剰な水分を与えると、血管に吸収しきれずに身体がむくんだり、痰が出やすくなったりして苦しむこともあります。終末期になると水分や食事の摂取量が減りますが、それは身体を軽くして苦しまないで逝くための準備でもあるのです。』死に向かっている身体には、余分な水分が“仇”になるというわけだ。
 
 
【『10の基本ケア』で在宅ひとり死を実現】
社会福祉法人協同福祉会(奈良県大和郡山市)では、『10の基本ケア』という自立支援ケアによってトイレに自分で行けるようにさせてしまう。オムツ交換などの排泄介助は家族がもっとも負担に感じるが、これが解消されることで在宅介護を決断する家族も少なくないのだという。ひとり暮らしの高齢者にとっても、排泄の自立は在宅生活を続けるうえで大きな力になる。
1. 換気する
2. 床に足をつけて椅子に座る
3. トイレに座る
4. あたたかい食事をする
5. 家庭浴に入る
6. 座って会話をする
7. 町内にお出かけをする
8. 夢中になれることをする
9. ケア会議をする
10.     ターミナルケアをする
 
 
自宅での看取りを実現するには、本人と家族の“覚悟”が必要なことを紹介した。しかし、覚悟は最初からあるのではなく、経過とともに培われていくものなのだということを痛感させられた。ケアマネや医療・介護従事者の皆さんが、本人と家族の揺れる思いをきちんと受け止め、最期まで寄り添い続けてくれたからこそ、覚悟が持てる良いになったのだ思う。そう、覚悟は後からついてくるので、最初からなくたっていいのだ。

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