創業以来増収増益を続ける株式会社エス・エム・エスを徹底解剖!!〜医療・介護系企業分析シリーズ④〜
サマリー: 好調。介護分野が大きく成長すると予想。
エス・エム・エスは医療介護の領域で40以上のサービスを展開。創業以来増収増益を続け、現在は医療キャリアが主軸で、介護キャリア・介護SaaSが大きく成長している。
記事の構成:
1.会社概要
- 1_a 歴史
- 1_b 事業内容
- 1_c 業績推移
2.キャリア事業の分析
- 2_a 自社分析
- 2_b 市場分析
- 2_c 競合と自社ポジションの分析
- 2_d 今後の戦略
3.介護事業所向け事業の分析
- 3_a 自社分析
- 3_b 市場分析
- 3_c 競合と自社ポジションの分析
- 3_d 今後の戦略
4.海外事業の分析
- 4_a 自社分析
- 4_b 市場分析
- 4_c 競合と自社ポジションの分析
- 4_d 今後の戦略
5.簡易財務分析
6.評価
- 6_a 現状に対する評価
- 6_b 将来に対する評価
- 6_c 今後取るべき戦略の提案
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1.会社概要
1_a 歴史
エス・エム・エスは2003年の創業で、医療・介護を中心に国内・アジア・オセアニア地域で40以上のサービスを展開。医療介護の市場成長とともに、創業以来増収増益を続けている。2008/3東証マザーズ上場、2011/12東証一部上場。
1_b 事業内容
キャリア分野
・医療キャリア(人材紹介、求人サイトなど)
・介護キャリア(人材紹介、求人サイトなど)
介護事業者分野
・介護事業者向けSaaS
海外分野
・医療従事者のプラットフォーム(アジア・オセアニア等15の国と地域に展開)
1_c 実績
直近5年間で売上・営業利益ともに順調に成長している。
2.キャリア事業の分析
2_a 自社分析
看護師・介護職の人材紹介サイト・求人サイトを主に運営している。事業上季節ごとの偏りはあるが、年単位では順調に伸びている。
医療キャリアは前年比10%前後で安定して成長している。看護師以外の職業へも拡大し売上を伸ばしている。
介護キャリアは前年比30~40%のスピードで成長している。成長スピードも年々加速している。
2_b 市場分析
看護師・介護職の転職市場を「従事者数」「転職率(離職率)」「WEB媒体選択率」の観点から分析を行った。
【看護師】
SMS含め業界の上位プレイヤーは売上・利益ともに伸びている。
その一方で、
・従事者数 横ばい
・離職率 横ばい
であることから、
・WEB媒体選択率の増加(求人誌・ハローワークから→WEB転職へ)
が市場の成長要因であると考えられる。
長期的には、看護師の転職でWEB媒体を使用することが一般化し、徐々に成熟市場になっていくと予想。
【介護職】
こちらも看護師と同じく、SMS含め業界の上位プレイヤーは売上・利益ともに伸びている。
・従事者数 成長鈍化
・離職率 横ばい
であり、看護師に比べてまだ介護職のWEB媒体選択率が低いため、より高い成長率で市場が伸びていると考えられる。
しかし、看護師と同様に、WEB媒体の使用が一般化した段階で徐々に成熟市場になっていくことが予想される。
短期では高い成長の市場。長期では鈍化していくと予想される。
2_c 競合と自社ポジションの分析
看護師・介護職のどちらも、上位プレイヤーの特徴は、SEOが強く検索流入が多いということ。WEBマーケティングのノウハウを持つIT企業が上位に来ている。関連性の高いワードで検索上位を取れるかどうかが勝負の分かれ目になるだろう。
自社ポジションだが、2018年7月~9月の月間訪問者数をベースにすると、
看護師(ナース人材バンク):2位
介護職(カイゴジョブ):2位
となっている。
2_d 今後の戦略
・他職種のキャリアへの拡大(ケアマネ・リハビリなど)
・同業種のキャリア以外のサービスの充実(派遣・資格取得・コミュニティなど)
が想定されるが、いずれも看護師・介護職の転職と比べると、小規模なビジネスになるのではないか。
3.介護事業所向け事業の分析
3_a 自社分析
介護特化の経営支援SaaS「カイポケ」を提供している。
拠点数に応じて固定の月額利用料を受け取るサブスクリプションモデルとなっている。
売上、導入拠点数、単価ともに順調に成長している。
3_b 市場分析
市場を、「介護事業所数」×「経営管理ツール導入率」×「単価」の要素に分けて考えると、
・介護事業所数は、横ばい。
・経営管理ツール導入率はまだ余地があるのではないか(サービス対象152,000事業所、カイポケ導入15,950事業所)
・単価は、各事業所の売上一定・経費率一定と考えると、上がることは考えづらい
とすると、導入拠点数の増加で、短中期では成長市場だが、全国の介護事業所数自体は伸びないので、長期的には成熟すると予想。
3_c 競合と自社ポジションの分析
競合他社は何社か存在するが、当社の順調な伸びを踏まえると、他社商材よりもうまくメリットを訴求が出来ていると想定。
3_d 今後の戦略
・導入事業所数の増加
・定額サービス以外のオプションを充実させ、単価の向上を図る
4.海外事業の分析
4_a 自社分析
2015/10に医療情報サービスを提供するMIMSを買収し、アジア・オセアニアの15の国と地域に事業を展開している。
MIMSの事業
・Pharma Marketing
医療従事者向けに無料で医薬品の情報(紙ベース)を提供。
製薬会社から掲載料を徴収するモデル。
・Healthcare Marketing
医療事業者に医薬品データベースを提供。オセアニアが中心。
事業者から利用料を徴収するモデル。
その他、アジアで医療従事者のキャリア事業を行う会社を数社買収し、アジアで医療キャリア事業へ参入している。
4_b 市場分析
長期的に医療サービスの充実・高齢化により、病院数・医療従事者の増加が見込まれる。
4_c 競合と自社ポジションの分析
MIMSには東南アジア・オセアニアの230万人の医療従事者(うち50万人が医師)のアカウントがあり、エムスリーの医師会員数がグローバルで約450万人(うち中国240万人)であることを考えると、ある程度のシェアがあると思われる。
4_d 今後の戦略
M&Aを積極的に行い、引き続きシェアを高める。
MIMSの230万人の医療従事者とSMSのキャリア事業ノウハウと結合し、アジアで医療事業者のプラットフォームを構築することを目指す。
5.簡易財務分析
6.評価
6_a 現状に対する評価
・医療キャリア=安定
・介護キャリア=大きく成長
・介護SaaS=大きく成長
・海外=投資段階
医療キャリアは、市場フェーズとしては徐々に成長市場から成熟市場に切り替わっていくタイミングと想定される。
介護キャリア・介護SaaSは、介護転職・介護事業所のWEB化・IT化の流れの中で大きく成長している。
海外分野は、長期的に大きな成長が見込まれる市場に投資をしている段階である。
6_b 将来に対する評価
・医療キャリア=キャッシュカウ
・介護キャリア=キャッシュカウ
・介護SaaS=キャッシュカウ
・海外=長期的なスター事業として期待
国内の医療・介護市場で展開する事業に関しては、5~10年の長期では、市場が成熟し、キャッシュカウの位置づけになると予想。
一方、海外向け事業は市場のポテンシャルが大きい。今後、積極的に投資をして、それぞれの海外事業で上位プレイヤーになれるか、維持出来るがが鍵となる。
6_c 今後取るべき戦略の提案
長期的な成長を続けるには、海外事業の成功と、新たな国内における新規事業の展開が重要となってくる。
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