💖絵文字の㊙️ヒミツ🕵️‍♀️その2️⃣

iPhone や iPad が利用可能なフォントを確認する新しいアプリ AllGlyphs（オールグリフス）を作りました。
【2022年3月6日：iOS と「iPadOS」の区別について加筆しました】

『みんな🙋大好き💖絵文字の㊙️ヒミツ🕵️‍♀️』で紹介した『絵文字アナライザ』を作った時に iOS の絵文字だけ macOS よりもグリフ数（文字数）が多いことに気づいたのがきっかけです。
簡単なプログラムを作り確認したところ実際にiOSだけグリフ数が多かったのです。
どんな絵文字が iOS だけに追加されているのか知りたくなり専用アプリを作りました。

AllGlyphs アプリ

AllGlyphs（オールグリフス）はiPhone / iPad 用の無料アプリです。
iOS（iPadOS）が標準搭載しているすべてのフォントの一覧表を確認したり、PDFとして保存（共有）するアプリです。

‎AllGlyphs（オールグリフス）

iPhoneとiPadで利用可能です。
デバイスの向きは縦長・横長どちらにも対応しています。

ひとつのフォントには少ないものでも200以上、漢字を含むものだと4万以上のグリフ（文字）を持っています。
アプリ内課金で全機能を利用できます。（無料の範囲で150グリフを確認できます）
無料アプリですが広告は表示しないので個人情報の収集はありません。

iOS は macOS より絵文字が多い！

macOSでは「Font Book」アプリで利用可能なフォントを確認できます。macOS 11.5.2 で確認すると Apple Color Emoji は 3,432 です。
AllGlyphs アプリでiOS 14.7.1 の Apple Color Emoji を確認すると 3,902 です。

フォントファイルが持つグリフ数（文字数）はプログラムで簡単に確認できます。

macOS 11.5.2 の絵文字フォント（Font Bookアプリの画面）

iOS 14.7.1の絵文字フォントはバージョンは同じでもグリフ数（文字数）が違う！

実際にどんな絵文字が多いかの確認は少々厄介です。
通常は「文字」を指定して画面に表示します。
どんな文字が増えたのか分からなければ表示できません。

文字とグリフ

専門用語の『グリフ（glyph）』は、ちょっと説明が難しい、大雑把ですがグリフは文字と対応するものです。
グリフが集まったものがフォントです。

ひとつの文字にひとつのグリフが最も多いですが、複数の文字の組み合わせを特殊な形で表示するためのグリフや、複数のグリフを組み合わせてひとつの文字にする場合もあります。

複数の文字に対応するひとつのグリフの例【アプリ内課金後の表示】

実際には一つのフォントの中に縦書き用のグリフと横書き用のグリフを持っていたりします。
絵文字の場合はシンプルでしたが、絵文字が高機能になりちかごろ少し事情が変わってきました。
現在の絵文字はひとつの絵文字を表示するのに複数のグリフを合成するものがあります。

フォントとグリフ

フォントはグリフの集まりです。
各グリフには番号がついています。
通常は文字コードに対応するグリフを表示してくれます。

「AllGlyphs」アプリでは1番から順にすべてのグリフを表示します。

文字コードからではなくグリフ番号で表示するには、ローレベルのAPIを使います。
ローレベルのAPIは普段は使わないのですがいろいろの機能を持っています（そのかわり使うのはいろいろ面倒です）

またグリフ番号に対応するグリフ名を取り出すことができたので表示しています。

グリフ名はフォントファイルにより違いがあります。
文字コードを表すものやグリフの説明になっているものがありました。

理由はわかりませんが、グリフ番号ゼロはどのフォントでも使っていないようです。
有効なグリフ番号は 1 から Glyph count - 1 番までです。

グリフの幅

各グリフの幅もフォントによりいろいろです。（高さは指定する文字サイズで決まります。）

等幅フォントと呼ばれるフォントは基本的にすべての文字幅が同じです。
漢字なども基本的にすべての文字幅が同じです。
ラテン文字の多くは文字により幅が違います。（「i」は狭く「W」や「M」は広い）

『AllGlyphs』アプリではフォントのすべてのグリフが表示できる範囲を決め、すべてのグリフを同じ枠で表示しています。
横幅の広いもの、原点の前後に広いものもあります。

サンプル画面　固定幅：Courier New フォント　

ラテン：Helvetica Neue フォント　

漢字：ヒラギノ明朝 ProN W6【アプリ内課金後の表示】

アラビア：Al Nile フォント　

ファン：美しい筆記体の Zapfino フォント【アプリ内課金後の表示】

中華フォント

『AllGlyphs』アプリではフォントは名前順に並べています。
フォント名とそのフォントのサンプルも表示しています。
CJKと呼ばれる漢字を含むフォントのサンプルは「あ漢刃海」を表示し、俗に中華フォントと呼ばれるフォントを判別できます。

そのほかのフォントは「ABWabc0123」を表示し太さなどを確認できます。

フォント情報と寸法情報

フォントは美しく文字組みするため、長年印刷業界でつちかわれたデータが詰め込まれています。

『AllGlyphs』アプリではフォント情報と寸法情報を情報ボタンで表示します。

ファミリー名は太さなどの違うバリエーションを持つフォントの全体としての名称です。
ポストスクリプト名はプログラムでそのフォントを指定するために使います。

Full name はフォントメニューに表示するなど人間向けの名称です。
日本語で『AllGlyphs』アプリを使うと「ヒラギノ」など日本語フォントは日本語にローカライズした名前を表示します。

バージョンは各フォントファイルのバージョン番号です。
グリフ数は文字通りフォントが持つグリフ数です。

寸法情報のSizeは全グリフの表示に使っている文字サイズです。
50ポイントが基本で、絵文字は80、Zapfinoは23ポイントです。
Ascent、Descent、Cap Height、X-hight は表示サイズにより変わります。
Slant Angle は斜体の傾斜角度に相当する値です。

寸法情報はフォント関連情報としては基本的なもので次の図を参照してください。（Text Programming Guide for iOS より）

『AllGlyphs』アプリではベースラインを赤、グリフの原点を通る縦線を青で表示しています。（下図は Optima Bold Italic の PDF画面の一部です）

PDFの共有

『AllGlyphs』アプリでは各フォントのグリフを表示だけでなく、PDFとして共有できるようにしました。
無料の範囲（サンプルPDF）でも表示と同じ150を表示するPDFを共有し保存や印刷が可能です。
（『AllGlyphs』アプリには印刷機能はありません、共有先で保存・印刷してください）

AllGlyphs：PDFサンプル.pdf

125900 Bytes

ファイルダウンロードについて

ダウンロード

共有PDFの表紙にはフォント名とポストスクリプト名、バージョン、グリフ数、実行OSのバージョンが確認できます。

OSは UIDevice クラスの systemName を使っています。
iPadで実行した場合も「iOS」となっています。
【2022年3月6日加筆：iOS 15.3.1 では「iPadOS」と表示するようになっています。『systemNameがiPadでは「iPadOS」を返すようになっていた』に簡単な解説を書きました。】

絵文字のみ表紙にグリフ名の簡単な説明を表示します。

各ページはヘッダーにフォントフルネーム、バージョン、OSバージョンとページ内のグリフ番号、フッターに AllGlyphs アプリのバージョン番号を表示しています。

各グリフの下にグリフ番号とグリフ名を表示します。

共有前のPDFは画面で確認できます。

画面でPDFをスクロールと拡大縮小自在です。
共有する前に容量も確認できます。

サンプルPDFの最後のページにはAppストアへのQRコードを表示します。
このQRコードは制限解除をApp内購入した後は表示しません。

フォントサンプルのブラウザーとしての利用

iPadでマルチタスキング可能なアプリとSlide Over または Split View で『AllGlyphs』アプリを開きフォントのブラウザーとして使うことができます。

絵文字アナライザと組み合わせた画面です。

SwiftUIアプリ

『AllGlyphs』アプリは『絵文字アナライザ』と同じく SwiftUI を使って作ったアプリです。

ダイナミックタイプとダークモードに対応しています。
グリフの表示には LazyVGrid と ScrollView を使っています。
グリフ数が多い場合に画面を縦長にしていると最後のセルを表示できない場合がありました。
表示文字サイズなどの条件によりかわりますが、このような時は横長に回転し確認してください。

iOS だけで表示可能な絵文字

iOS で追加された（iOS だけで表示可能な）絵文字のうち「🧑💁👮🎅」に対応するものをTwitterで表示確認しました。

『AllGlyphs』アプリでグリフ名から文字コードを確認し『絵文字アナライザ』でコード入力してコピーしました。

上の行が通常の絵文字、下の行がiOSだけで表示可能なグリフです。

Safariでは標準の絵文字部分はTwitter独自の絵文字に置き換えられています。
一方iOS独自のものはそのまま表示しています。

Twitterアプリでは絵文字の置き換えしないのですね。

同じツイートをmacOSのSafariで表示すると

当然ですが iOS 独自の絵文字グリフは macOS では表示できません。
iPhone の Safari での表示を拡大したものとくらべてください。

ブラウザーでTwitterを見ると絵文字はTwitter独自のグリフを表示します。
しかしiOS のみのグリフに対応するTwitter独自グリフは存在しないので、iOSの絵文字をそのまま表示することを確認できました。

『AllGlyphs』アプリで皆さんご自身で確認してください。

それにしてもiOSの絵文字だけなぜグリフが470も多いのでしょう？
なぜグリフ数が違うのにフォントのバージョンが同じなのでしょう？
なぞです。