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512KカナMac マニュアルと付属品
「地方開発者の私的Mac40年」の二つ目の記事です。
❶「Macintosh 512K カナ」
❷「512KカナMac マニュアルと付属品」★この記事
❸「Macintosh Plus」
❹「初期のMac用アプリ」
❺「作るは地獄と言われたソフト開発」
❻「APDAと90年代に作ったアプリ前半」
❼「APDAと90年代に作ったアプリ後半」
Mac本体とハードは「Macintosh 512K カナ」に書きました。
ここではマニュアルと付属品について書きます。
【2024年1月7日:国立国会図書館デジタルコレクションの橋口五葉作品へのリンクを追加しました】
Macintoshオーナーズガイド
「Macintosh 512K カナ」は日本向け製品に仕上げられていました。
マニュアルも【完全に】日本語に翻訳済みの状態です。
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裏表紙が長くなってい次のように書かれています。
このマニュアルはツインリングで製本されていますので,Macintoshを使用中でも開いたままにしておくことができます。
このページはしおりとしてご使用になれますが、本棚に収納する際は、表紙の裏にはさみ込んで背中のタイトルがひと目でわかるようにできます。
マニュアルのお手本のよう
1980年代コンピューターが社会に広く普及し、ソフトウエアを使う人もとても増えていました。
当時のソフトウエアのマニュアルは評判が悪いものが多く(ソフトウエアそのものも使いやすいとは言えないものが少なくなかった)、どのように改善すれば良いかをテーマにした本が書店のソフトウェア開発関連書籍コーナーの一角に並んでいました。
当時は読まれないマニュアルが問題になっていました。
必要な情報が見つからない、わかりにくい説明などプログラマが片手間に書いた説明文はソフトウェアの専門家以外にはとっつきにくいものになりがちでした。
マニュアルの改善策として「開いたページが閉じないようにツインリングで製本する」があったのを覚えています。
マニュアルを見ながらキーボードをタイプなど操作しなければならないためです。
内容についても目次や索引を用意するなどはもちろん受動態を使わないなどいろいろ書かれていました。
私は自分の作ったソフトウエアは自分でマニュアルを書いていたので、どうすれば分かりやすく書けるか模索していました。
このためMacのマニュアルには(製本だけでない)完成度の高さに驚かされました。
カラー写真を多数使った美しいマニュアル
贅沢なつくりのマニュアルです。
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154ページあります。
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すべてのページがカラーではありませんが、カラー以外はのページは黒赤の2色刷り+グレイ特色インキです。
基本的に英語のマニュアルの翻訳と思われますが、セットアップのページにカナキーボードのキー配列と使い方が載っています。
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グレイ特色インキは本文にはちょっと薄すぎですね。
グレイ特色部分は画面の注目部分以外を目立たなくするためにも効果的に使われています。
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カナシステムのフォントはメニューなどでつかわれているシカゴフォントにも組み込まれバランスは崩れていいません。
この点後から登場した漢字Talkの初期のバージョンは文字サイズが大きく残念な表示でした。
章ごとにカラー写真の見開きページがあり、次ページにその章の目次があります。
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MacPaintで(スーザン・ケア)が描いたと思われるイラストも載っています。
MacPaintの表現力と可能性を示すサンプルでもあります。
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Mac画面はあまり写真写りは良くない(特にカラー写真)ですね。
実物の画面は美しいのですが。
カラーページ以外では主に画面キャプチャが使われています。
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デスクアクセサリー
「カナ」システムではメニューなどアプリの表示もカタカナ表示です。
「ケイサンキ」「トケイ」「メモヨウシ」などは、今見るとちょっと残念な感じがします。
フロッピーディスクで起動するので、英語システムで起動すればいつでもオリジナルの表示にもできました。
FD容量とメモリーが限られていたので「メモヨウシ」「スクラップブック」が不可欠なツールでした。
二つのアプリを連携させる場合、ひとつのアプリでデータを作成し「メモヨウシ」「スクラップブック」にペーストしてから別のアプリを起動して「メモヨウシ」「スクラップブック」からコピー&ペーストしていました。
「メモヨウシ」は文字データ専用ですが、直接入力もできました。
スクラップブックはコピーした内容を一時保存するためのもので、アプリ独自の情報にも対応していて、別アプリから直接コピーするのと同じデータをペーストすることができました。
Macintoshはシングルタスクでした。
アプリを起動したまま利用できるツールとしてデスクアクセサリーがありました。
デスクアクセサリーは単一のウインドウを持つ独立したソフトウェアです。
初期のMacintoshのOSについてWikipedia の英語ページにありました。
「スクラップブック」の見出しが欠落していますね。(ぜいたくな作りのこのマニュアルも、日本語版はタイトなスケジュールで作られていたことが想像されます)
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時計もコントロールパネルで日時の修正ができました(トケイDA でもできました)。
DA(Desk Accessory)は「卓上アクセサリ」と訳されています。
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現在のmacOSに至るまで基本的なメニューショートカットは初代Macintoshから変わっていません。
ショートカットは基本的に英語のメニュー項目名の頭文字で覚えやすく使いやすいです。
下の右ページはMacProjectの画面写真が下にずれていて、MacDraw・Macintosh Pascalなどの見出しと本文がずれていますね。(今回じっくり見て気づきました)
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セキュリティーキットとプログラマ用スイッチの説明もあります。
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フロッピーディスクで起動できない場合の問題はアイコン表示でわかりやすく確認できました。
文字だけの当時のPCとの大きな違いでした。
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充実した用語解説
索引とは別に「あいうえお順」の用語解説があります。
アイコンや該当部分の画像付きで明快です。
翻訳本には原書(アルファベット)順のまま翻訳しただけのものも見られましたが、このオーナーズガイドはコストを惜しまず作られています。
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じっくり見直すといくつか校正もれがありますが、日本語の本として完成度が高い美しいマニュアルです。
(付属品にマニュアルの正誤表があります)
MacPaintマニュアル
32ページのマニュアルです。
ページ数が少ないのでツインリングではなく平綴じです。
表紙のMacPaint画面は日本風の作品を鉛筆ツールでドット単位に修正しているところです。
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表紙は「髪梳ける女」(1920年 橋口五葉)を表示しているMacPaint画面です。
この作品が国立国会図書館デジタルコレクションにありました。
ありがたいことに拡大し詳細に確認できます。
ジョブズがこの作品を愛した理由がわかる気がします。
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購入当時はなぜ日本風の絵が使われているのか謎だったのですが、2023年に放送されたNHKの番組で明らかになりました。
さすがにスーザン・ケアでも、この絵(髪梳ける女)をいきなりマウスでは描くのは難しそうです。
多分スキャナで取り込んだものを拡大機能でドット単位に微調整したのでしょう。
手持ち資料を少し調べたら「レボリューション・イン・ザ・バレー」に『スキャンしたものを元にして描いた』と載っていました。
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秀逸な表紙デザインはMacWriteやMacDrawなどと同じで、その後インサイドマックの表紙にも受け継がれていました。
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インサイドマックの表紙は時代やハードカバーかどうかなどで変わったように思います。
この表紙はThird Printing(1987年4月)のものです。
インサイドマックの表紙と同じような印象でしたが、MacPaintは画面とマウスを操作する手、インサイドマックはPlusの基盤とキーボードでした。
白い背景で印象は似ていましたが違いましたね。
ちなみにインサイドマックのVはMacintosh II の基盤とADBキーボードが表紙でした。
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アプリもマニュアルもすごかった
MacPaintはその後のグラフィックアプリの雛形として絶大なインパクトのあったアプリです。
マウスと道具として使えるレベルのアプリがあればパソコンで十分美しいグラフィックが作成できることをデザイナーに示したと思います。
マニュアルは MacPaintの基本操作 MacPaintの応用 リファレンス の三部構成です。
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印刷は基本的に黒と赤と特色グレイの3色ですが、画面部分に特色インクが使われていて(ほぼ白なのですが)美しい紙面にこだわりが感じられます。
グレイの特色インクは上記右ページのイラスト部分や画面の説明などで強調したくない部分で使われています。
(黒のアミでは美しく表現できなかったのかもしれません)
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ツールを左に配置するレイアウトと(スーザン・ケアがデザインした)ツールアイコンの多くはその後の多くのグラフィックソフトウエアに踏襲されています。
白黒2値なので少ないドット数で明確に特徴を表すのは難しいですが、Macintoshは1984年の登場当初からシステム全体で高い完成度で統一されていました。
画面の表示に対するユーザーの操作を明確に図と簡潔な文で説明しています。
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メニューはもちろん、操作画面内の文字入力も日本語(カナ)にローカライズされています。
1984年〜85年に日本でMacintoshを購入した人の過半数はMacPaintを体験するためだったのではないでしょうか。
とても完成度が高いアプリでした。
アプリアイコン
Macintoshではファイルにはすべて中身を示すアイコン付きで表示されています。
当時のパーソナルコンピュータ(DOSなど)ではファイルの種類を拡張子で区別していましたが、Macintoshではファイルの作成者(クリエーター)とタイプの二つの情報を持っていました。
作成者とはファイルを作成したアプリのことです。
ファイルの作成者とタイプにより別のアイコンが表示され、中身が何か明確になりました。
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上記は柴田文彦さんの アップルGUI原論「なぜメニューバーは上端にあるのか?」のものです。
ここで紹介されているResEditは開発ツールです。
ResEditなどについても別の機会に書こうと思います。
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版権など
MacPaintマニュアルの見返し(表紙の裏側)に 保証と責任の範囲 版権 が書かれています。
下の方には次のように書かれています。
本マニュアル原文は、Carol Kaehler(アップルマッキントッシュユーザーエデュケーション)により記載されたものであり、Clement Mokによりデザインされ。Susan Kare によりイラストが作成されています。
プログラムはBill Atkinsonによって開発されたものです。
アイコンなどをスーザン・ケアがデザインしたことは有名ですが、マニュアルのサンプルなども担当していたのですね。
どおりで美しいはずです。
プログラマの名前も(MacPaintのプログラマとして元々超有名ですが)マニュアルに載っていたのは今回の記事のためじっくり見直して発見しました。
WikipediaのMacPaint英語ページによるとスーザン・ケアはリリース前にMacPaintをベータテストしたそうです。
グラフィックツールとしてのMacPaintの完成度の高さはベータテスターの貢献も少なくなさそうです。
MacPaintのソースコードが公開されている
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