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ヴィレッジヴァンガードという居場所

00年代前半を駆け抜けた世代にとってヴィレバンは特別な場所だ。

工場夜景や廃墟の写真集。
変な小物。巨大なライター。
普通の本屋には売っていないマニアックなサブカル誌。
外国の激辛チップス。

知らないコト・モノであふれていて居心地が良かった。

誰かの家に行けば、大体変なすだれやヘンプのお香、床に敷き詰めた変なシートやカーペット。ワルサーP.38のライター。冷蔵庫にはなんだかよくわからない原色のプラスティックの輪っかが張り付いていたりぶら下がったりしていた。

濱マイクや恋する惑星、スワロウテイルを
家に再現する為の材料だ。

個性というものを強制されながら生まれつき何も持たなかった僕たちが助けを求めたのがいわゆるサブカルだ。でも頭の中だけにあるそれを補完するのにモノが圧倒的に足りていなかった。

古い映画をみて、ワンダーJAPANと宝島の古本を漁るだけではもう満たされなくなっていた。

そこにぴたりとはまったのがヴィレッジヴァンガードだ。
救ってもらったといってもいい。
中野ブロードウェイの小型版を全国に輸出してくれたことには感謝しかない。

新しい情報をくれ、物が供給され、そしてまた新しい方向へ深堀りするための材料が次々と現れた。
巨大なポスターを次々とめくり、ジミヘンドリックスやGNRのポスターが出てきて見た目だけで後日HMVでCDを買ったりもした。
その頃の本や小物はもうほとんど残っていないけど自分の青春を彩ってくれた記憶だけは綺麗なままに残っている。

だからこそ、今厳しいのは理由がわかる。
もう古いのだと思う。
当時定義されていたところのサブカルは現代ではすでに溶けて拡散して「普通」の一部になってしまっている。
今時コスプレの専門誌や廃墟写真集くらい田舎の蔦屋でも手に入るし、ヘンな物で飾り立てなくてもヘンさはいくらでも発信できる。


久しぶりにイオン系列にある店舗を覗いてみた。(そもそもイオンにあるという時点でセルアウト感がある)
あの頃の雰囲気を思い出して良い気分になったが、僕のような人間が良い気分になるということはそれは今の高校生や大学生たちにとってはおっさん/おばさん臭いものであふれたお店なのかもしれないと思った。

かつての僕らが、年上が見るような雑誌や渋谷を忌み嫌っていたように。

はたして本当にそうなのかは若い友人がいないので分からない。
いつか誰かに聞いてみたいものだけども、思い出は思い出のまま取っておきたい気もする。

あのお店は命の恩人なのだ。

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