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フランス:近親相姦をする父親から娘を保護しなかったとして、母親が国を相手どり提訴に踏み切る。

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トゥールーズに住む母親Sarah Kadi は「危険にさらされている人物に対して措置を講じなかった」として国を相手取り提訴に踏み切る。

母親は、父親による娘への近親相姦的な行動や、ロット県で父親が別の女子中高生に暴行を加えた罪で2019年3月に判決を受けているのにもかかわらず、娘の父親に対して親権(監護)の保持を認めた裁判所を糾弾している。

母親の怒りはおさまらない。機能不全に陥った司法制度に直面した母親が、国を相手取り、近親相姦を行う父親から娘を保護しなかった、危険な状況下にある人物に対して措置を講じなかったことに対し、提訴に踏みきる母親の怒りだ。

2015年から2019年まで間、4年以上、娘のMarie(仮名)は、彼女の父親が別の性犯罪事件の犯罪者として登録されているにもかかわらず、両親の離婚後にともない取り決められた監護期間である父親との週末と学校の休みの期間の半分を利用され、父親から性的暴行を受け続けていた。

2022年1月12日、最終的に父親はトゥールーズ控訴裁判所により、未成年者に対する近親相姦的性的暴行で懲役25カ月と3年間の社会司法的監視の判決を受けた。

2015年、母親が起こした最初の訴えは棄却された。

これは随分遅い有罪判決である。なぜなら娘のMarie は既に2015年9月、4歳の時に、父親からの性的虐待を訴えていたからだ。

娘は当時、「パパが私のあそこ(女性器)に触って遊ぶの。体を洗うのじゃないよ」と訴えていた。

当時、父親と離婚していた母親は、娘の主張を確認し、父親を告訴した。

しかし母親のこの訴えは「証拠不十分」により棄却されてしまう。それどころか、裁判所は、ロット県に住む43歳の男性である父親Jérôme S.に娘への宿泊権と訪問権(隔週の週末と学校休日期間の半分)を保持させることを決めてしまった。

「あの当時、私は父親を疎外する、嫉妬深い、娘を父親から引き離そうとする母親と見られていました。裁判所は私の訴えを信じてくれず、落ち着いてくださいと言われたのです。裁判所は、隔週の週末と学校の休み期間の半分は、娘に父親のもとへ行くように私に命じました。私は娘を性的虐待する父親のもとに行かせなければなりませんでした」

Sarah Kadi, 近親相姦の被害者である娘Marieの母

母親は手続きに従う。結果、娘のMarieは2015年から2019年まで父親と会い続けることになった。

2019年10月 未成年者への強姦未遂で父親を勾留

そしてついに2019年10月、すべてが崩れ去った。トゥールーズ警察署は、母親Sarah に娘のMarie の父親が「未成年者に対する強姦未遂容疑」で拘留中であり、事情聴取を受けていることを連絡した。

コロミエ在住の少女が、娘Marie の父親Jérôme S.にレイプされそうになり、娘の父親を訴えたのだ。そして、母親のSarah は娘に、父親が刑務所に収監されたことを知らせた。

その時、娘のMarie は一言「ママ、パパはあれから一度もやめなかったんだよ」と言った。

「津波のような衝撃を受けました。ゾッとしたんです。娘は父親に脅されていて何も言えませんでした。最初に娘が助けを求めた時も、司法制度は何もしてくれませんでした。2015年に私が訴えたことは正しかったということ、司法制度は娘を守らなかったということがわかり、長期間の精神的苦痛を味わいました」

Sarah Kadi

その後、母親は「父親による娘への性的暴行」で新たに提訴に踏み切った。

2019年3月 (父親は) Cahorsで女子中学生への暴行ですでに有罪判決

しかし、Sarah 親子の地獄への転落はこれだけでは済まなかった。

新たに娘の父親へ法的手続きを開始した母親 は、性的虐待をしていた父親が同じ年の2019年3月、Cahors で 「職務権限を持つ成人による未成年者への性的暴行 」で既に有罪判決を受けていたことを知る。

これは、娘Marie に対する性的暴行容疑とは別の、2度目の少女に対する性的暴行であった。

父親のJérôme S.は、Cahors の中学校で警備員をしていた2010年に、生徒に対し2度にわたって性的暴行をしていた。当時ショックを受けていた被害者が数年後、告訴に踏みきったのである。

その後、娘の父親は裁判にかけられ、2019年3月に懲役2年、禁固6カ月の判決が下された。そして、父親は性犯罪や暴力犯罪の加害者ファイルに登録されることになるが、娘の母親Sarah にこのことは知らされていない。

「2019年3月まで、父親の有罪判決を子供の母親に誰も知らせませんでした。裁判所は、2015年に母親が起こした最初の訴えを審査するべきだったと思います。子どものMarie の親権(監護)は維持されたままでした。 Cahors の裁判所は、母親に情報を伝えることはありませんでした。父親はその後、性的虐待した娘と会いながら、母親に何も知らせず、電子ブレスレットを装着したまま刑期を終えました。これは受け入れがたい」

Maître Myriam Guedj Benayoun、Sarah Kadiの弁護士

母親Sarah Kadiは国を相手取り提訴に踏み切る

このような状況になり、母親のSarah Kadiは国に対して提訴に踏み切る。

「娘は保護されませんでした。司法は機能不全に陥っているとしか言えません。司法に裏切られたと感じています。近親相姦の話をするのは、ただごとではないですよね。推定無罪の原則はわかります。しかし子供の証言を信じることは予防原則となります。司法制度に、娘に起きたことの責任をとってもらいたいと思っています」

Sarah Kazi は続ける。

「司法制度の過失により、娘を4年間性的虐待加害者のもとに委ねさせた。えぇ、これは深刻です」

弁護士のMyriam Guedj-Benayounは説明する。

「娘のMarie は保護できる可能性がありました。しかし、重要な情報は母親に伝えられず、子どもの証言が信じられなかったため、子どもは性的虐待加害者のもとに委ねられてしまいました 」


フランスでは近親相姦の訴えは94%が却下される


「フランスでは毎年16万人以上の子供が近親相姦の犠牲になっています。別の言い方をすれば、94%の訴えは棄却されています。これはあまりにも多い。推定無罪の原則は重要です。しかし、このような場合、子どもの最善の利益を優先させるべきではないでしょうか」

家族法の専門家、Myriam Guedj Benayoun

近親相姦の被害者である他の子どもたちも支援する

現在11歳になる娘Marie の父親は、娘への性的虐待の罪で有罪判決を受け、服役している。

「私の娘Marie は父親からの視線と対峙しながら、勇気を持って証言しました」
母親のSarah は説明する。

「私たちは、本当に恥ずかしいと思うこと、本当に恐れなければならないことを変えなければなりません」

父親のJérôme S.について、司法手続きはまだ終了していない。ロット県在住の父親は、2019年にコロミエで16歳の少女をレイプしようとした罪でオート=ガロンヌ軽犯罪裁判所に次回出廷する予定だ。

「私は、本日、近親相姦の被害となっている他の子どもたちのためになればいいと思い、私と娘が受けた苦しみと7年に及ぶ戦いのお話をさせていただきました。このような非常にデリケートなケースにおいて、子どもの訴えは何よりも考慮されなければなりません」

母親のSarah Kadi はこのように締めくくった。彼女は今、あらゆる形態の児童虐待と闘うPapillons協会で働いている。

出典

https://france3-regions.francetvinfo.fr/occitanie/haute-garonne/toulouse/toulouse-une-maman-va-porter-plainte-contre-l-etat-pour-ne-pas-avoir-protege-sa-fille-d-un-pere-incestueux-2434081.http



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