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皆伝 現代文 読解02 段落同士、段落内の構造について

段落同士、段落の中の小さな構造としては、
要素の組合せを見抜きましょう。

要素は4つあります。
①事実、一般論 ②筆者の意見 ③専門家、関係機関の意見 ④他 

詳しく書きます。
①事実、一般論
多数派の意見や常識とされていること、アンケートや統計などですね。
「赤信号なら止まるということは常識である」
「日本人の多くが今やパン食である」
「2026年度の政府統計によると、日本人の56%がカロリー不足である」
「2020年2月の調査では、四国に野生の熊はいなかった」

②筆者の意見
わたしは」「筆者は」と書いてあれば、間違いなく筆者の意見です。
主語が書いていない場合も、筆者の意見であることが多いですね。
この論文は「小林さんと君川さんの共著である」というような筆者が二人、複数いるとわかる場合は「私たちは」という主語も筆者の意見ですね。
「(筆者の意見)と思う」「(筆者の意見)~は必要だ・不可欠だ」と書いてあることも多いですね。

まとめの言葉、
つまり、(筆者の意見)」
結果として、(筆者の意見)」
要するに、(筆者の意見)」
というのもあります。

疑問も筆者の意見です。
「本当にそうだろうか」「とあるが、そうだろうか」「とある。果たしてそうだろうか」
否定も筆者の意見です。
「とは言えない」「とは思えない」「そうではない」
仮説、推論、推測も筆者の意見です。
「人類が月に移住することで、人口問題を解決できると考えてみよう」
「ビッグバン後に生まれたファーストスターは、消滅して存在しないのかもしれない」
「年々降水量が減っているので、どうやら今年も水不足になりそうだ」
比喩も筆者の意見です。
「鳥のような置物」「竜のような雲」
限定条件も筆者の意見です。

③専門家、関係機関の意見
田ノ川教授は、著書の『アフリカの未来』で、「今後20年でアフリカの人口増加が食糧生産を上回る可能性がある」と書いている
などの引用ですね。
他にも専門家の多くは、赤字国債の発行に反対である。
内閣法制局は、当時、違憲の可能性が高いと言っていた。

④他 
①②③のどこでも使います。
指示語、具体例、根拠、因果関係

よくある段落同士の構造
③2月に内閣は「人口は増える可能性が高い」と言った(他人の意見を引用する) 
②「果たして本当にそうだろうか」(筆者の意見を疑問の形で出す)
①「昨年の統計では、子どもを持ちたくない人の割合が戦後で最も高かった」(事実を根拠として出す)
③厚生労働省は「現状では少子化はいかんともしがたい」と言っている(他人の意見を引用して④根拠として出す)
②つまり人口の増える可能性は低い(筆者の意見をまとめ、結論として出す。)

③2月に内閣は「人口は増える可能性が高い」と言った(他人の意見を引用する) 
②「私はそう思わない」(筆者の意見を否定の形で出す)
①「例えば、昨年私が話を聞いた380人中370人が子どもを持ちたくないと答えた」(①事実を④具体例として出す)
①経済的な余裕がないからだというのが、理由としては一番多かった。(①事実)
②「従って、少子化対策として、政府は経済的な不安を払拭する必要がある」(筆者の意見を④因果関係として、結論化する。)

要素について、理解しましょう。
事実「年々夏が暑くなっている」「冬は寒い」
事実ではないのは
「今日は暑く感じる」(感じない人もいます)
「7月は夏だ」(南半球では冬です)
「この壺を買えば、あなたは幸福になる」(未来のことはわかりません)
「来年、あなたは運命の人と出会うでしょう」(予言は事実ではありません)
「政府が来年の景気は良くなるというから間違いない」(これも未来のことです。政府は事実を言うとは限りません。)

まとめ「つまり/結局/要するに/すなわち/結論としては/以上の事からわかるのは」
他には、断定口調が強いのも、筆者の主張のまとめです
「~と言われる。~だ。~である。」「ーである。ーである。ーなのである。」

「段落くらいの言い分」=「論の小さなまとめ」には「即ち/言い換えれば」も使われます。
「傍線部の筆者の主張と一致する選択肢を選べ」という問では、傍線部のある段落の、このまとめを見ます。
「文章全体の筆者の主張と一致する選択肢を選べ」という問では、最初の段落の一行目(筆者の提案、疑問が多い)と、各段落の最後(段落のまとめ)の行も見ましょうね。

否定/疑問「しかし果たして本当にそうだろうか」 
「信号は四色だ」という意見に対して、
「そうだろうか」「そうかなあ」という疑問が書いてあったら、
基本的には筆者は「信号は四色ではない」と考えています。
つまり、信号は四色だという意見を否定しています。
そして、その後の文章で根拠を書くはずです。
そうやって先を予想しながら読むと文章を理解しやすくなります。

評論なら、一般論や他者の意見に対して、その直後に疑問を呈す「~だろうか」と書くことで、 筆者の主張をすることが多いですね。つまり、直後という場所でもわかるし、「だろうか」という表現の仕方でも、筆者の意見が書いてあると気付けます。
逆接の接続詞の後もそうですね。
「しかし、(筆者の意見)」
「しかし」が出てきたら、その後に書いてあるので、筆者の意見が大事とわかります。
他にも「とは言え、(筆者の意見)」
否定「ではなく、(筆者の意見)」
などが見つけやすいですね。

仮説/推論/推測「地球は冷えているのかもしれない」
「地球は冷えているという考えもありうる」
仮説/推論/推測は、(他の人の意見として明示されていなければ)基本的には筆者の意見です。
このあとに、例えば「実はアフリカの夏は涼しくなっている」と、事実を根拠として出すこともあり得ます。この事実から導き出せる推論を展開して、結論に至る構造も多いですね。
他の構造としては、事実・推論・小さな結論、これを繰り返す構造もよくあります。

比喩「のような」
評論では、比喩はたいていの場合、筆者の意見/考えです。
「サッカーでブラジルに勝とうというのは、猫が虎に勝とうというようなものだ」

隠喩/暗喩「彼は宇宙人のような人だ」
「彼は宇宙人のような変わった人だ」ということです。
「彼は変わった人だ」とも言えます。
宇宙人のような=変わったと言いかえを考えましょう。言い換えれば、比喩が何を言いたいかを理解できると思います。

直喩「彼は宇宙人だ」
これも比喩なので、宇宙人ではありません。宇宙人のようだと言っているんです。
「彼は宇宙人だ」=「彼は宇宙人のような人だ」=「彼は宇宙人のような変わった人だ」ということです。
「彼は宇宙人のような変わった人だ」という文が基本にあって、
「彼は宇宙人のような(変わった)人だ」と省略すると、隠喩になります。
さらに「彼女は宇宙人(のような)(変わった人)だ」と省略すると、直喩になります。
「モヒカンで面接に行くのは自殺行為だ」
実際に死ぬわけではありませんね。だから、比喩だとわかります。

問では「この文章は直喩を多用している」〇か×かのように訊かれることが多いですね。

限定条件「もし~ならば/以上の事から考えると/の場合は/の時は」
もしブラジルの主力選手が出場できないならば、日本は勝てるだろう。」
以上の事から考えると、合格の可能性が高いと思う。」
「京都大学に合格の場合は、東大には行かない。」
「比叡山に雪が降る時は、芥川は上海にはいかないだろう。」
「日本は優勝する。もっともビッグクラブに11人が所属する時代がくればだが。
「戦争は早く終わるだろう。但し、国民が反政権デモを続けることが条件だ」
「おそらく景気は良くなるだろう。ただ、日銀総裁が変わればという条件付きだ」
「ただ」「ただし」も注意を促す補足の限定条件ですね。

指示語 
①事前の物の言いかえ
英語が好きだ。」「私もそれすきー」
②事後に出てくるものの予告
「それはある夏の夜のこと。妖精のいる森で、~」

指示語の意味する内容は、基礎的な出題の多い大学では同じ一文内か、前にあります。
難関大学では、後ろの段落に書かれていることが多いです。
指示語の前後の言葉(「すきー」)を手掛かりにして、周辺を探すと、「好き」という同様の言葉が見つかりますね。だから、その言葉の目的語=「英語」をさすとわかるんです。
つまり、指示語の前後のキーワードの言いかえを探せば答が見つかるということです。

具体例
「私は葡萄が好きだ。例えば、シャインマスカット、これはおいしい。」
「例えば」と書いてあるのでわかりやすいですね。

「育成が進んでいる好例として、日本代表のベスト16入りを挙げられる

書いていないものもあります。
「アイドル好きなの?」「うん、乃木坂とか日向坂とか」
乃木坂、日向坂が好きなアイドルの具体例です。

「サッカー強国と言えば」「やっぱりブラジル、それからアルゼンティンかな」
ブラジル、アルゼンティンがサッカー強国の具体例です。

具体例は、評論文ではそんなに大事なことが書いていないことが多いです。
私は葡萄が好きだ。育成が進んでいる。アイドル好きというところの方が重要です。それではわかりにくいということで、具体例を挙げているんです。出題に「具体的に」と書いていなければ、正解は具体例ではない箇所に書いてあると考えていいと思います。

根拠
「増税を訴えるあの人は嘘つきだ」「なぜなら去年は減税をすると言っていたからだ」

因果関係「~だから/だから~/なぜなら/というわけで/ので/そのため~/ために/従って」
「私はアイドルが好きだ。
なぜなら、笑顔で頑張っている姿に元気をもらえるからだ。」
根拠と同じ言葉を使うこともあるので、混同しないようにしましょう。

問の、誤りの選択肢では、因果関係が逆に書かれることが多いですね。
本文「赤い服が好きなので、買って着ることにした」
選択肢「着ているうちに、赤い服がすっかり好きになった」

明確な「ので」のような言葉の書かれていないこともあります。
「私は伊坂幸太郎のすべての小説を買った。この人の小説は私に訴えかけてくるものが多い。なぜだか気持ちがぐるんぐるんするのだ。」

読んでいて、どこが理由になっているかわかりましたか?
太字を補って読みましょう。
「私は伊坂幸太郎のすべての小説を買った。なぜなら、この人の小説は私に訴えかけてくるものが多いからだ。なぜだか気持ちがぐるんぐるんするのだ。」
本文を読んでいる時に、ここは理由だなと思ったら、「ので」と書いて丸で囲んでおきましょう。

演習問題


問 筆者がもっとも言いたいことは何か、抜き出しなさい。
こういう問は、事実でもなく、他者の意見でもなく、筆者の意見の部分に正解があります。筆者の意見のうち、まとめになっているところ、「つまり」の後や、最後の段落に書いてあるところが正解の可能性が高いですね。構造を理解できていれば正解に近づけるタイプの問ですね。

訓練1

問 筆者がもっとも言いたいことは何か、一文を抜き出しなさい。
           「宗教と死者」 著者 河原町三条
 宗教には二つあり、砂漠の宗教と森の宗教と言われる。砂漠には見渡す限り砂しかなく、そこで絶対的な力を持っているものは天である。日が照れば暑く、雨が降らなければ水がなく、日が沈めば極寒の世界、それが砂漠である。従って、砂漠では天が唯一の超常的な力、つまり神と見なされる。一神教の生まれる所以である。
 一方で森には木、池、川、草花があり、鳥も小動物も大型動物もいる。こうした多彩多様な世界では、多くの物事が神と見なされる。多神教の生まれる所以である。このように宗教は違いに注目されることが多いが、それで十分なのであろうか。
 私はそう思わない。いづれにも共通するものがある。それが死者である。自分の親、先祖、先人などは死んだ後に神と関係のある世界に行くと考えるのが自然である。従って、先祖崇拝や聖人を崇めることで、そういった死者に、自分と神とのとりなしを依頼することになる。それがキリスト教の聖人であり、日本の仏壇に儒教の位牌が置いてある理由である。要するに、どんな宗教においても我々生者は死者の背後に神を見ているのである。

解答と解説

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