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第18話 都市伝説『山 山 山』(BJ・お題「山」)


インターネットで物が販売できる時代になりましたが、早々にその方法に目をつけたのは、農家のかたでしたね。
なるほど、商品を作っているかたたちですし、顔が見えるということも切に求められますから、写真やブログを見てもらえるネットというのは格好の手段です。今では食べチョクのような直売を仲継ぎしているサイトもありますが、自分自身でホームページを作っている農家のかたもたくさんいらっしゃいます。
自分の野菜の魅力を自分で伝えたいと思ったら、やはりそこは自身のホームーページを作りたくなるようでして。

とあるかた、仮に谷口さんと呼ぶことにしましょう。この谷口さんから聞いた話では、山田さんという農家のかたのホームページがあったと言います。この山田さん、かなり以前から、ネット販売をしていたそうで、山をお持ちで、そこの山菜を商品としていたそうです。

とくに山芋がイチオシの商品であったそうで。


ホームページは独特であったそうです。昔のホームページにありがちな、古い字体を使い、一文字ごとに色を変え、ピコピコと動く模様があって、開いた途端に雑な音楽が大きな音で流れるので注意が必要なやつです。

それと動画もあって、CMのように、歌も流れるんですね。
「やーまー、やーまー、やーまー♪」
キャッチフレーズも独特でした。
「山々の間から山を深く登って山籠り。うちの品は山芋。山もり食べれば、ほれ、体はこの通り」
と言いながら自分の胸を叩く。強く叩きすぎて咳をして、おそらく画面の外に立っていると思われるおかみさんらしき人が笑っているのが聞こえる、というものです。

谷口さんはそのホームページを見て微笑ましく思い、山芋好きでもあったことから、早速購入したそうですね。

やがて届いた山芋を、毎日すりおろしては食べたそうです。
そこそこおいしいし、一度頼んで便利であったのでひいきにすることにしました。

あるとき、谷口さんは、山田さんの山の近くを訪ねることがあったんですね。
そこで山田さんを訪ねてみようと思ったそうです。

適当な家を訪ねると年配の女性が出てきて、男性で山田さんという人はもう亡くなってしまった、というのです。なんだかひどくよそよそしく、「ところであなた、お体は健康ですか?」と唐突に聞かれたのが不気味な印象であったと言います。

谷口さんは、山田さんに会えず残念に思ってあきらめて帰ることにしたのですが、電車の中でふと思ったそうです。あれ?さきほど会った女性は、ホームページの宣伝で歌を歌っていた人ではないか?と。

気になってパソコンを開いてホームページを見てみると、もう閉鎖されており、動画をみることはできなくなっていました。

その後谷口さんは病気になってしまったそうです。

胸が苦しくなってしまったそうですよ。

「やーまー、やーまー、やーまー♪」
とホームページでは歌っていたと言っていましたね。

でも、もしかすると、
「やーまーい、やーまーい、やーまーい」と歌っていたのかもしれない、と谷口さんは今になっていうのです。

「俺、山田さんと同じ病気になったんじゃないかな。山芋を食べて」
と、谷口さんは力なく言うのでありました。


さて問題です。谷口さんはなんの病気になったでしょう?

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