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無駄な直感を宝くじに使いたい話

私は、都内の会社でデスクワークをしていた。

会社のビルには、青い作業着を着た清掃の方をよく見かけた。
挨拶程度の中で、話したことはなかった。
知らない間に、掃除をしてくれるのは魔法みたいだなーって思ったのと、
都会の会社は、掃除すら業者に任せるのかーって田舎丸出しの感想を抱いた。

デスクワークは殆ど座りっぱなしで、足が固まりそうだった。
たまに動いたほうが集中できるので
こまめにトイレに行き、足を動かすようにしていた。

その日も足を動かすために、トイレに行った。
確か午前中だったと思う。
午前中のトイレは、誰もいなくて静かで好きだった。
女子の塊もいないし、誰の目も気にせずストレッチもできる。
ラッキー人がいない!明るい気持ちで女子トイレに入った。

女子トイレは、個室が並んでいて、突き当たりに掃除用具入れがあった。
アルファベットのLを思い浮かべてほしい。
Lの縦に長い部分が個室で、横に短い部分が掃除用具入れだ。

静かなトイレは、私の服が擦れる音しかしない。
個室には入らず、鏡の前でストレッチをしていた時だった。

急に、掃除用具入れを開けたい衝動に駆られた。
皆さんは、掃除用具入れを「どうしても開けたい」って思ったことはありますか?
私はないです。この1回きりです。
掃除用具入れのマニアでない限りは、普通開けないと思う。

普通だったら、開けないと思うが
美味しいケーキを見たら「美味しそう」って思うくらい自然に
「絶対に開けたい。開けなきゃ」って何の疑問もなくそう思った。

気づいたら、掃除用具入れに足が向かっていた。
バッと勢いよく扉を開けた。


そこには、体育座りの清掃のおばさんがいた。
真っ直ぐ私を見つめてた。
マジ曇りなき眼

私は「あ、、、すみません、、、」と慌てて閉めた。
コミュ障だから、こんな時にも「あ、、、」から入って謝罪した。
おばさんも、驚いて固まったままだった。

とりあえずパニックになりながら、急いでトイレを出た。

ごめんね、おばさん。
私が怖かったよね、意味分かんないもんね急に掃除用具入れ開けるとか
サボってただけなのに。掃除大変だよね。



無性に開けたくなったのは、おばさんに呼ばれたからなのか?
無駄な直感なのか?
今でもよく分からないし、直感だとしたらもっと宝くじとかに使いたい。
5億じゃなくていい、掃除用具入れから私を呼んでくれたら
もう一度、開けるから。




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