「世界で一番やさしい鬼退治」というのは「炭治郎による分からせ物語」だと私は思っているよという話
1.はじめに
以前、よしきさんの鬼滅の刃の記事にコメントを書きました。
禰󠄀豆子については、今でもこのコメントでいいかなと思っているのですが、元々のテーマだった「世界で一番やさしい鬼退治」については、私は竈門炭次郎のことだと思っています。ということで、私が考える「世界で一番やさしい鬼退治」について記事を書きます。
2.「世界で一番やさしい鬼退治」とは何か
結論から先に書くと、「世界で一番やさしい鬼退治」とは「炭次郎による分からせ物語」だと私は考えています。この場合の「分からせ」とは、倒した鬼に対して「そもそも、お前が鬼になったのは何のためだったか」を思い出させた上で、反省させてから成仏させるということです。
3.「分からせ」被害者リスト
(1)下弦の伍 累
家族の絆が欲しかったことを思い出させて成仏させた
(2)上弦の陸 堕姫・妓夫太郎
兄妹仲良くしたかったことを思い出させて成仏させた
(3)上弦の参 猗窩座
強くなるのは、弱者を守るためだったことを思い出させて成仏させた
(4)鬼舞辻󠄀 無惨
「想いは不滅であり永遠である」ことに感動させ、想いを託させた上でそれを断って地獄に落とした
これをまとめるために、改めて鬼滅の刃を読み直して思ったのは、流石の分からせマスター炭次郎でも、上弦の肆の半天狗とか、下弦の壱の魘夢とかは、分からせられていないので、鬼の性格次第なところも結構あるということです。無惨様の性格はかなり難がありますが、分からせマスター炭次郎が無残様特攻だったので、なんとか分からせることができました。
4.炭次郎のスペックについて
炭次郎は、流石主人公だけあって、そのスペックは非常に高いです
・鬼殺隊として:最終的には、柱クラスまで強くなる
・鬼に対して:禰󠄀豆子の実兄であり、鬼にたいして情けをかけることができる
・日の呼吸について:現代における唯一の継承者となる
・鬼としての才能:禰󠄀豆子をこえる最高の鬼の才能を持つ
炭次郎は、鬼殺隊としてはよき戦に恵まれたこともあり、順当にレベルアップしていて、最終戦では柱クラスまで強くなりました。とはいえ、現柱最強の岩柱には届かないので、これ単体なら特に無惨様を分からせられることはなかったでしょう。炭次郎が特異的なのは、それ以外の部分にあります。
炭次郎は禰󠄀豆子が鬼になっていたこともあり、鬼に対して優しくすることができるという特異な性質を持ちます。鬼即斬が基本の鬼殺隊では、これは非常に特異な性質で、他に同じ性質を持っていたのは、故花柱の胡蝶カナエぐらいでしょう。特に柱は、鬼に対して強い恨みを持つがゆえに強くなっているので、鬼を倒すことを優先してしまいます。そう考えると、これを両立させているのは炭次郎の、主人公たるゆえんの1つだと言えます。珠世さんとの交流ができたのも、この性質あってのことです。
そして、色々あった結果、炭次郎は日の呼吸を現代によみがえらせてしまいます。日の呼吸は、最強の鬼狩りだった継国縁壱による始まりの呼吸です。縁壱さんは最強すぎて、無残様にトラウマを与えたため、人の名前を覚えないことで有名な無惨様でも、縁壱さんの名前は、記憶に刻みこまれています。
無惨様視点だと、ファーストアタックを生き延びて、縁壱さんが老衰で死ぬまで逃げ切った時点で、鬼狩りとの戦闘は勝ったも当然であり、産屋敷邸での無惨様が余裕だったのも当たり前かなと。無惨様は「想いは不滅であり永遠である」ことは知らなかったかもしれませんが「鬼狩りの本当の怖さ」は身をもってよく知っていたので。
その結果、色々あって日の呼吸を継承した炭次郎は無惨様にも名前を覚えられることになります。多分、最終決戦時点で、無惨様が名前を憶えている人間は、継国縁壱と産屋敷耀哉と竈門炭次郎ぐらいかなと思います。(珠世さんと禰󠄀豆子は鬼なので除外)現行の柱ですら、誰も名前を憶えられていないはずです。
そして、最終決戦後に見せた、炭次郎の最強の鬼としての才能。「永遠」とは最強の自分が1人いればいいと思って1,000年生きてきた無惨様が、炭次郎になら「想いを託してもよい」と思わせたわけで、炭次郎以外では無惨様を倒すことはできたかもしれませんが、反省させることはできなかったと思います。
このように見ていくと、鬼滅の刃において、炭次郎は主人公としてよく設計されているなと思います。
5.まとめ
鬼滅の刃で「世界で一番やさしい鬼退治」というキャッチコピーがあったことは、実のところよしきさんの記事を読むまで知らなかったのですが、読んだ上で私が思ったのは「炭次郎による分からせ物語」だったよという話でした。
まあ、ここまで書いておいてなんですが、「鬼を反省させてから成仏させることは本当にやさしいのか」については、議論の余地があると思っています。ただ、少なくとも無惨様が反省するためには、分からせマスター炭次郎の存在が不可欠なので、これに関しては吾峠呼世晴先生のキャラクター造形は凄いなと感心しています。
6.私が無惨様を好きな理由
私は鬼滅の刃では無惨様が大好きなのですが、その理由としては、無惨様の「やりたいこと(目的)」と「やっていること(手段)」と「できること(能力)」がチグハグだからです。これが悪役として素晴らしいと思ってます。
無惨様は、永遠に生きるといっても、明らかに平穏な生活志向なので、鬼殺隊と戦闘しまくるのは、お館様が指摘するとおり意味が分からないところがあって、素直におとなしくしていればいいのにと思います。強さを極めるのが目的なら分かるのですが、無惨様は別にバトルマニアというわけでもありませんしね。
ただ、無惨様ならできるだろうけど、性格的にやらないと思うのが、いわゆる自身のバックアップを作っておくというやつです。(「即死チート」だと賢者レインが、やっていたやつです)
無惨様は、肉片に分裂しても大丈夫ですし、脳や心臓も複数作れるぐらいなので、不測の事態に備えて、自身と同等のコピーを用意することは十分にできるはずです。ただ、無惨様の性格からして、自分と同等の存在は、例え自身のコピーだとしても、存在するのは嫌だろうなと思うので、研究まではしていそうだけど、実施はしなかったと思っています。
それでは、ごきげんよう。