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どうして自分の作品を素直に評価できないのか

「面白くない」と思いながら描いている。

新しい漫画を描いているのだが、自分で自分の作品を面白いとは思わない。

でも、読んでいただいた方々からは、たびたび感想が届く。

「面白かったです」

とても嬉しい、とてもとても嬉しい氣持ちになる。

けど、思ってしまう。

「どこがそんなに面白かったのだろう」と。

先日、僕の漫画を読んでくれたある男性に言われた。

「逆にどこが面白くないと感じるんですか?」


改まって考えてみる。




僕の漫画にはエンタメ性がない。


そう思うのはきっと、名だたる作品たちと比べてしまうからだろう。

映画になれば、YouTuberがこぞって動画で取り上げる。2クール目の放送日が決まれば、たちまちネットニュースになる。

そんな、否が応でも視界に入ってくる作品たちとは、比べざるを得ない。

僕の漫画には、悪魔の実のように豊富な特殊能力も出てこないし、スパイと殺し屋と超能力者が互いに身分を隠しながら共同生活をするといったような極端な設定もない。

名だたる作品たちと比べたら、僕の漫画のエンタメ性は皆無だ。

彼にはそんなことをやんわりと伝えた。


すると彼は言う。

僕の漫画はエンタメとして成立しているのだと。


疑問だった。


彼は続ける。

感情を動かせるものがエンタメであり、僕の漫画にはそれがある。だから、僕の漫画はエンタメとして成立しているのだと。


穏やかながらも芯のある声で、僕にそう語ってくれた。


嬉しかった。

とても嬉しかった。


僕が面白くないと思って描いている漫画に、そう言ってもらえたことが、とてもとても嬉しかった。


感想を伝えてくれるのは彼だけじゃない。

僕の漫画に氣持ちを動かされた旨の感想はたびたびいただく。

ありがたい。とてもありがたい。

確かにいただいている。


感情を動かすものがエンタメなら、僕の漫画に感情を動かされた方がいることを、僕はもう知っている。

なのにどうして、自分の作品を素直に評価できないのだろう。



「僕の漫画は面白い」



そう思って、漫画を描いてもいいのだろうか。


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