さぼらないうさぎとただの亀
亀のキーホルダーをいただいた。
なんでも、亀がぼくっぽいと、選んでくれたらしい。
異論はない。むしろ嬉しいくらい。
自他ともに認める感じになってきていることが、そう、嬉しい。
ぼくは何をするにも決して早くない。
のろい。
仕事を覚える速度とか、
物事の成長速度とか、
お昼の弁当を食べるのが遅いことで、高校の頃は「ムカつく」との言葉をもらったほど。
まぁ、兎に角遅いのだ。
ファミレスでアルバイトを始めた頃も、カラオケでバイトを始めた頃もそうだった。
覚えが悪いぼくに、冷ややかな目や態度を向ける先輩が必ず一人はいた。
けれど、いつも側に付いて教えてくれた先輩はいつも優しかった。
覚えが悪いことを謝ると、「石井くんは丁寧だから」とか、「覚えが良くても雑な仕事されたら困るし」とか、なんだかんだ、そんな言葉でたくさんフォローしてもらった。
ファミレスは学業の都合で1年ほどで辞めたが、カラオケはなんだかんだで6年。
教える側の方が長かった。
つい、自分と似たような人を可愛がってしまうのは、どうしようもないことなのかもしれない。
漫画は12年続いてる。
受賞歴の一つもないけど、続いている。
今の画力を手に入れるまで12年。
早い人なら4、5年で達しそうな、その程度の画力。
でも、続いてる。
描くことを辞めていった同志も何人かいた。
おそらくだけど、僕がいちばん下手くそだった。
今はわからないけど。
童話『うさぎと亀』では、勝つのはうさぎではなく亀。
みんな知ってる。
ぼくからしたら、だいたいの人はうさぎに見える。
サボるって意味じゃない。
サボらないうさぎ。
みんなサボらないうさぎに見える。
早いし、すごい。
ぼくは何をやってもダメ。
最初は特に。
できない、できない、できない。
でも今、こんな感じ。
何が勝ちで何が負けかわからない世の中だけど、ひたすらにコツコツやっていこうと思う。というか、たぶんやっていく。
進みは遅いし、何をやってもダメダメだけど、続ける自分だけは信用してる。
ひたすらにやってく。ぼくのペースで。
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亀のキーホルダーをくださったのは、表皮水疱症という指定難病の患者会代表、宮本恵子さん。
ご縁あって、仲良くさせてもらってます。ありがたい。
ぼくを思ってキーホルダーを選んでくださったことが嬉しいく、ちょっと書かせてもらいました。
表皮水疱症は、全身の皮膚がどんどん剥がれていく病気です。
実はぼく、昨年の患者会交流会にカメラマンとして参加させてもらってました。
現地で患者さんに直に触れて、痛みを実感しました。
痛みっていうのは、表面的な体の痛みだけでなくて、心の方もそう。
この病気のことを知らない方から冷ややかな目が向けられることが少なくなく、そのことが辛いと、話を伺った方は皆さんそうおっしゃってました。
代表の宮本恵子さんは、親御さんからもそのような態度で育てられたそうで、ぼくとしては多分に思うところがあります。
「一人でも多くの人にこの病気を知ってほしい」ということが、表皮水疱症の患者さんたちの願いです。
見るだけでも痛いですが、よかったら触れてくださると嬉しいです。
『表皮水疱症と生きる』〜病気との闘いは一生続く〜
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