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自分で描いた絵に自分を感じなかった話

自分で描いた絵を見返したら、「自分じゃない」と思ってしまった。

どうやら、手を抜き過ぎてしまったらしい。



漫画制作はスピード勝負。

締切のある商業誌では、とにかく早く描くかかなければならない。

週刊連載の作家さんは、1週間の間に20ページもの原稿を仕上げる。

人間業じゃないと思うのは、ぼくが実際に漫画を描いている人間だからだろう。


ちなみにぼくはめっぽうな遅筆だ。

月に12ページも制作できればいい方である。

週20ページの制作と月12ページの制作、雲泥の差というのだけはおわかりいただけるだろう。


今作『スポットライトを浴びたくて……』は、とにかく早く描くことを意識していた。

たくさんの方に応援してもらっている手前もあり、ぼく自身、早く次回作を描きたい氣持ちもあり、

普段の自分の作画速度を超えた速度で描いていた。


あらかたペン入れが終わり、原稿を見返して思う。




「自分の絵じゃない」






雑が過ぎたのだ。

パースもアウトラインもあったもんじゃない。

ただの雑な線でしかなかった。


たしかに自分で描いた絵なのに、自分の絵じゃないと思えてしまう。

なんとも心地悪い感覚だ。





早さを取るのも大概だ。


雑に描いて心地を悪くしてしまうくらいなら、時間をかけてでも丁寧に描いた方がいい。

せめて、自分を感じれるくらいまでは。

せめて、自分の絵だと安心して眺められるくらいには。


漫画制作には時間がかかる。

一枚絵となる一コマを、ひとつの物語に何百何千と敷き詰めるのだ。

早く仕上げることは大切だが、雑になっては元も子もない。


時間を氣にするあまり、

自分が描いた絵に自分を感じられない心地悪さはもう御免だ。



自分を保つことを最優先に、時間を氣にしながら書いていこうと思う。

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