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人知れず売れたら、確かにかっこいいけどさぁ。

誰にも知られずに売れたらかっこいい。

漫画家を目指し始めた頃は、そんなことを考えていた。だから、(まぁバカにされたくないという気持ちもあったが)周りの友達には、「漫画家を目指してる」なんて言わずに、黙々と漫画を描いていた。

資本主義を体験すると、ここが数字と実績の世界ということに気づくにはそう遅くないはずだ。人は数字や実績に引き付けられる。発行部数100万部突破、アニメ化、映画化、ギネス認定。中身よりも、そんなものに人は引き付けられ、集まってくる。

中身がいいことは大前提だが、実際には中身よりも数字に人は集まってくる。

もし、めっちゃおいしい同じ味のラーメン屋が2軒並んでいたとして、お昼どきに、片方の店には列ができていて、片方の店がガラガラだったとして、あなたが両方の店の味を知らなかったとしたら、あなたはどちらに並ぶだろうか。列の長さにもよるだろうが、少なくとも、お昼どきにガラガラのお店を見たらまず入ろうと思わないだろう。どちらかといえば列がある方に並ぶのではないだろうか。

資本主義はそういう世界だ。

数字が数字を呼び、実績が大きくなる。そうなっていくうちに、「売れた」なんて言われるようになるのだろう。


「売れた」と言われるような人には、勝手になると思っていた。いいものを作って届ければ、売れると思っていた。しかし、資本主義を体験して現実を理解した。数字を取れた人に人は集まる。個人よりも法人が信用される。商品はとにかく売っている。

売って、売って、数字が大台に乗ったら、数字を見せつけて人を集めてまた売って…

数字を作らなければ、舞台には上がれない。

勝手に売れた方がかっこいい。もちろん、何かのきっかけでコンテンツがバズったりして、本当に勝手に売れる人もいるのだろう。一発逆転。僕らはそんな夢をどうしても見てしまう。でも、もう大人だ。世の中の仕組みくらいもう知っている。


僕らに必要なのは、最初の数字を作ってくれる人々だと、最近になってようやく実感している。


最初の数字を作ってくれる人をどうやって集めたらいいのだろう。

SNSにはなかった。少なくとも、数字も実績も持っていない人が、数字と実績をつけれるだけの人を呼べる力はSNSにはなかった。

一時期はSNSに躍起になった。フォロワー数を獲得すれば人生が変わると信じて、Twitter発信に盲目的に取り組んだ。今でも、Twitterのフォロワー数が5000人いるというと驚かれる。でも全然すごくなんかない。

一時期は伸びたものの、今ではすっかり数字は停滞。自分はブームに乗っかれただけだったということを痛感する。僕に本当に影響力があったら、何を呟いても100いいねくらいいくだろうけど、現実はそうじゃない。自分に影響力があるのではなく、僕がやってきたことと、Twitterの140字と、そのときTwitterにコミットしている人たちのモチベーションがたまたま重なって数字になって現れているに過ぎないと今では思う。

SNSだけのつながりは空虚だ。数字も実績もない状態でいくら発信しても、数字は伸びない。僕は空虚に空虚を重ねていたのだ。


SNSはきっと、数字を作った後にやるものなのだろう。数字で数字を伸ばすためのツールなのだろう。

今日、スナックCandyというBARに初めて行った。スナックと謳っているのに業態がBARだからややこしいお店だ。スナックCandyはキングコング西野さんのオンラインサロンメンバーが運営していて、全国展開している。お店には日夜、キングコング西野さんのオンラインサロンメンバーが集まるらしい。

今日もそうだった。

話す人話す人、みんな何かしら事業をやっていた。個人事業、会社経営、アーティスト活動、飲食店経営。

つまらない話をする人は誰1人いない。それぞれの活動話は、僕の耳に心地いい。

話を聞くと、ここに集まる人はこうやって、繋がりを増やしていくらしい。そのつながりが仕事になり、お金になっているようだった。

例えば、個人事業主がクリエイターに動画編集を依頼したり、例えば、経営者と特定のスキルを持った人がイベントを組んだり、例えば、飲食店を経営している人のお店に、友達を連れてご飯を食べに行ったり。

そうやって、繋がりをお金に変えていっているようだ。

実際に今日も、「今度一緒に〇〇しましょう」なんて会話があちこちで飛び交っていた。

横のつながりが大事なのは知っている。いろんな人からそんな話を聞くし、実際僕に来る漫画の仕事依頼も、ほとんどが面識のある人からだ。

人と会うことはとても重要だ。そんなことは、頭では分かっていた。分かっていたけど、こんなに強く感じたことはなかった。

今日みたいなことが、スナックCandyでは毎晩行われている。誰と誰かが繋がって、そうして繋がった人々が仕事を生み出して、今日も誰かを笑顔にしている。

なんて濃い場なんだろうと、なんて素敵な場なんだろうと、思わずにはいられなかった。〝繋がりの結晶〟みたいなものを見せつけられたような気がした。


きっと、最初の数字を作ってくれる人たちはここにいる。スナックCandyにではない。こういった〝場〟にだ。互いに助け合って数字を伸ばしていこうなんていう、濃い人たちが集まる場にいる1人ひとりが、最初の数字を作ってくれるのではないかと強く思った。

最初の数字を作ったら、ようやく世の中が少し注目する。

みんなで助け合えばいい、とか、助けてもらったら助け返せばいい、とか、そんな人たちの輪の中で数字を作って、自分の少しずつ大きくしていくのが正解のような気がした今日だった。


人知れず売れたらかっこいい。


でも、そんな人はこの資本主義の世界にほとんどいない。人知れず売れる運も実力も持ち合わせていない僕らは、最初の数字を作らなきゃいけない。多くの人が注目するだけのある程度大きい数字を、何もない状態から作っていかなきゃいけない。

そのために必要なのが1対1で、そのために必要なのが、同じ熱量の人が集まる場に足を運ぶことなんだと、スナックを謳っているややこしいBARに教えられたような気がする。

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