狭間の者、ノーモアタッチで

読書をしたんだスマホでね。でも字がちっちゃいから

中西なにやら氏の狭間の者たちへという、小説、TSUTAYAとかにたくさんあるやつ、棚に、それをタリーズとかで読むやつ、小説。
たくさんある本の中から本当のやつを抜いた後で残ってるやつ、の一部、絵がない方面の一群、それが小説。最近ではスマホでも読めるけど、わりとしっかりめのお値段払っても期間限定でしか読めない。私の家の棚には私が生まれる前の本がまだちゃんとあるのに。

保険の代理店の店長が主役だったと思う。あまり成績はよくなくてエリアマネージャーから詰められる系の中年既婚男。が、えぇと、通勤電車でよく見かける黒髪ロングの女子高生の背後で匂いを嗅ぐことをモーニングルーティンにしてて、家庭は既に砂のようで、会社は針の莚のようで?でも俺こんなにがんばってるんだし、いろいろ我慢してるし、自然に漂ってくる匂いを嗅ぐくらい、ええやん、江戸の仇を長崎で討つより、ぜんぜんええやん、という日々を送っていました。迷惑ですね。そんで男が現れる。主人公より若くて、たぶんしゅっとしてて、でもブルーカラーですよ!お金ないですよ!日常が報われてませんよ!無敵の人まであと一歩ですよ!みたいな男。その男がなんと、主人公が匂いをかいでる女子高生のうなじをスマホで撮る。動画で撮る、産毛にズーム。迷惑ですね。視界にあるものを撮ってるだけですよ、あるがままを撮ってるだけですよ、触ってないし、かいでないし、何もしていないとほぼ同義、と言いたげな態度で撮る。そして匂いフェチとうなじフェチの奇妙な交流が始まります。そして終わります。お疲れさまでした。

交流の詳細や女子高生のフルネームは本書を読んでもらうとして、

痴漢加害者の心理を、なんというか、たとえるならフォークあるでしょ?ボールじゃなくて、イクラに刺して生臭くするためにある食器の方。そのフォークを左まぶたの下から眼球の曲線に沿わせるようにすすっといれて、柄の方を上にぐいっと上げてテコの要領でぽんっと出す感じに、そう抉り出すような衝撃的な読書体験、と言われている本書。でもエリートサラリーマンも賢者も教師も牧師も医者も浪人生も雅楽器奏者も年金受給者もぽっと出のインテリアコーディネーターも士業も朱雀もエキシビジョンマッチ前日のパンチドランカーも身体障害者も迷惑系YouTuberもツールドフランス参戦者もメンサ会員も毎朝冷凍カブトムシをレンチンして噛んでる新聞配達員もセフレ3人ママ活2人のバンドドラマーも、きっと痴漢している人はいる、たぶんいる。その人それぞれの暮らしがあり、人間関係があり、経済事情があり、夢や希望はあったりなかったり、まぁあとだいたいの人には手がある。スマホもだいたい持ってる。マイナンバーカードはどうかな。分からない。28歳前後のスナップ写真?それもどうだろう、分からない。

痴漢加害者の心理を知るには痴漢加害者の心理について書かれた本を読めばいいと思う。
でもそれだけじゃ何か足りない。もっと詳しく知りたいのに。生い立ちから黒歴史や恥部や失敗談、もしいくらかでもあるようであれば武勇伝なども、あますとこなく赤裸々に、本人の語りだと都合の悪いところを端折ったりするから出来れば第三者の目で冷酷に赤裸々に知りたいのに。迷惑ですね。しかしそんな人のために小説家は書く。想像と資料を駆使して、いない人を作り、ない会社を作り、パワハラ上司を作り、無能な部下を作り、お節介な姑を作り、良い匂いの女子高生を作り、ペダルを踏み込み物語を進める。そして途中で止める。筆を置く。置かない。筆は持ってない、パソコンだから。i7だし、メモリ16ギガだし。でも終わっていいと思ったし、編集者も良いと言ったし、そろそろ小腹も空いてきたし、金ローでナウシカやるし、いいと思うのこの辺で、で、終わる。小説は終わる。次ページには新たな題名が記され、またページをめくれば今度は介護士の男が出てくる。えー、と、私は思った。

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