科学ニュースSF(1):ワタクシは蚊でございます

 いやしくもSF作家を名乗っておりますので、科学系のニュースを元にした掌編を書く、という試みを始めてみました。
 一応理系の大学も出たことは出たので、修論などどうにも甘すぎる作りのものをお情けで通していただき卒業したことなど、卒業後数年間は頻繁に修論をやり直す夢を見続けたりしました。そういう学生時代を、モラトリアムだった、と腐すのも嫌だなあと思って。

 というわけで、第一弾は以下の作品です。作品を先に、ニュースを後に出してみますが、この順序はのちのち変えてゆくかもしれません。

ワタクシは蚊でございます

 ワタクシは蚊でございます。前世は人間でございました。
 なぜこんな身体で生まれたのでしょうか。前世の記憶なんか無ければ良かったと思います。そもそも、こんな身体のサイズでは脳の容量もたかが知れています。なぜ前世の記憶などと言うものを脳に詰め込むことができるのでしょう。

 ですがともかく生まれついてしまいました。人間であった頃は、生まれ出ずる悩みなどというものを青臭く語った時期もございました。それゆえにバンドを組んだりもしました。駅前でストリートミュージシャンもやったりしました。しかし全く芽は出ませんでした。
 みんながボーカルを希望したりと、仲間うちで思い出したくもないあれやこれやがございまして、それでもゆるゆると罵り合いながらも続けました。いつかステージで色とりどりの光を浴びる日を夢見て歌い続けましたが、それでも全く叶うものではなかったのです。結局夢破れて貧乏の中で死にました。そしてまた生きました。

 また生きたというのに、この仕打ちです。蚊の分際で、どうしてステージで光を浴びることなどできるでしょうか。私はそれより血を吸わねばならないのです。ワナビーを狙う悪徳業者に生き血を啜られたこともありましたが、今は私が生き血を吸うのです。

 昼間は影に潜み、暗くなった頃を見計らって活動を開始します。我ながら自分の羽音はけたたましいと思います。どうせなら蛾の羽が欲しかったです。蛾の羽で近づき血を吸えば、一切気づかれることはないというのに、神様はどうしてこうも底意地が悪いのでしょう。神というものがいるとすれば、物凄く性格が悪いというのが私の持論でして、そういうのを歌詞にダイレクトに乗せたりもしました。ですがこういう論が大嫌いな人もいらっしゃるらしくて、この歌詞の価値を理解してくれない友人改め元友人のことは、まあ、どうでもいいです。

 ですが、大変に驚くべきことに、この蚊の人生において初めて、人間時代の夢を叶えることになろうとは思いませんでした。
 せめて、この空間をさまよう様子それ自体をステージに見立てて、この羽音を楽器や声に見立てて、私はひとりライブを敢行したのです。私は歌姫でした。誰も喜ばないとしても、歌姫でした。姫であることは間違いないです。私は今生でも雌に生まれついたようです。雌だから血を吸う運命となってしまったわけですが、ともかく歌姫にはなれたわけです。照明はありませんが、私は血を求めて歌い続けたのです。

 その時です。私を真っ赤な光が照らし出しました。

 そして、客席からは、割れんばかりの拍手が起こったのです。いえ、これを拍手と呼んでいいものかわかりません。なぜなら、最初の一拍目で私の意識は途絶えてし

[紹介するニュース]

難しいニュースではありませんので特に説明はしませんが、なかなかサイバーな光景ですね。

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