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台湾 // 旅

Facebookから離れて久しいのだが、今日何気なく開いてみたら、「xx年前の今日、Kaiさんはこんなことしてましたね!」的なお知らせがが、目に飛び込んできた。

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2年前の今日、私は成田空港にいたらしい。台湾へ行くためだった。
シェアハウスから引っ越す直前だったと思う。そんな時期によく行ったな、と思う。しかも私は当時(毎月給料をもらうような)仕事をしていなかった。前職を辞めてすぐ決まるだろうと思っていた仕事がなかなか決まらず、失業保険支給の終わりが見え始めて焦り始めていた頃だったと思う。

東京の冬は寒いのだ。私は北海道生まれで、冬はマイナス20度まで下がるような地域で暮らしていたこともあるけれど、東京の冷たい乾いた風と、家の中の寒さは本当に苦手で、とにかく暖かいところへ行きたかった。
自分の心身があまりいい方向へ向いていないのを察して、必死に旅先を探し、長野のスキー場で知り合った台湾の友人のほわっとあたたかな笑顔をふと思い出した瞬間、旅先が決まった。

台北から入り、南の端にある高雄まで特急電車で移動し、高雄から帰国するプランを立てた。降り立った台北は結構寒かった。昼の日差しがある間は15度くらいまで上がったけれど、朝晩はなかなか寒かった。

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日本で知り合った台湾の友人が原付で颯爽と台北の高層ビルの合間に現れた時、ああここは台湾なんだ、と思った。
台北は街に力があった。朝早くから食堂があいていて、道路にはみ出すようにテーブルと椅子が並べられ、老若男女が思い思いに、あたたかな粥や汁物をすすっている。日本の、東京の、人はいるけど亡霊みたいな朝とは全然違った。足元から脈のある何かがぐっとせり上がってきて、夜を押し上げるようなあの感じ。人も、それぞれに表情がある。笑っていてもむすっとしていても。

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空港に行くまで、私は緊張していた。寒さで体もこわばっていたし、数ヶ月ぶりにパスポートが必要な旅をすることにも、怖気づいた。初めての台湾。
でもセキュリティをくぐり抜けると、私は移動ばかりしていた頃の感覚をすぐに取り戻して、何も考えなくても足は空いていて快適な椅子を探し当てていたし、するっと入国審査もくぐり抜け、ベルトコンベアに乗って吐き出されてくる55Lの赤いバックパックも、迷いなく片手で持ち上げることが出来た。

旅に出ると、呼吸が深くなる。
新しい土地の香りをかぐ。足から、大地の音を感じる。その国の言葉を聴く。通行人をただ見る。それだけで、私の身体は緩み、余計なものがバラバラと落ちていく。そうして新しい”なにか”を吸い込んでいく。

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南部の高雄へ着いたのは、ちょうどクリスマスだった。日中は28度くらいまで気温が上がり、暖かいを通り越して暑い。友達がスクーターに乗せてくれ、1日中あちこち連れ回してくれる。ローマの休日みたいだと思った。クリスマス、台湾はなにかするの?と聞いたら、「外国人が観光でくるエリアだけ少しデコレーションがあるけど、それ意外は何もない」と笑っていた。友人が毎日のように行くというお店で、びっくりするほど美味しくてびっくりするほど安いエビ入り小籠包をたらふく食べた。

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ああ、台湾に行きたい。
いまの状況では、台湾は近いけど、遠い。寒くなると台湾が恋しくなる。気温の暖かさも、あの街のパワフルさも。なにより、友人たちの、ぽかぽかする笑顔が。

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