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ビバップガチ勢なので実写版カウボーイビバップを本気でレビュー

カウボーイビバップ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト


かの伝説的なカルトアニメであるカウボーイビバップが実写化された。カウボーイビバップがどのようなアニメかは各々調べてほしい。簡単に説明すると「大人向けアニメおすすめランキング」「知る人ぞ知るアニメランキング」この辺で毎回1位になるアニメです。


人気アニメは実写化の影がつきまとうのは世の慣習。当然ビバップにも実写化のオファーが来ていた。が、2度も頓挫。さすがにもうねえだろうなとファンの誰もが安堵していた時、まさかネットフリックスがゴミに埋もれた企画書をサルベージするとはね…

さて、前置きが長くなったが今回は毎年アニメシリーズを1周しビバップと共に人生を歩んでいると言っても過言の筆者が実写版のガチレビューをしていこう。

※ネタバレたくさんします。
※先に言うと評価は低いです。




・キャラ編


実写化を語るに辺り、各キャラクターの尋常じゃないレベルのキャラ崩壊から語らなければならない。ここではメイン5人の話をする。

スパイク

本作の主人公。原作ではスリルを楽しみ、常に飄々としている3枚目…なのだが実写だと何故か余裕が無くなるべく危険な択はとらない安全志向の中年男性になっていた。「その賞金首は過去にたくさん人を殺していて危険だからやめよう」とか平気で言いだす。
元々マフィア組織にいた過去を持つ点は共通しているが、怖くてジェットに話せない・常に組織の影に怯えているなど弱い面ばかり強調された。
ただ小心者のビビりになってしまったのか?というとそんなことはなく、組織の元相棒にして仇敵のビシャスに対して長距離ライフルで威嚇射撃をしたり、最強の殺し屋であるマッドピエロ東風とタイマンしようとしたりする。
また、命を狙われた際はその敵を容赦なく殺す傾向にある。不必要に死体撃ちを決める姿はまるで街のチンピラ。
ちなみにスパイク・スピ―ゲルという名前は偽名。本名はフェアリス。似合わない。
ここまで不満ばかり書いてきたが本作におけるキャラ崩壊の例としてはかなりマシな方である。地獄かな。

ジェット

本作トップクラスのキャラ崩壊被害者。
原作ではハードボイルドの具現化のような渋いおっさん、かつスパイクやフェイに振り回される苦労人。入るもの拒まず去る者は追わずのスタイルでビバップ号の面々の繋がりの中心にいた人物。「仲間でも家族でもない…俺達はなんだろうな」というセリフがまさにビバップ号を現しているし、ジェットの存在がその繋がりを生んでいる。元ISSPという警察組織にいたけど賞金稼ぎになってからは割と荒っぽい捜査とかもする。
このようにジェットという存在はビバップという作品に於いてかなり影響力が大きく、まさしく土台になっている。土台が崩れては作物は育たないのだ。
…そんな土台がガラスに変わりすぐ崩壊しているのが実写版。実写ジェットを現すならば熱血な正義漢。仲間意識がとにかく強くメンバーを家族・相棒・仲間としょっちゅう口にする。スパイクに対してしょっちゅう説教まがいなことをしては相棒ムーブをしようとする。ちなみにスパイクは過去の負い目があるので視聴者目線からするといたたまれない。スパイクが過去を打ち明けられないのもジェットが異様な正義感の強さを出してくるからだったりする。仲間だ家族だという度にスパイクは曇るのでその発言の度に繋がりが薄れてゆくように見える。
あとバツイチで、娘がいる。(原作に娘はいない)基本的に行動原理が娘中心で、娘の誕プレのためにどうしても賞金首を追いたい!と本気で嫌がるスパイクの前でわがままを言ったり、誕プレを買おうとして悪徳業者に騙されたりする。
賞金首をあと一歩の所で逃がしたシーンでその後スパイクに責任転嫁しブチ切れるシーンがあるが、賞金首を発見し不用意に近づき、逃がし、不意打ちを喰らって気絶する流れなので正直ジェットが悪いようにしか見えない。なぜか今作では戦闘力が落ちている。
正直全話通して違和感しかない。なぜか白人なのに実写だと黒人だし。声優は運昇さんが亡くなっているので仕方ないが、後任の声優の声質があまりにも違いすぎる。というか熱い正義漢というイメージから引っ張ってきている。
総評すると完全な別キャラ。声もビジュアルも違うので新キャラとして見ていたからまだマシだったけどたまに原作再現のシーンを入れてくるのが本当に嫌だった。

フェイ

ヒロイン。コールドスリープから目が覚めるとそれ以前の記憶を失っていた女。跳ねっかえりの女で気が強い。ギャンブル狂。放浪しがち。だけど繋がりは欲しい。感情って難しいね。そんなキャラ。
原作のフェイはシリアスからギャグまでイケるキャラで、シリアス回は割とエモみが深い。
実写ではギャグ100%の愉快な女になった。顔芸を多数持っていて、セリフは陽気な気質。シリアス回の癒し的存在。林原めぐみも従来のフェイではなく陽気な外国人女性の吹き替えをしていた。
フェイに関しては初登場は1話だったものの、本格加入が少し後だったのであんまり掘り下げられていない。が、少なくとも出ているシーンを総合するとギャグキャラとしか言えない。フェイ加入回では火星を(結果的に)救い、船の修理工の女性に抱かれたと思ったらレズ適正があって、フェイメイン回はドタバタコメディ、そしてジェットの家族ムーブに絆され最後はすっかり「私たち仲間!」とか言い出す始末。原作のフェイの面影は消えた。
なおコールドスリープ関連での登場人物は概ね原作と同じなのだが、名前だけ先行して出てくるので初見勢は辛くね?という懸念がある。

ビシャス

スパイクの因縁の敵にして元相棒。クールの風貌と残酷さを併せ持つCV若本のかっこいい敵キャラ。
ただそれは原作の話。実写版のビシャスはすごい。今作の問題点最大の要因になっている。
白髪ロン毛太眉ぱっちりおめめもっさり胸毛という一見芸人にしか見えない風貌になった彼は、そのキャラクター性までも芸人と相成った。組織のトップに父親がおり、七光り的な存在でしょっちゅう問題を起こしてはもみ消してもらう小物ムーブ。その父を含めた幹部の前で説教された時萎縮しまくって命乞いもしちゃうサービス精神。その後自室で妻に八つ当たりしていづれ組織のトップに立つとかイキリ出すハッピーセットぶり。どうしてこうなった。
正直ビシャスに関しては語り尽くせないので、見てくれとしか言えない。俺は2話くらいからビシャスが出る度笑ってた。上裸で大説教されて萎縮しているビシャスを見れるのは実写版だけ!
ただ戦闘力だけは原作準拠で無双できるくらい強い。だからこそ頭が弱い設定が足を引っ張り手に負えないキャラになった。

ジュリア

スパイクと深い関係にある謎の女。綺麗で危険で危なっかしくてほっとけない普通の女。
原作では登場シーンがあまりにも少ないので雰囲気がエモくなるバフ持ちくらいしか思ってない。フェイが語った普通の女論がしっくりくると思う。
実写版では出番がめちゃくちゃ盛られる。なんとビシャスと一緒に毎回出てくる。
ビシャスの彼女→ビシャスの凶暴性に嫌になったジュリアがスパイクに泣きつく→スパイク寝取る→組織を抜けようとしたスパイクをビシャスが殺す→ジュリアビシャス結婚という時系列。ドロドロである。
少なくともスパイクはことあるごとにジュリアを想い、若干メンヘラ臭くなったりするし、ジュリアもスパイクが生きていることを知り喜んでいたのでまだ相思相愛っぽい。
たまにビシャスにヒスったりするが、基本的には物静かな女性。会員制ジャズバーみたいな所で歌姫やってる。ちなみにジャズバーのマスターが原作では商店やってたアナスタシアで、店のボーイのオカマが原作人気エピのジュピタージャズに出てくるイケメンのグレン。
そもそも原作でキャラが強く出てたわけではないので、まあ別にこんくらいの改変なら…と思っていたが、そんな甘っちょろい視聴者の脳天を撃ちぬいてきた。
原作最終回では組織に殺されたジュリア。全てのケリをつけるため組織の中枢に単騎で殴りこみ、ビシャスと最終決戦…という流れなのだが、実写版だとなんとラスボスになる。スパイクとビシャスが戦っている途中で急に現れたと思ったらビシャスを銃で撃ちスパイクに「組織のトップになってほしい」と懇願。どうやら虎視眈々とビシャスの元で組織のトップを狙っていたらしい。この時既にビシャスはクーデターに成功しており、あと一歩でトップという所まで来ていた。恐ろしい女…!
困惑し断るスパイクを撃ちぬき、ビシャスを監禁し傀儡政権にしようとするところでエンド。ジュリアがラスボスは原作大好きで凝り固まっていた脳内では到底思い浮かばない。もうめちゃくちゃ笑った。続編がめちゃくちゃ楽しみになった。


メイン5キャラ以外だと名前が同じだけであとは全部違うというキャラがほとんど。ただ、ビッグショットの二人だけは何もかも再現されていた。完璧だった。

やればできるじゃねーか

メインキャラ全員に通じて言えるのがセリフ回しが違和感だらけ。これはここまで語ってきたキャラ崩壊によるもの+翻訳が洋画かぶれになる弊害だろう。正直セリフ回しの違和感が一番つらかった。

総評すると実写版酷評の元凶部分。キャラって大切だね。

・ストーリー編

先述した通り、どいつもこいつも改悪化されてしまった以上、ストーリーの評価はその分下がる。
ただ、一旦キャラに目を瞑り、似ても似つかないビジュアルに目を瞑り、「スパイクジェットフェイはそんなこと言わない」と言いたくなるセリフ回しに目を瞑り、鍛えられた心の瞳で見れば以外と見れる。
基本一話完結なのだが、起承転結が毎回しっかりしており、伏線は回収されている。B級SFコメディといて見れば何の文句も無い。ただ目を瞑る項目があまりにも多すぎる。

・他

劇版

流石は菅野よう子…と言いたい所だが新曲と既存曲が使われる度に当時の菅野よう子の天才さが浮き彫りになるだけだった。というかビバップの名曲たちは監督のナベシンとの密接で熱血な連携によるもので、菅野よう子どころかナベシンとすらロクな提携をしなかった実写版では熱量が違うのだ。普通のジャズBGMという認識から外れない、聴けば流れていく平凡なものだった。というか既存曲も使われ方が雑なので、おそらく実写版の監督は音楽に対してさほど思い入れが無いのだろう。ビバップと音楽は切っても切れない超重要なファクターなのだが。

ビジュアル

CGはすごい。金がかかってる。さすがネトフリ。ビバップ号の内装も再現度すごかったし、ソードフィッシュ等のマシンも大迫力だった。
問題は、こいつらの出番が全体の1%にも満たないこと。
各キャラの見た目は一部触れているが改めて。スパイクは老けすぎジェットはなぜか黒人フェイは面白女ビシャスは芸人。ジュリアは平均的美人。まあ実写化のビジュアルはよせすぎない方がいいと思っているのでそこまで気になってない。

その他気になったこと

敵モブに女性が毎回いた。原作にはいなかったんだけど。おそらくこれは昨今のジェンダー問題対策なんだろうけど、その他モブと同じように撃ち殺されるジェンダーって必要なん?知らんけど。個人的には気になっただけで別に何とも思わんけど。


おわりに

実写版カウボーイビバップは2部構成で、続編が作られる予定だった。が、不人気により打ち切りという結果になった。個人的にはジュリアラスボス化からどうなるのかがとても楽しみだったので残念だ。あと1部ラストで記憶が戻りそうなフェイとか、急に現れたエドとか。1部で原作の話をほとんど触れたので2部は完全オリジナルになるのも気になってた。

まあ、正直残念ではあったけど打ち切りは納得なので…

他の方のレビューを見ていると「ビバップ未見の方が楽しめる」という意見がそこそこあった。確かに失望はしないだろう。違和感を多数感じ苦しみもしないだろう。しかし原作ファンがニヤッとする展開、原作ファンしか分からない展開も入り混じっているので個人的には原作を見てからを勧める。その上で、「カウボーイビバップという名前じゃなければ普通のB級SFコメディ」という評価を結論とする。


ていうか実写とかどうでもいいんでアニメカウボーイビバップを見てください。よろしくお願いいたします。



SEE YOU SPACE COWBOY…

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