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COVID-19パンデミックと ここから始める事業継続プラン策定(BCP)の第一歩

先の見えない自粛モードの中、それぞれの組織(会社やお寺など)において、何をしていいのか、どこから手をつけて良いのかわからない、という声をお聞きします。

このような場合、Business Continuity Planning(事業継続計画/略称:BCP)に基づいて状況の把握とアクションの判断を行っていくのですが、一部の公的機関や大企業以外ではBCPについてあまり知られていません。

ご説明することもちょくちょく増えてきたので、少しまとめておきます。BCPのことをよく知らない方向けですので、お詳しい方はスルーしてください。

いまこそBusiness Continuity Planning(BCP)

先の見えない自粛モードが続いています。早く収束すれば良いですが、年単位で時間がかかるという話も出ています。短期間であればとにかくじっと耐える、というのも可能かもしれませんが、長期ならそうも言ってられません。現在の状況を見ると、長くなることも想定せざるを得ないでしょう。

そんな中、いろいろな組織(会社やお寺など)の方から、いったい何をしていいのやら、どこから手をつけて良いのかわからない、という声をお聞きします。

本来であれば、事前にBusiness Continuity Planning(事業継続プラン策定/略称:BCP)を行い、非常時のリスクや組織への影響度を分析し、アクションの優先順位などもある程度決めておいた上で、現在の状況に照らして判断を行っていくのですが、日本では公的機関や一部の大企業を除いて、BCPというものがほとんど認知されていないのでは無いかと思います。

BCPは平時のなんとも無い時に策定しておくべきですが、作っていない場合は今から作るしかありません。手をこまねいている状態でこの状況が長期化すると、いろいろなことが手遅れになってしまいます。多くの組織においては、ついにBCPにとりかからざるを得ない時が来たと言えるでしょう。

但し、BCP策定には本来数ヶ月はかかるものです。以下ではBCPがまだできていない組織を念頭に、現在の状況も加味して、まずはこの辺りから始めたら良いだろう、という内容を説明します。本格的BCP策定は状況が落ち着いてから行うと良いでしょう。

(参考)ちなみに災害時のマネジメントをDisaster Management(ディザスター・マネジメント)と言いますが、これは人命や人道支援的の話にフォーカスすることが多いようです。また、Business Continuity Management(事業継続マネジメント/略称:BCM)という言い方もありますが、こちらはBCPとだいたい同じような意味で使われていることが多いようです。

ステップ1:情報通・識者を確保する

何らかの事態が発生した時は、まずは組織内において、各方面の事情に精通した人間を捕まえます。もちろん今回のコロナのような場合は極力オンラインで集まるしかありません。緊急事態なので、とにかく詳しい人間を捕まえて、可能な限り必要な情報を正しく入手することが重要です。

情報は不十分だとしても、ひとまず全体把握を行い、① 何を維持しなくてはいけないか② 何が維持できるか③ どのように優先順位をつけるべきか、などについて冷静かつ現実的に考えます。感情や希望的観測、思い込みの類は排除して考えなくてはいけません。①〜③について、粗くても良いので考えの整理がある程度できれば、暫定目標を設定することができます。

尚、非常事態の指示命令系統に関しては、必ず最上層部(CEOや取締役会など)からのトップダウンが確立されてなくてはなりません。そしてファクト(事実)に基づいた、その時点でのベストな判断を行い、指示命令系統に順次流していきます。トップの冷静な判断力と決断力が問われます。

ステップ2:対策本部を作る

次に、業務、財務、人事、IT、法務の責任者などからなる対策本部を作ります。ここには各事業(会社であれば製品やサービスなど)の責任者を紐付け、情報が適宜対策本部にインプットされるようにします。正確な情報がスムーズに行き来できる体制を構築します。

(補足)通常は災害が発生しても、対策本部を作るとは限りません。ステップ1で情報を集め、被害が甚大で対策本部が必要と判断された場合にステップ2に進みます。現在はすでにパンデミックの渦中にありますので、ステップ1とステップ2を同時並行的に進める必要があるでしょう。

また、現時点でBCPができていないのであれば、BCPプランナー(BCP策定者)もいないでしょうから、このコア・チーム(対策本部)のメンバーの中から、BCPプランナーに向いた人間を特定します。

本来であればBCPのコースを受講し、経験を積むべきですが、残念ながらその時間はありませんので、チームメンバーの中から、論理的思考力があり、感情的にならず物事を俯瞰的に見つつも、細かいことに気付ける人材を選ぶと良いでしょう(満点はなかなかいないかもしれませんが)。その人材に一連のプロセスをリードさせて進めます。

ステップ3:リスクを把握する

リスクアセスメントと呼ばれますが、自組織に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定します。リスクを見るときは必ず、最悪のケースを想定します。但し、あり得ないほどの最悪を想定しても意味がありません。様々な情報から、起こり得る最悪の状況を想定します。起こりうるかどうかの判断は簡単ではありませんが、判断の精度を上げる鍵は情報に尽きます。正確かつ必要十分な情報を入手するよう努め、起こり得る最悪のケースに必ず備えることが不可欠です。甘い読みで「想定外」を産まないように気をつけます。

(補足)リスクを見るときは悲観的、あるいはネガティブシンキングでなくてはいけません。但し既述の通り、現実に起こり得る範囲で見ます。楽観的あるいはポジティブシンキングは、やることが決まった後に発揮するものです。楽観的に考えて、いざ行動となると不安で腰が引けるようではダメです。慎重に想定して、あとはやるしかない、と前向きに行動することが大事です。

また、一つのリスクに対処すると、さらなるリスクが生まれることもあり、常に深く掘り下げて思考する必要があります。

例えば現在であれば感染リスクを避けるためにテレワーク・在宅勤務が増えています。一方で安全な社内ネットワークの外に出てしまうことで、情報漏洩のリスクも高くなります。このように、一つのアクションが新しい問題を産むことにもなりかねません。こういった派生的リスクについても考え、対策を講じる必要があります。

(余談)「リスクを避ける」と言って何もしない人を目にしますが、リスクに対してはまず「現実のものとならないように制御する」努力をします。例えば社内で着服が出ないように現金の扱いをやめると盗難・横領のリスクが減ります。一方、リスクには自分では発生を制御できないものの方が多いです。これらに関しては、発生の兆候を早期に捉えると同時に、発生時の対処法をあらかじめ確立することになります。

リスクを考える際、目の前の見えている事象に気をとられがちです。しかし背後では、他のリスクが迫っているかもしれません。常に広く俯瞰的に世の中を捉えて、先手先手でリスクの把握と評価をしなければなりません。

重要リスクの一覧表ができたら、それぞれのリスクを評価して、想定される自組織への影響を見極めるステップに入ります。

(参考)背後のリスクとして、米国海洋大気庁(NOAA)の気候予測センターは、今年米国の一部の地域で、いつもより甚大な洪水被害が予想されると発表しています。また、アフリカで現在70年ぶりと言われるサバクトビバッタの大発生が起こっており、アジアに波及しつつあります。これに伴い食糧危機の懸念も増しています。国際指標であるシカゴの小麦先物相場は2月頃まで上昇していました。現在は外食産業の需要減のため相場も多少戻っていますが、バッタによる蝗害(こうがい)が収まったわけではありません。こういった他のリスクについても注視する必要があります。


ステップ4:影響を分析する

リスクのリストアップと評価が済んだら、組織への影響を測ります。まずは組織の主要な機能とプロセスを整理し、それらが止まった場合に最も大きな影響が出るものは何かを特定します。

例えば手形を使っている(振り出している)企業であれば、口座への入金が滞ると不渡りが発生し、「事実上」の倒産となります。ですから入出金業務というのは何があっても止められない、というのが通常です。

従業員への給与振込も止まると、その影響は甚大です。給与支払いも基本的に止められないものに入ります。実務上は残業代等の計算ができないことも多いので、緊急時に限り、暫定的に前月と同額を振込み、その後の給与支払いの際に清算する、という方法が取り得ます。

【注意】時間外手当等の計算ができないからといって、非常時を理由に意図的に実際より低い金額にして振り込むと違法になります。賃金支払いの5原則に従い「満額払い」が基本です。

こういった支払い関係は通常、不要不急には含まれない、必須の業務・機能ということになります。

(参考)今回のコロナでは実経済が減速しており、特に中小企業では資金繰りに苦労しています。これを受けて、手形不渡りを猶予とする特別対応がなされることになっている模様です。

上記に限らず、組織の機能すべてにおいて、それぞれが止まるとどうなるか、現実に止まる可能性はどれくらいあるのか、ということを客観的情報を元に想定し、重要度・優先順位を決めていくことになります。

ステップ5:実行

どの業務・機能が止まると何が起きるかが見えてくれば、自然とやるべきことも明らかになります。優先順位に照らして、一つずつ手を打っていきます。

但し、実行段階において、死守すべき機能を保つために必要なものが揃わない、などの困難が度々訪れます。どうしても生産をしないといけないのに原材料が届かない場合は、知恵を絞って代替案を出し、手を替え品を替えなんとか生産を維持・継続する、ということが必要になってきます。

(参考)顧客店舗の休業が増え、出荷ができない、と悲鳴を上げている生産者も増えています。こちらは既存流通網からSNSでの支援の輪が広がっています。代替流通が拡大する可能性があります。

簡単に解決策が見つかるとは限りませんが、このステージでは、創造力を発揮することも重要になってきます。ITを始め、一昔前とは違うツールが世の中に出ていますので、そういったものの活用はまず考えるべきでしょう。

実行に伴い、変化も起きます。原材料は手に入ったけど、機械のメンテナンスが間に合わない、などのように、組織内のボトルネックが変化することもあります。常に情報を集め、状況を分析し、優先順位の見直しとアクションの修正を行い、また実行する、というようにグルグルと回していくことになります。

実際のBCPの内容はもっと複雑ですが、まだ手を打てていない場合は、BCP策定に向けた第一歩として、上記を参考にひとまず動き出し、手を付けてみると良いかと思います。

まとめ

以上の要点をまとめると、「情報をしっかり取ること(そのための体制づくりも)」「冷静に最悪の事態を想定すること」「組織の機能・業務ごとに優先順位を決めること(そのために影響度を測る)」「優先順位に即して機能維持のアクションを取ること」「解決策に関しては創造力も発揮して知恵を絞ること」ということになります。

具体的にお話を伺うと、「必要不可欠」なものと「不要不急」なものの切り分けがうまくできない組織が多いのが実情です。即ち、優先順位のつけ方が正しくないことがよくあります。

上述の通り、手形の支払い的なものは「やらないと(組織が)死んじゃう」類のものです。しかしながら、不要不急と言えるものを、「これは絶対維持しないといけない」と思い込んでしまっているケースが散見されます。なので具体的にお話を伺う時は、「それってやらないと(組織が)いつ死にますか?」とお尋ねすることにしています。すぐには死なないのであれば優先順位は下がります。

何が本当に重要か、何が本当に致命傷になるか、ということをしっかりと見極めることが大事です。BCP策定にはそこの切り分けから始める必要があると言えるでしょう。

おまけのあとがき

自分がBusiness Continuity Planningのコースを取ったのはもう4年も前になります。もともと原子力工学科出身であったことや、総合商社時代にも前例のないトラブルやリスク管理に携わることがありましたので、BCPに対する関心もありましたし、必要なスキルセットだと思っていました。

しかしながら、日本でBCPに取り組むのは大企業の一部くらいで、ニーズは全然ありませんでした。BCPを生業にするつもりはなかったので良いのですが、企業のBCPに携わっていた英国人の友人が引っ張りだこだったことと比べると、日本はまだまだだなと思ったものです。

最近、個別にご説明する必要がちょくちょく出てきたので、一つまとめておこうと思って記事にしました。ご参考になれば幸いです。

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(記事作成:2020年4月18日)

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浄土真宗本願寺派僧侶、企業顧問、会社役員、宗門委員、NPO法人副理事長、各種講師、など。

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木村さん(コロナBCP)
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