カーテンを買いに。【398字掌編】

テレワークの普及に伴い、都会の喧騒を離れて、長野県の下伊那郡高森町、妻の実家の近くに引っ越しをする事にした。義実家との関係性は悪くない。話し合いを重ねて、そう決まった。まだ小さな息子を見て貰える点でも、妻の安心感からも、引っ越しをして良かったと思う。

今日は新しいカーテンを買いに行こうと、秋に染まる道に車を走らせている。ネット注文もいいと思うが、私はカーテンは実物を見て買いたい。

「何色がいい?」

妻が息子にそう聞いた時だった。

「あれがいい」

息子が指差す何かを見て、妻が車を停めてくれと催促してきた。何だ一体。渋々停めて、その方向を見た。

干し柿のカーテンだった。

ある一軒家の二階の軒下に、袖摺れのような距離で吊るされていた柿達は、実に鮮やかな色のカーテンになっていた。

「あれがいいね」

「あぁ、あれがいい」

家族三人の意見は一致した。

私達の新居のカーテンが何色になったかは、もはや言うまでも無いだろう。

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