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七五三の色節に。【397字掌編】

千歳飴が江戸時代、現在の東京浅草にて飴売り七兵衛が流行らせた「千年飴」から始まった記録は残っているが、千年飴を最初に食べたのは、実は鬼であったことは歴史から抹消されている。

七兵衛は当時貧乏長屋に住んでおり、その日暮らしの日銭を飴売りで稼ぐ日々であった。貧乏神と鬼と共に住んでいた。

11月15日、七兵衛は日銭がいつもの二倍稼げて上機嫌だった。反対に鬼はどうも気分が沈む一日で嘆いていた。百歳にならないと一人前になれない。なんと遠いのかと嘆く鬼を不憫に思い、初めて贈り物をした。作り置きの飴を「千年生きろよ」とくれてやっただけだが、どうあれ初めて贈り物をした。

貧乏神はこんな綺麗な場所にいられるかと出て行った。

鬼は、人から物を贈られる事が初めてであった為に、初めての感情を抱いた。

その名前の無い感情は、鬼がやがて鬼の王となった時に人間への敬意として発揮された。

「その日、子供と千年飴には手を出すな」

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