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非常識すぎた初めてのアレ♡

15の春休みだった。
中学校の卒業式の次の日、私たちは手に小さい四角い箱を持って、ドキドキしてある所へ向かった。

「私たち」というのは中学の仲良しグループのことである。
男女何人かのグループで、卒業式のちょっと前に、「卒業式の次の日、こいつんちで髪染めようぜ!」
みたいな、とんでもなく迷惑な約束をした。

「こいつんち」の「こいつ」は、そのメンバーで放課後よく遊びに行っていた男子の家である。いわゆる私の中学の同級生たちの溜まり場のようになっていた。本人はいないのに、同級生の誰かはいる、というような迷惑すぎる有様だった。

お察しかと思うが、冒頭の文章の訳は、私たち(いつメン一同)は、四角い箱(市販の染め粉)を持って、ドキドキしながらあるところ(同級生の家)へ向かったのである。

今思うと、人の家で髪を染めるなんぞクソめんどくさいし、各々自宅で染めてから集結しろやと思う。
けど、あの頃はなんでも皆で一緒にやる仲間意識が重要だったのだ。「〇〇の家でみんなで髪染めたんだ~✌」と言う誰に対してか分からないマウントを取れることが重要だったのだ。誰が羨ましがるんだよ。

同級生の家に着き、早速染め粉のパッケージを開封する。
この染め粉は、卒業式のあとに皆で薬局に買いに行ったMy first 染め粉である。
いつも、染め粉売り場の前で「染めるならこの色かな~」と、未来の髪の色について語り合っていたが、ついにその日がきたのだ。

箱の中には、説明書と液とチューブ状のものが入っていた。
どうやら、これらを混ぜ合わせると髪の毛が染まる泡になるらしい。

約6畳の部屋に集いし5名は、各々髪の毛を染め出した。
ちなみに言うと、タオルもなければ汚れて良い服でもない。換気も悪ければ人も多い。
同級生のベッドの上で、無心で頭に泡を塗りつけた。無知と若さとは怖いものである。

もう一人の男の子は、めちゃくちゃに染め粉が頭皮に沁みていた。
わたしは自分の頭に泡を乗せてひねり上げた、キューピーちゃんスタイルのまま沁みまくっている男子の頭の右半分を担当した。ベッドの上で。
男女のこんなにエロくないベッドシーンはこの先なかなかない。

そして20分程経過し、あとはシャンプーをするのみとなった。
え?シャンプー?どこで???

A.もちろん風呂場である

セルフカラーって、今でも自宅でやろうとすると母に渋い顔をされる。
「ぜっっっったい壁に染め粉つけないでよ!」「お金あげるから美容院行ってきて!」などの心無い言葉を浴びせられるのだ。

そんな悪魔の儀式を人様の家(実家)で行おうとするとは…

若さとは怖いものである #二度目

わたしはキューピースタイルのまま階段を降り、風呂場へと向かった。途中、リビングにいる同級生のお父様と目が合ったようなきがした。多分気だけではなかった。本当にすみませんと15年後の私が謝りたい。
浴槽から頭だけ乗り出し、同級生に頭を洗ってもらった。(もちろん着衣のままですよ)嫁入り前の15歳が、同級生の男の子に頭を洗ってもらうなんて、不徳の致すところでしかない。これが永瀬花帆、自分の父親以外の異性に初めて髪の毛を洗ってもらう経験となった。
そして家主の同級生は、シャンプー×5人を続けざまにやってのけた。本当に不憫である。

そして仕上がりの方はというと、う~ん、THEビビり染め!
「初めて髪の毛を染めた中学生」と検索したら、フリー素材で引っかかってしまいそうな中学生が爆誕したのだ!トレビア~ン!

全員が髪の毛を染めたあと、顔を見合わせてみんなでニヤニヤした。さようなら、昨日までの私たち。

なんでも、今時の中学生や高校生は初めてのヘアカラーを美容院でするらしい。「へえ!」と田舎のおばあちゃんのような感嘆の声が出たが、絶対にそっちの方が良い。
ここを見ている全中学生に告ぐ。中学校を卒業した次の日、いくら浮かれているからって同級生の家で髪を染めてはならぬ。美容院に行け。せめて自宅でセルフカラーをしよう!#みんなそうしてるわ


そしてこの数週間後の高校の入学式初日、バッチリ生活指導の先生に呼び出され、「プールの塩素で抜けました」という、「高校生 髪染めた 言い訳」でググったら出てくる言い訳ランキング第一位のセリフでどうにか乗り切った。3年間乗り切った。 #絶対に乗り切れてなかった

同級生の家から帰る時、この場にはいなかったいつメンの男子がどこからともなく登場した。彼の髪の毛は燃えるような赤に染まっていた。彼はうちらを見て嘲笑うかのようにこういった。

「お前ら人んちで髪染めたのかよwwwwww」

#ごもっとも
#お前頭いいな
#お父様、並びにご家族の皆様、本当にすみませんでした

おしまい


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