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NBA TOP SHOTに学ぶWaiting Room 20万人を一度にさばくEコマース

こんにちは、デザイナーのKahonです。UX、ブランディングデザインまわりを考察します。今日は今最も注目するべき、と言っても過言ではない、NBA TOP SHOTから、数十万のトランザクションを一度に行うUXを見てみます。

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NBA TOP SHOTとは?

NBA公式で、ブロックチェーン開発企業ダッパーラボ(Dapper Labs)が開発・運営するNFT(代替不可能トークン)トレーディングカードゲームです。NFTについては後日別に記事にしていきたいと思いますが、色々なデジタル作品(アートや音楽も)を1つづつ個別に認識できるため、価値をつけることができます。またブロックチェーン 上で管理されるため全ての履歴をトラックすることが可能です。近い将来には楽曲や書籍、コンサートチケットなども全てNFTになるでしょう。そうすることで転売時にオリジナル作成者に任意の報酬をつけることも可能です。つまり転売は悪ではなくなるわけですね。

そのNBA のデジタルトレーディングカードが全米で大人気です。何と1枚のトレーディングカードが最高額$208,000(約2,185万円)で取引されました。市場は若く、2020年10月にスタートしたばかりですが、すでに $230 millionの決済が行われています。


Waiting Roomとは?

NBA TOP SHOTでは上記のような高額になる可能性のあるカードが入ったパックをセールに出すことがあります。通常価格は6枚9.99ドル。手に入れることさえできれば高額転売することが可能なこともあり非常に人気です。

さて、ここで本日の本題。世界中からのアクセスを一気に裁くことのできるマーケットプレイスのUXは非常に優れていました。まずはセール開始1日ほど前にツイッターやメーリングリストにて発売日時のアナウンスがあります。発売時間の近くになるとさらに購買に直結するリンクが提供されます。この場面がセールの最初の入り口となります。セールはまだ始まっていません。Waiting Roomになります。発売は10,631パックのみ。そしてあと3分31秒でセールが開始されることが知らされています。

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随時更新されるメーッセージにはセールが始まると同時にランダムに列に入れられる旨が告げられます。そしてセールに切り替わる画面では1〜2分は待つことになり、それは問題のない想定のものだというお知らせもあります。実際に購入のタイミングが来ても混雑のため、トランザクションはすぐには通らないかもしれないという注意もあります。親切で、焦ることがなく、とてもユーザーフレンドリーです。

実際この列に並んだ人は20万人以上です。すごいですね。オンラインのマーケットプレイスだからなせる技であり、この方法は今後様々なプレミア商品、限定商品につかわれることと想像します。任天堂SwitchもPS5もこの方法ならもっと効率的に販売ができたでしょう。もっともデジタルでない場合は発送を伴うために各エリアで販売方法が分かれるのでWaiting Roomの役割はリリース時のプレミアム感だったりするものが大きくなるかもしれません。一度に数十万人という規模のマーケットはこのようなゲーム市場や、音楽市場になってくるのではないかと思います。またこの仕組みはSNSで共感を作りやすいでしょう。

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そうして私はセール画面の列に並ぶことになりました。なんと29,875番目だったんです。おしい!実は先月はあと7000人のところで売り切れました。

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このように自分の前にあと何人並んでいるかがわかります。20万人以上並んでいたので、さすがに後方の方達は諦めるしかありません。私のように若干可能性がある場合はドロップする方もいるのでは、決済失敗するのでは、なんて期待もしながら待つのですが、NBA TOP SHOTに限っては殆ど脱落する方(列を離れる方)はいません。

一つのウェブサイトで20万人のお客さんを同時に裁く方法としての一つの最高の例としてご紹介しましたが、この手法はコンサートチケット、アーティストのオークション、チャリティ、その他プレミアム商品など様々なジャンルで使えることは想像できると思います。

上記のレアカードのセールの数日後に、今度は一般カードのプレセールが行われました。この時はプレセール(時間限定)に並んだ人は全員購入権がありました。一般カードなので何千万円になることはありませんが、運が良ければ人気のチームのカードが入っていることはあります。その列に並んだ30万人以上。日本時間夜中の3時から朝の7時までの4時間の中で列に並んだ人は購入できました。

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並び時間中は様々な著名人がNBA TOP SHOTについて熱く語るというライブ付きでした。待っている間も楽しめる工夫ですね。この部分にもライブコマースをつけたり、色々な仕組みが追加できそうです。

Eコマースに置いてのWaiting Roomという考え方自体は1年くらいから見かけていました。イギリスのオンラインスーパーのOcadoもそうでした。コロナ禍で外出禁止になり、イギリスではオンラインスーパーの使用制限がでて、お年寄りや妊娠中の方に優先順位が回りました。この時にも、ログインして、自分が優先順位に当たらない場合は商品が並ぶページには進めず、Waiting Roomに通されます。そしてその理由と、ブラウジングができるまでの目安の待ち時間も出ていました。

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私が記憶する限りはオンラインのWaiting RoomはOcadoが最初でした。こちらも只でさえストレスフルな状況下の中、大量のユーザーを適切に裁くための大変参考になるUXですね。

店頭に並ぶ時代は終わり。ですね。

大事なことは、

「必要な情報を整理して伝える」がUXの基本ですが、日本のウェブサイトは海外からかなり評価が低いのはこの部分ができないからです。その時点のユーザーに必要な情報は何か、無駄な情報は有益な情報を隠してしまい伝わらない原因にしかなりません。Waiting Roomは沢山のユーザーをオンライン上でさばく上でとても重要な役割を果たします。上記のプレミアムセールなど、ユーザーが過度に興奮している状況が考えられる場合、その用途をしっかり考慮し、シンプルに状況を説明できるUIが好まれると思います。その上で待っている間の付加価値をつけていくべきでしょう。例えば災害時のホットラインなどもこのようなWaiting Roomは有益だと思いますが、その時に必要な情報は違いますね。様々な場面で、様々なユーザー心理があります。過度に情報はやめるべき場合が多いと想像しますが、状況によりかわるでしょう。必要な情報とは何なのか、いつでも考えられるようにしたいですね。

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