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中小企業者への資金調達支援措置について(新型コロナウイルス関連)

先日、3月11日付で経済産業省より、以下の発信がなされています。

巷では様々な情報が流れていますが、まずはこうした一次ソースにあたり、「自分が使える制度は何で、どう対応すれば良いか」をきちんと調べ対応することが肝要です。

一方で、こうした情報は正確性・速報性に関しては優れているものの、実際に制度を利用される中小企業者の方から見れば、非常にわかりにくいものとなってしまっています。仕事柄、こうした内容に触れる機会のある私でもわかりにくいと思うのですから、例えば今回初めて支援措置の利用を検討されているような方にとってはなおのことだと思います。

こちらのnoteでは、上記経済産業省の3月11日付発信内容をベースに、「一体何が書いてあるのか」ということを中身に沿って解説したいと思います。具体的な手続き論ではなく考え方の話が中心となりますので、今後紹介している以外の制度を利用される際にもお役立ていただけますと幸いです。
(個人でまとめた情報となりますので、誤りを含む可能性がございます。必ず出典元の資料をご確認ください。また、こちらは執筆時点(令和2年3月25日現在)の情報となりますが、状況は刻一刻と変化しております。必ず最新の情報も併せてご確認ください。)

1.危機関連保証制度

危機関連保証制度の概要は以下のとおりです。

内外の金融秩序の混乱その他の事象が突発的に生じたため、全国的な資金繰りの状況を示す客観的な指標である資金繰りDI等が、リーマンショック時や東日本大震災時等と同程度に短期かつ急速に低下することにより、我が国の中小企業について著しい信用の収縮が全国的に生じていることが確認でき、国として危機関連保証を実施する必要があると認める場合に、実際に売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置です(平成30年4月1日施行)。
(出典:中小企業庁「危機関連保証制度」

今回の新型コロナウイルス感染症により、制度創設以来、初めての実施となる制度です。

対象となる中小企業者は、次に掲げる2点のいずれにも該当する必要があります。

①金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るために資金調達を必要としている。
②下記の認定案件に起因して、原則として、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる

売上高等の減少について、これらの制度要件に該当していることを証するために、市区町村長の認定が必要となります。よく、単に「認定書」と呼ばれている書類は、この認定に係る書類を指しています。

また、少し話が前後しますが、そもそも保証制度を利用することができる「中小企業者」についても、別途定義がなされています。自分がこうした制度を利用できる中小企業者かどうかについては、以下を参考にしてください。

最後に、危機関連保証制度について補足しますと、「全国・全業種(保証対象業種に限る)を対象として、信用保証協会が通常の保証限度額(2.8億円)及びセーフティネット保証の保証限度額(2.8億円)とは別枠(2.8億円)で借入債務の100%を保証する制度」です。

知らなくても大丈夫なのですが、少しマニアックな話をしますと、通常保証制度を利用する際には責任共有制度により、保証金額の20%を金融機関、残りの80%を信用保証協会で負担するという形でリスクシェアを図っています。

これは、中小企業者が金融機関から借入を行う際に保証してくれるのが信用保証協会であり、もし返済ができなくなった際は中小企業者に代わって金融機関に弁済をしてくれる(「代位」して「弁済」するので「代位弁済」と言います)のですが、責任共有制度によりこの代位弁済金額は通常、返せなくなった金額の80%になっているということです(もちろん、信用保証協会に対して返済をしていくことになります)。

原則すべての保証が責任共有制度の対象となりますが、一部例外的に除外される制度があり、当該危機関連保証制度も責任共有制度の対象外となっていることから、保証割合が100%(一義的に信用保証協会が全てのリスクを取る)となっているのです。

また、「保証限度額」はあくまで制度としての上限ということになります。制度を利用して借入をするにあたっては、金融機関と信用保証協会両方の審査が必要となりますが、各中小企業者の内容によって「どこまでリスクをとって貸せるか」という与信への考え方は当然変わってきますので、保証限度額の枠の範囲内において、各金融機関及び信用保証協会の与信判断によって実際の融資金額が決まることにご留意ください。

2.セーフティネット保証4号・5号

そもそも、4号・5号とは一体何のことなのか…ということですが、セーフティネット保証(経営安定関連保証)というのは「中小企業信用保険法第2条第5項」に規定されている保証であり、この第4号と第5号に該当するものをそれぞれ「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」と呼んでいるだけのことです。わかると何ということはないですね(笑)

では、それぞれ見ていきましょう。
いずれも市区町村長の認定(認定書)が必要になります。また、セーフティネット保証4号と5号は同じセーフティネット保証制度ですので、併用可能ですが保証限度額は4号・5号合算で2.8億円となります。

<セーフティネット保証4号>
(次のいずれにも該当する中小企業者が対象)
①申請者が、下記の指定を受けた地域において1年間以上継続して事業を行っていること。
②下記の指定を受けた災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。
(出典:中小企業庁「セーフティネット保証制度(4号:突発的災害(自然災害等)」
<セーフティネット保証5号>
(次のいずれかに該当する中小企業者が対象)
指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者
(出典:中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))」

なお、セーフティネット保証5号の「対象業種」については、3月23日付で当初業種に加え、以下のとおり追加されております。

3.1・2に共通する認定基準の運用緩和

1・2では制度の内容および利用できる中小企業者の要件等についてざっくりと見てきましたが、前年実績等と比較するという要件の性質上、創業間もない事業者については、そのままでは対象となりません。

今回はそうした創業1年未満の事業者等であっても、新型コロナウイルス感染症の影響により、経営の安定に支障をきたしている創業者等も利用できるよう、認定基準について制度は変更せず、あくまで運用を緩和することによって広く利用できるようになっています。

冒頭でご紹介した発信内にあります「別紙4:認定基準の運用緩和について(PDF形式:248KB)」に基準が示されておりますので、是非併せてご確認ください。


この度、新型コロナウイルス感染症により事業経営に影響を受けている中小企業者の皆様へ、心からお見舞い申し上げます。
こうした状況ですが、時間が許す限りおひとりおひとりのお気持ちにしっかりと寄り添い、何とかこれまでの日常を取り戻していただけるよう、精一杯サポートさせていただきたいと思っております。
全国にいる同業者も、同じ気持ちだと思います。一緒にやっていきましょう。

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