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💕凪良ワールド✨『君が好きだった』🍷

「俺ならもっと大事にする…‼️」
その人は幼なじみの恋人で、どんなに好きでも交わることのない平行線。
茶色の前髪から透ける切れ長の目、華奢な体、ぶっきらぼうな口振り、そのくせアイツの腕の中では乙女のようにはにかむ。
マヤちゃん先輩と一度だけキスをした。諏訪が浮気をしてマヤちゃん先輩を泣かしたから。俺なら泣かしたりしないでもっと大事にしてあげられるのに…。
「アイツ、悪いやつじゃないんだ。」そう言って諏訪を庇うマヤちゃん先輩がいじらしくて、悲しくて、そんで悔しかったから。それ以上諏訪を庇うことばを聞きたくなかったから、気がつけばキスしてた。
それから、俺たちは一緒にいられなくなった。あれから十年。
青春の燻りは心の奥でずっと火種のまま、一生背負って行くんだと思っていた、あの店で会うまでは…。

高校2年の高良の実家は代々続く開業医。成績も優秀ではめを外すこともな
く、よく言えば真面目、裏を返せばダサい。そんな高良には、同じ制服なのにどこかあか抜けた諏訪という、幼なじみがいる。
誰にでも気軽に声をかけて肩を抱いたり、甘えてみたり。諏訪の周りにはいつも誰かがいた。男でも女でも諏訪が絡んでいくとみんなほだされて悪い気がしない。そんな奴、クラスにひとりはいるもんだ。

高良は親同士が従兄弟の成り行きで幼い頃からそんな諏訪を見て来たが、特に不満を覚えたことはなかった。
けど、諏訪が恋人として連れて来たのが男の真山だったことがショックだった。
同性にしか反応できない自分には「手の届かない存在」を女でも良いはずの諏訪が意図も簡単に手にいれて、目の前でイチャついていることにムカついた。

おまけに抱かれているのは、学校でもちょっと悪い感じで目だっている真山先輩で、キレイな外見とぶっきらぼうなギャップが女子には人気があった。
三つ並んだ小さなピアスや襟元から見える華奢な鎖骨とか…。無意識のうちに真山の仕草を目で追っている自分に慌てた。
野良猫みたいに威嚇する癖に諏訪だけにはゴロゴロと甘えて見せる。
その事実が無性に腹が立った。親友の恋人。抗えない事実。

「告る時の怖さって知ってるか?」
真山が諏訪と付き合うキッカケの話を高良に話した時、自分と同じ悩みを持つ人間と知ってますます気持ちが強くなった。
なのに、諏訪はバイトで忙しい真山に「会ってくれないから、寂しい」と浮気を重ねた。

✨✨✨✨
真面目な高良とアウトローな真山は諏訪がいなかったら絶対に会うことはなかった。
誰とも分け隔てなく接してくる諏訪が真山にとっては自己肯定を教えてくれる存在だった。だから、浮気されても突き放せない。
一方、ゲイと言う同じ悩みを持つ真山に魅せられてしまった高良には、諏訪が真山を泣かせる行為が許せない。

17才の彼らには、若さゆえの無鉄砲さが互いに傷つけてしまって、どうしたら良いかわからなくて、離ればなれになってしまった。

それぞれが、長い月日を経て、再開した彼らは『あの頃』を振り替えることでやっと本当の自分の気持ちと向き会うことが出来た。時間は人を成長させる。
いっぱい傷ついても、それには意味があったんだと気づかせてくれる物語。

凪良作品のキャラクターはみんなどこか、欠けていて、不器用だから思いを言葉にできなくて自己簡潔してしまう。
読者からみていると歯がゆくていじらしくて、誰もが自己投影してしまう。

いつも、それぞれのキャラ側からの視線で物語が進むので、「え~💦そんなこと思っていたの?」「どうりで、あんなことしちゃったんだ」
と一つ一つに答えが用意されてある。
だから、もっと知りたいと思いながらあっと言う間にラストまで読んでしまう。
前半の高校生編は高良。
十年後の青年編は真山。
本当は諏訪の視点からのエピソードも読みたかったなあ。
きっと、一番複雑な人だとおもうから。
そんな凪良マジックに、あなたもしばし酔いしれて見ては?🎵


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