🎩BLワールド備忘録🌙アニメ編⛩️『ツルネ～風舞高校弓道部』🎯

綾野ことこ  《 第七回京都アニメーション大賞 小説部門》

キャラクターデザイン  森本ちなつ

「あの音はなに？」
紅く色づいた葉が舞踊る中、 森の中の弓道場で白い弓道衣の射手が放った矢はカーンと乾いた音の後、的を射抜いた。
「弦音ツルネっていうのよ。矢を発したときに鳴る弦の音」母は幼い湊みなとの肩に手を置いた。
「僕、やってみたい。弓」
「素敵ね、湊が試合に出たら、お母さんいっぱい応援しちゃうわ」
小学校の時に始めた弓道は、鳴宮湊に弓と関わることの厳しさと喜びを教えてくれた。
そして、仲間との決別も。中学の県大会の団体戦で、あることがキッカケで結果が出せずそれきり引退した。
高校に入学しても部活はしないと決めていた。幼なじみの静弥が、風舞高校弓道部を復活させるために部長となり、当然湊も入部することを前提にことを運んでいることが、苦痛だった。
小学校からのワンパク仲間の遼平に、半ば強引に説明会に連れて行かれて「形だけの披露だから」と大勢の入部希望者の前で弓を引くことになってしまった湊は、案の定、無様な結果を晒すことになってしまう。
「早気はやけ」という、射手にとっては厄介な病だった。一旦、囚われると自分の意志ではどうにもならない。これで弓道を断つ者も少なくない。…やっぱり…。
湊は夜の森を自転車で駆けた。
暗い木々のざわめきが追いかけるように湊を包んだ。
その時、湊の耳に届いた冴えた音色。「カーン」弦音ツルネだ。
【夜多の森弓道場】は深い森にひっそりと白い的が浮かんで見えた。
射場の中央に立つ人影。凛として美しくその所作もうっとりするほど無駄がなかった。
一度挙げられた左右の腕が静かに押し広げられ体と弓が十文字の一体となって呼吸を待つ。
カーン。澄んだ音ともに放たれた矢は的の中央に吸い込まれた。
肌が粟立つ感覚。その眼差しは青白くこの世のものとは思えないほどだ。
滝川雅貴。彼との出会いが、湊をもう一度弓の世界へと引き戻すことになる。

京都アニメーションがアニメ化を前提に募集した小説。綾野ことこさんの文章は雑味がなくて美しく、読むほどに映像が浮かぶ。
私の大好きな凪良ゆう先生を彷彿させる表現力のある文章で、大賞を取ったのは必然だと思った。
【弓道】という一般には馴染みのない世界を、個性豊かな登場人物と高校生の湊を中心に描き、悩みや友情、ライバルとの心の葛藤を絡ませながら、弓道の楽しさや素晴らしさを教えてくれた。
実は私も弓道を少しかじったことがあったのだが、これを読んで初めて所作の意味などを知った。
ひとつひとつの動きに意味があり、『掛け替えのない』や『手ぐすねを引く』などの言葉が弓道から発したことも楽しい。

そして湊を取り巻く部員たちや、顧問のおじいちゃん先生などが、物語に深みを出している。
幼なじみの静弥は過保護なほど湊の世話を焼く。そこには何か理由がある様子。
眼光鋭い海斗はぶっきらぼうだが、仲間思いでアイドル的存在の七緖とは従兄弟同士。七緖を取り巻く女の子たちをひと睨みで蹴散らす。
遼平は図体は見上げるほどだが、人懐っこさは子犬並み。湊にとっては弟みたいな存在。
顧問のトミー先生は、今は腰を痛めて射場には立てないけど、生き字引と言われるほど弓道を極めている。
風舞高校弓道部コーチとして招かれた滝川雅貴は、どうやら血筋からして弓道の逸材のようだ。涼しげな見た目とは裏腹な熱血漢だった…？
湊が初めて弓道を習った同士、藤原愁はライバル桐先高校のエース。
桐先のメンバーも一癖もふたくせもある奴ばかり。
県大会予選への出場を前にはたして湊は早気を克服できるのか？
湊と静弥の過去にある何かとは…⁉️
手に汗握る対決の結果は…⁉️

✨✨✨✨
アニメ版

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【キャスト】
鳴宮湊：上村祐翔
竹早静弥：市川蒼
山之内遼平：鈴木崚汰
如月七緒：矢野奨吾
小野木海斗：石川界人
滝川雅貴：浅沼晋太郎
藤原愁：小野賢章

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アニメ版では原作の1巻を中心に物語は進む。
静弥の湊に対する行動の謎や、ライバル愁が湊に対して抱いている感情、護られているように見える七緖が実は海斗のお守り役だった事実などは、原作を通してからのほうが、「ああ、だからこんなことしちゃうんだ」と納得出来るかも～❤️

【弓道】という、スポーツ根性物語の中に人としての道理、信念などがきちんと描かれていて、見終わった後は、爽やかな風を受けているような感覚。
青春の若い息づかいを感じてほしい❤️

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