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手紙が好きだったこと

「手紙って捨てられないんだよね。」

この間、友人2人とご飯していて、何かの流れでそんな話になった。
手紙を捨てられないと言った友人が、高校生の時もらったラブレターをまだ取っておいてあると言った。
え、まず、ラブレターなんて人生でもらったことないし、私たちが高校生の頃、携帯でのメールでのやり取りが当たり前(まだLINEではない)だったから、興味津々になって相手のことや、手紙の内容を聞いた。

「ずっと手紙を取っておくなんてすごいね。手紙って照れくさくて苦手だな。」
同じく、ラブレターというパワーワードにびっくりしてたもう1人の友人がそんなことを言って手紙の話題は終わり、おしゃべりは続いた。

なんとなくその場では言わなかったけれど、実は私も取っておく派。もらって嬉しかった手紙は、一纏めにしてこっそり保管しているのだ。

今ではもらうことも、書くことも、年に数回あるかないかの珍しいものとなってしまったけれど、手紙がけっこう好きだったことをじわじわ思い出した。



手紙を貰った時点でそのことが嬉しいし、何が書いてあるのか開けて読む瞬間のワクワクが好き。
相手を想いながら、なんだかんだ忙しい毎日の貴重な時間を使って、その人の言葉で、その人の字で綴られたもの。この世に一つとしてぴったり同じものはないだろう、自分宛の手作りの読み物だから好き。

手紙でどんな事があったかな、と思い出す。

手紙を使って小さな約束を交わしたり、新しい秘密を共有したりしてたな。ある時は手紙の中に、その人から見た自分の姿が綴られていて、その言葉のいくつかが自分の糧になっていったと思う。

手紙を貰う機会のピークは小学生かな。
「〇〇©️(ちゃん)へ」から始まり、放課後の遊ぶ約束とか短い内容のやりとり。あの名前のない定番の折り方で折って、授業中に回したりしてた。交換ノートも好きだった。かわいい文化だったな。
時には喧嘩中だったり悪口の内容だったりを読んで、心臓がぎゅっと緊張するような嫌な感覚の記憶もぼんやり残っているけれど。

中学生の頃、中学入学と同時に引越しをしたから、離れ離れになった小学校時代の友達に、手紙をよく書いていた。
キャラクターの便箋で3枚くらいに渡る長文と、少女漫画を真似た絵を書いて送っていた。プリクラを貼って交換し合ったりもした。
でも少しずつ返事のペースは遅くなり、いつの間にかやり取りは終わってしまった。

高校生、大学生になるとみんな携帯を持っていたし、手紙のやり取りって少なかった。誕生日だとか、卒業の時には手紙を渡し合ったり寄せ書きをしたかな。寄せ書きは普段親密でない人からも短い手紙を貰えるようで面白い。そんな風に思ってたんだ、もっと仲良くなれたかも、と思ったり。

いつだったか、付き合った人の誕生日に手紙を書いたことがあった。
映画か何かに憧れて、可愛いこぶったつもりで英語のメッセージを入れたら、馬鹿にされてしまって恥ずかしくなって落ち込んだ。
手紙は送ったら喜ばれるし、返ってくるものかと期待してたけど、手紙には好き嫌いというか、温度差があることを知ったのと、自惚れて変なことしたり、自分らしくないことは書かないようにしようと静かに決意。

社会人になって、手渡しの給料明細とともに、7.5㎝四方の付箋にびっしりと手紙を書いてくれる上司がいた。
ポーカーフェイスで口数が少なく、厳しいことを淡々と言う仕事人という印象だった。
けれど手紙の中には、自分が辛い時期であればそれをお見通しであることや、力みすぎるなという言葉があった。かと思えば、真顔で話してるのに急に笑わせてくるような、ふざけた文章も挟み込まれていた。
アリの行列のように小さくびっしりと並んだ字から、繊細で優しい人柄とシュールな笑いのセンスを感じた。

人の書くプライベートな文章っておもしろいけれど、それが、自分に宛てられたものだと、もっと特別なものが詰めこまれている。

自分はあなたの事、こんな風に想ってるよ。ありがとうの大きさを自分なりの言葉を添えて伝えたいよ。頑張ってって無責任に応援しているんじゃないよ。照れくさくて直接言えないけれど、あなたが思っているよりも、大好きだということ…。
その人の字で綴られているから、読むたびに話しかけられている気分になれる不思議がある。

手紙を書く人の姿を想像する。スマホやパソコンに慣れすぎてしまった今、ペンを持って書く姿は改めて美しくて、愛おしいように思う。

手紙の文化が恋しくなったから、たまには人に手紙を書いてみよう。
なかなかタイミングがないから、贈りものと一緒に短い手紙を添えることから始めようかな。

今日の絵は、絵の花束。
花束の絵ではないけど、1種類ずつ描きたい花を並べていたら、花束のように見えてきた。いつだって、花束って貰うと嬉しい。手紙も同じ。
色々な花を束ねた花束のように、言葉を束ねたような手紙も大切にしたい人間の文化。

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mumukaho

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