第三波移民ブームー今回は、戻りません

2020年6月30日2300時、香港国家安全維持法(略称国安法)が成立した以来、約一年2ヶ月ほど経ちました。元議員、民主活動家、唯一な民主派新聞紙蘋果日報の社長と幹部、2019年から戦ってきた名もなき若者たちや大学生がこの法律に適用し収監され、また民主派組織、学校先生の労働組合を解散に追い込み、急速に激変した香港の裏では、第三波の移民ブームが静かに来ている。本題に入る前にひとまずお願いしたいことは、去る人も残る人の選択もお互いに責めずに尊重してあげて欲しいと思っている。

去る人達
1989年64北京天安門広場大虐殺事件が第一波、1997年7月主権移行前が第二波、2020年国安法の制定および実行後は間違いなく第三波移民ブームと言っていいだろう、しかも進行中である。偶然にもコロナ禍と被り、この時期に‛ちょっと旅行に行ってきます!‘はないので、数字がより計算しやすくなる。移民先は旧宗主国であるイギリスをはじめ、カナダ、アメリカ、オーストラリアなど英語圏が人気の他、頼もしい友人である台湾に移住した香港人も多いと想定される。さて、最も気になる人数を見てみよう。政府の統計によると、国安法の成立から2021年8月中旬まで、移入人口を引いた純移出人口はおよそ9万を上回り、つまり総人口の約1.2%の人口が移民を選択した。繰り返し、これは進行中であり、まだまだ香港から出ていく勢いが止まらない。社会に出る影響はこれから続々と現れるだが、超難関NO.1名門校が学生募集の広告を出したり、移民の為専門医を辞職したりして、エリートと大量の資金がこの土地から離れていくことは客観的な事実だ。まともな選挙がない分、人民は足で投票する。アフガニスタンの人々と比べてみれば、香港人は本当に幸せだとすごく痛感した。

‘やっぱ外国の生活慣れないー、香港の方が暮らしやすい’‘移行後は想像より状況がひどくならなくて、しかも稼げそう’一旦移民したものの、戻ってきた第一波と第二波の人達はいる。もう一個パターンとしては、家族全員を海外に送り、自分だけは残って稼ぐという方、筆者も実際に知っている。この第三波は何が違うというと、一生戻らないかもしれない覚悟をした上で、中国が大好きな親を再び黒いゴキブリ(注1)がいない素晴らしい香港に置いていて、若いお子さんを連れて去る家庭は少なくない。第一、二波は将来への未知なる恐怖感だとすれば、今回は足元に近づいてきた具体的な危機だ。欧米諸国は責任(主にイギリス)と人道主義を基づいて、香港人の移民申請を色々条件を下げたりして、寛容に受け入れ態勢を取って頂き、心より感謝申し上げる。一方、教育水準が高い、資金力がある労働力人口が増えるとコロナ禍で衝撃を受けた経済にメリットがある側面も無視できないが、改めて本当に感謝だ。先述の国々は言葉のバリアが低いし、なにより政府は中国という脅威をしっかりと把握でき、自由民主の価値観を守る意思を強く表明した。日本国は、ま、ま。。。

旧宗主国イギリスへの思い
筆者は1999年香港に生まれ(22オ)、主権移行後世代に当てはまる。イギリスについてどのようなお気持ち、思いまた立場を抱えているかというと、マジであまりない。イギリス植民地時代を直接的に体験しなかったので、分からないというか。。。(つまらない答えで申し訳ございません)もちろん街道の名前だったり、自分の中学校(注2)の名前は元香港総督の名前だったりして、イギリスが残った薄い影と無縁でもない。高校時代、家族旅行でヨーロッパ諸国のツアーを参加したことがあり、ロンドン・ヒースロー空港に着陸し、市内観光もした。ファストイメージは街並みがどれも中世映画のような壮大な建物ばかりで、圧倒された光景を眺める途中に、'あ、それ香港のバスじゃん’

(ネット写真、左は香港、右はイギリス。)

画像1

と驚いた経歴も鮮明に記憶に残っていた。あの中華系料理と日本料理少ししか食べない父親が美味しそうにフィッシュ・アンド・チップスを口に運んでいた爽やかな風を吹いていた午後もだ。そして留学先をイギリスにした元クラスメイトや後輩ちゃんがいて、同様に香港に戻る意思はなさそうだ。後は30代以上の方々だと、イングランドサッカー代表を自分のナシュナルチームと認識し応援することが圧倒的に多いこと。英語が苦手な筆者は確かにこれくらい些細なことしか思いつかなかった。

私は故郷を持たずに生まれた、安心に居られる場所が一番の居場所だ(注3)
このセリフは唐代中期の漢詩人白居易(はく きょい)の作品の節録である。彼は物事をありのまま直球スタイルで言うから、ついに上司のパワハラを招き、左遷される時書いた作品だ。最初にこの絶妙な一句と出会うきっかけは香港の長者番付一位李 嘉誠(り かせい)氏が2015年9月開いた記者会見であった。雨傘運動がちょうど一年間を経ち、中国はまだまだ爆発的に発展しまくるという雰囲気の中で、彼は中国での業務をすべて撤退した。タイムマシンでも持っているのかを疑うほど、凄まじい先読み力、ビジネス上絶対的な正しさを誇る、知れば知るほどこのスーパーマン(注4)を感心する。中国系メディアは‘李氏を逃すな!’と焦った発言や批判に対し、中国広東省出身の李氏はこのセリフを返した。中国が比較的に自由、経済発展だけ集中しようとする30年間がまもなく終了し、偽の平和ですら水の泡となる預言とみなされていいだろう。実際も李氏の予告通り、その後大災難が香港に降臨した。このような李氏は2019年のデモにまた絶妙な形で上手いことをした後に(注5)、2020年6月、イギリス政府からの許可が降りて、彼のロンドン不動産プロジェクトを始動した。俺の奴隷たちよ、イギリスに逃げても、中国の手から逃れても無駄だ。(笑)(注6)
このセリフのインパクトは高校2年生の筆者に非常に大きかった。雨傘の失敗によって政治に対する無力感を存分に味わい、将来に彷徨う少年にとどめを刺したような気分だった。今は言うまでもなく無理だが、香港はいつか独立国になってから、帰りたい。しかしながら、この‘帰る’というのは一時的に親友を会うため短期的な旅のような形か、もしくは帰って長期的に暮らすか、正直に答えはまだ見つけていない。最近は将来香港と日本以外の国に暮らすという選択肢も浮上し、学生時代最後の夏休みがおとなしくStay Homeのため暇すぎてよく妄想してしまう筆者だった。とりあえず今は続いて安心に居られる日本にお邪魔させていただくことに、何卒宜しくお願い致します。

残る人達
ご存知のように、2年前最も若いデモ隊は小学生や中学生までいた。彼らにとって、移民という贅沢な選択肢はそもそも存在しない、良くも悪くも高校卒業まで(約6-7年、2026年世界はどうなっている?)南深セン(注7)に生活することになるだろう。また、大学生や社会人になったばっかりの年齢層も、意思があっても経済的に許されない場合はほとんどと考えられる。筆者の知り合いでは、2-3年内準備が整い次第家族で移民するケースもいれば、逃げることは一度でも考えたことがなく、家は香港しかないと明言してくれた友人の方がやや多い。その力強い返事を聞くたびに、なにが故郷のために闘う民主活動家だ、自分の事しか考えていない外国に逃げた弱虫くせに、催涙ガスを吸ったこともなく偉そうなツラをしやがってと思わず自分のことを反省してしまう、ごめんなさい。‛残って一体何ができるかというと、しばらくの間はないかもしれないが、ないかもしれないけど、いざという時、誰が香港を守るんだ。’ただし、納得しなければならないのは、香港現場にいても、海外にいても、どちらも直ちに結果を出せるわけでもない。例え来月中の臨時国会中人権侵害非難決議案ができても、情勢がすぐ良くなると思えない、ミャンマーを見ればわかるもんだ。(注8)子供連れの家庭ならば、洗脳地獄から逃げ出すことは正解にしても、常に残酷な決断に迫られる若者にとって正解はない、無事に生き残るだけで精一杯だ。複雑な思いで、死守を決めた勇者たちは信念を貫こうとしている。死なないでまた会おうよ。

明日への勇気
‘死ぬ前は香港を取り戻した日を見てみたいなー’‘ケンさんはまだ二十代若いから、きっと大丈夫だよ’と優しい日本人支援者からいつもこうやって励まされている情けない筆者である。プーさんは今年で68歳から、彼より長く生きることは間違いないだろうけど、(まさかの死亡フラグ!?)むしろ中共次の国家主席が戦狼をやめ、パンダ外交路線に戻った方が断然に悪夢だ。習近平指導部最近一連の動きがトップスピードで暴走してくれて、(注9)中国の崩壊は一日も早く訪れるように。(合掌)辛いご時世で楽観的なことを軽く言えないが、少しでもウケる話を求めているなら、世界中どこにいても見れる中国のニュースはもはや映画を超えた最高な娯楽となっているので、お勧めする。


1.中国・香港政府、親中派がデモ隊の呼び方
2.香港の中学校と高校は同じ学校で6年間を通うシステム
3.原文:我生本無鄉 心安是歸處 筆者が尽力し訳したもの
4.彼の愛称
5.2019年8月、政府は香港の金持ちを動員し、新聞紙に愛国心を示せ、デモ隊の暴力を反対する広告を投稿しろと命じた。しかし、李氏の広告だけは格が違った。一見は政府寄りの声明文だが、別の解読方式によって、若者たちを許し、香港の自治を続けようと呼びかける意味を含めた。一部の親中派が怒り、李氏のことをゴキブリ王で呼び始めた。
6.香港は家賃が超高いで有名だと思うが、家賃の奴隷――香港人は生涯をかけて支払う家賃の物件は李氏の会社が建設・所有することが多い。つまり李氏は多くの香港人の奴隷主である。
7.香港はもはや中国と変わらぬため、香港人自嘲の言い方
8. ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議案(第二〇四回国会、決議第三号) 日本側は具体的に何を大したことできたわけもなく、ミャンマー側は酷い軍人政治を続き、状況が全く改善されていないまま
9.中国の学校は英語教育をやめたり、塾を強制止めたり、芸能界の粛清など、訳わからない政策が続出中

参考資料
1.【解説】 中国の「香港国家安全維持法」 香港市民が恐れるのは
2.本港年中人口逾739萬
3.白居易
4.李嘉誠
5.下村、高市両氏 秋の臨時国会で対中非難決議を
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?