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豆乳が泡立つのはなんで?

大豆は水と一緒に砕くと、加工時に泡を吹く。
大豆から豆腐を作ったことがある人であれば誰でも経験したことがあるだろう。
この泡が発生する要因は、実は一つの糖類が原因になっている。
糖類シリーズNo.2として、大豆の性質として非常に重要な成分になるので、今日はこれについて解説したい。

何故、泡が発生するのか?

そもそも、石鹸や洗剤はなんで泡つのか?
ペットボトルに水を入れて振っただけでは、泡はすぐになくなってしまうが、洗剤を数滴垂らして振ると、細かく泡立ってなかなか泡は消えない。

・水があまり泡立たない理由
液体の持つ性質として、「表面積をできるだけ小さくしようとする力」=「表面張力」という性質がある。
例えば、机の上に水滴を垂らした場面を想像すると、水はできる限り丸い形を保とうとする。(=表面張力が大きい
反対に、洗剤や油を垂らして場合はどうなるかというと、水のように丸い形にはならず、べちゃっと机の表面に広がるのが想像できるだろう。(=表面張力が小さい

表面張力

このように、水は元の状態に戻ろうとする力が強いので、空気を入れて泡立てようとしても、すぐに元の状態に戻ってしまう。逆に、洗剤を溶かしてあげると、表面張力が弱くなって、水の状態に戻り切れなくて「」として存在することになる。

「じゃあ、油を水に溶かしても同じなのでは?」と思う方もいるかもしれないが、油と水はそのままでは交わることはないので、洗剤のようにはいかない。油が水に浮くのは誰もが見たことがある光景だろう。

水の表面張力を下げる材

油では水を泡立てることができず、洗剤では水の表面張力を下げて泡立てることができる。
この洗剤のような材を、「界面活性剤」という。(=界面活性を持つ物質、ということ)
界面活性剤の大きな特徴は、水と交わりやすい部分と、油と交わりやすい部分の両側面を持つことだ。水に交わりやすい部分を持つので、水にも溶けて泡立たせることができる。
洗剤が油汚れを落とすことができるのも、この二面性を持つことが理由である。

界面活性剤


大豆に含まれる「界面活性作用を持つ物質」とは?

さて、この流れで行くと、大豆にも界面活性を持つ物質があるのでは?という仮説が立ってくる。答えはYes
大豆には、糖類の一種で界面活性を持つ、「サポニン」と呼ばれる物質が含まれている。

サポニンは大豆中に0.2~0.5%含まれており、大豆の胚軸に高濃度で含まれていることが分かっている。(山内、大久保ら、1992)
さらに言うと、サポニンにはAグループ、Bグループ、Eグループ、DDMPグループの4つのグループが存在するのだが、特に不快味の原因になるグループAのサポニンは胚軸にのみ存在することが分かっている。(Shimoyamada et al., 1990)
なので、胚軸を除いてあげるとえぐみの少ない豆乳・豆腐を作ることができるかもしれない。

まとめ

このように、大豆に含まれるサポニンという物質が泡立ちの要因になっていることが、これまでの研究で明らかになっている。大豆加工においてはこの泡がほとんどの場合、邪魔だったりするのだが、人体にとっては良い効能をもたらすことも分かっている。
それについては、またの機会に書こうと思う。
(37週目終わり)

参考文献
山内、大久保ら、大豆の科学、朝倉書店、1992
Shimoyamada, S., et al., Agric., Biol., Chem., 54, 77-81, 1990

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