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「1917」「彼らは生きていた」を見た

タイトル通り、「1917 命をかけた伝令」(原題: 1917)と「彼らは生きていた」(原題: They Shall Not Grow Old)を見た。

どちらも第一次世界大戦のイギリス軍をテーマにした映画で、前者はフィクション、後者は実際のフィルムや写真を基にしたドキュメンタリーだ。

個人的にちょうどミリタリー系のファッションに興味を持ち始めてみた作品だったが、思った以上に心が動かされた。

先に見た「彼らが生きていた」では実際に百年ほど前に撮影されたイギリス軍のドイツ軍との戦闘の際の前線などの風景を編集した内容となっていた。本来は白黒であろう映像は、現代の技術で着色され、より鮮明に百年前の世界を映し出していた。

映画では実際に人や動物の死体が登場するし、戦傷者の様子も様々と映されていた。苦手な人は苦手かもしれない。

個人的に印象に残ったのは、兵士たちの歯だ。総じて汚く、すべての歯が虫歯のような状態が、笑う彼らの口元からのぞいていた。これは、かつてから戦争をテーマにしてきた映画で批判の対象となっていた話題でもある。兵士を演じる俳優たちの歯は当然真っ白で綺麗だ。しかし現実の戦争で、ましてや前線で、歯を磨く余裕などはないのか、あるいはそもそもそこまで歯を磨く文化が薄かったのか、彼らの歯は欠けていたり黒ずんでいたりしているのが常だ。

映像に映る兵士たちは、おそらくカメラが物珍しいのか、レンズに向かって笑顔を向けることが多かった。彼らのその屈託のない笑顔たちは戦場の最前線という緊張感のある土地に似つかわしくなく、どこか違和感があった。

しかしそれは彼らが生きていた証拠なのだろう、と思う。戦地であれどこであれ、現代の我々と同じ人間であり、泣いて笑うことがあり、確かに彼らは生きていた。

次に「1917」である。

こちらも第一次世界大戦のイギリス軍の前線のお話である。ドイツ軍の作戦を最前線に伝えるために奔走する若いイギリス兵たちを描いたフィクション映画である。

見所はやはりそのカメラの動かし方だろう。この映画では最初からほぼ最後まで、撮影がワンカットの長回しであるかのような演出がなされている。あまりにスムーズにカメラが移動し視覚を移していくので、全く違和感はなかった。むしろ、キャラクターの移動の多いこの映画にはぴったりの撮影方法で、非常に効果的であったように思う。難易度は高いだろうが、この手法はもっと使われても面白いと思う。

長回しのワンカットは映像に説得力を持たせていた。この映画はフィクションで、「彼らは生きていた」と比べると当然映像も綺麗で俳優たちの歯は綺麗だった。しかしそれを加味してもなお強く感じさせる「リアル感」は、カメラの工夫や舞台セットの作り込み、俳優の素晴らしい演技、編集のタイム感など、様々な要素が噛み合って生み出されていると思う。

本作はコリンファースやベネディクトカンバーバッチなど、有名俳優もキャスティングされていたが、見終わってエンドロールを見るまで気づかなかった。それほどまでに彼らは軍人に徹していて、また、その役を衣装やメイクがサポートしていた。あの映像の中で、確かに彼らは軍人だった。

戦争を扱った映画といえば「プライベートライアン」などが名作として挙げられる。主演はトムハンクスでマット・デイモンも出演していて、私が生まれる前の映画だ。

「プライベートライアン」は映画史において20世紀最後の戦争映画の名作だと言える。対して、「1917」も21世紀の映画史上でも語り継がれるべき映画だと思う。

戦争を知らない我々の世代において、映像を見たり話を聞く以外に戦争を知る術はない。だからこそ世に発表される戦争作品は慎重に議論されなければいけないが、今回見た「1917」「彼らは生きていた」は、間違いなく未来の戦争の知らない世代にも見てほしい作品だ。

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