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【YouTube】コンセプトメイキング編

私は地元のアーティストの作業風景を配信するYouTubeチャンネル(登録者1.5万人)を運営しています。今回はこのチャンネルのコンセプトができるまでの流れを記事にしていきたいと思います。私の工場がある、愛知県瀬戸市には多くのアーティストや職人がおり、日々ものづくりに励んでいます。この仲間たちの知名度をアップしつつ、自分もカメラマン、チャンネル運営者として報酬を得るWinWinな仕組みがつくれないかと思い、チャンネルを立ち上げました。かなりいギャンブルの要素も多かったのですが、なんとか軌道に載せることができ、チャンネル登録者は1.5万人を超えました!
それでは着想からコンテンツの構成、収益の話などをお話ししていきます。

【目次】

・ニーズの分析

・マーケットの分析

・コンセプトメイキング

・収益構造の再構築

・まとめ

【ニーズの分析】

まず、動画を作る前に主なコンテンツ提供側と視聴者側のニーズを考えてみました。

視聴者目線のニーズ

人が物を買うときに背景にある物語を大切にするようになってきています。安価、品質が高いなど、スペックが高い商品を買う時代から、モノに込められたストーリーに共感して買う時代に入ってきていると感じています。このような変化から視聴者側には下記のようなニーズがあるのではと、仮説を立てました。

ひとつのモノができるまでの工程を知りたい

国内外問わず、手仕事の価値が高まっていると感じます。人間業とは思えないような超絶技巧や途方もない手間をかけてモノができていく様子は見ていて感性を刺激されます。便利で効率的な時代だからこそ、視聴者は愚直なほどに誠実に手間暇をかけるハンドメイド作家に対してある種の「憧れ」があるのかもしれません。
私自身もモノづくりに携わる人間ですので別のジャンルの作家の仕事にはとても興味があります。

ハンドメイド作家の人間性、作っている環境を知りたい

日常生活を送っていて自分の周りで職人に会うことは滅多にないのではないでしょうか。「何を考えているのか?」「どんなところで作っているんだろう?」「どんな生活を送っているのか?」など職人の技術以外の人間性にも興味が湧いて共感を得ることができます。


ハンドメイド作家のニーズ

自分自身がものづくりを生業にしているので作家の気持ちはよくわかっているつもりです。ハンドメイド作家は認知度ゼロの状態からスタートする人が多いです。私も例外ではなくフォロワーは3桁、インスタなどSNSでがんばって投稿しても高評価の数は2桁台。モノを作れる技術を持っていても知ってもらわなければ意味がないと実感しました。動画コンテンツを作る上で作家のニーズを考えてみました。

認知度を上げたい

自分の作品の動画を撮って多くの人に見てもらい、手にとってもらいたい
作家はインスタやフェースブックなどで展示会など頑張って告知をしていますが認知度が少ないので情報が十分に届いていません。

動画を作りたいが、スキルがない

構図を決めてカメラをセットして、作業して、とワンカットずつやっていくとあっという間に1日が終わってしまいます。ひとりで自分の動画を撮ってみてわかったのですが、予想以上に大変でした。また、編集をするのにもある程度のスペックのPCが必要になるし、「音楽は?」「編集ソフトは?」などわからないことだらけです。元々ものづくりがしたくてハンドメイド作家になった訳なので撮影のスキルをもっている人材はほとんどいませんでした。ひとりでこの作業をこなすのは無理ゲーだと感じました。

なるべく費用を抑えたい

アルバイトをしながら職人(作家)をしている人も多く、宣伝費用を捻出するのはたいへんです。動画をカメラマンに外注して撮ってもらうと10万以上かかります。費用対効果を考えてこの費用を払える作家はなかなかいないと思いました。


正直、ひとり作家をやってると使えるお金が非常に少ないです。作るのに必死でなかなかソフトの使い方を覚えたり勉強したりする時間が取れない人が多いと思います。

【競合を分析する】

テレビ、YouTubeなど問わず、職人やハンドメイド作家が主役のコンテンツを分析しました。

プロフェッショナル 仕事の流儀

テーマごとに1時間をかけて一人の人を深く掘り下げるドキメンタリー番組。
番組の中に起承転結の構造ができている。
序盤 人や作品の紹介
中盤 新しい挑戦、過去の挫折、人間味
終盤 問題解決、新境地、信念。

NHKのプロのカメラマンが撮影。
ドキュメンタリーになっており、取材された人がすごく見える。
職人の人間性なども感じられるカットも入っており、親近感が湧く。

イッピン

地域のモノづくりを紹介、作家の作品の特徴をメインに伝える番組。30分。一件につき10分くらいで3人ほど紹介。NHKのプロのカメラマンが撮影。

モノづくりの現場が見れて勉強になる
出演した作家によると番組の放映時は一時的に注文が増えるが、持続しないそう。

NHKワールドオンライン

NHK日本に住む外国人向けの多言語放送。
ニュース、文化(衣食住)、趣味、旅行などがメインのコンテンツ。

伝統工芸品の紹介が日本の地上波NHKの番組に比べて非常に多いことに気付く。外国人は日本のものづくりへの関心が高いのではという仮説。

Youtube : 青山スクエア

東京、青山にある日本全国の伝統工芸品を販売する外国人向けのショップが運営するYouTubeチャンネル。チャンネル登録者11万人。3-5分程度の動画で取り扱いのある商品の製造工程と商品を紹介。映像が美しく、プロクオリティー。コメント蘭に英語が多いことから視聴者の多くが外国人であると思われる。

YouTube上でも職人の作業風景の動画はニーズがあることがわかった。海外の方の方がニーズがありそう。YouTubeの伝統工芸ジャンルはニーズの多さに対してまだまだコンテンツが不足しており、未開拓で参入者が少ない印象を受けた。


Youtube : Ishitani Furniture

長野県にある手作り家具工房のYouTubeチャンネル。チャンネル登録者40万人。10分程度の動画で家具の制作風景、商品を紹介。森に囲まれたような環境で憧れを感じる。コメント蘭に英語が多いことから視聴者の多くが外国人であると思われる。

間に入る犬を散歩するシーン、薪ストーブに薪を入れるシーンなど雰囲気が伝わる動画になっている。動画はプロクオリティーではないが、作業の音なども入っており、見ていて心地よいリズムでずっと見ていられる。私は家具屋なので技術が高いことも見ればわかるし、手で作ることにこだわった誠実なものづくりをしている点もとてもよいと思う。

【コンテンツの方向性】

他の動画メディアの分析結果から、グローバルな市場に向けて、伝統工芸ものづくりというニッチなジャンルで勝負するコンテンツを作るチャンネルにすることにしました。また、地域発信型は撮影する私自身が足らないカットをちょこっと撮ったり、移動のフットワークが軽くできるので楽でコストもかかりません。

地域発信型ものづくりチャンネル

参入者が少ないブルーオーシャンで勝負。地域の作家の手仕事を紹介発信する専門チャンネル。

ドキュメンタリー風

NHKプロフェッショナルを意識。
作品、周辺の環境、パーソナリティー、信念などが伝わるコンテンツ。

工程を丁寧に描く

モノができるまでの工程を丁寧に追い魅力を伝える。
「知らない世界を知ることができる」知的好奇心を満たすコンテンツにする。

パーソナリティーを伝える

「誰が作っているか」が大事。ものづくりの様子だけでなく、趣味やオフショットなど取り入れて職人に親近感を持てるようにすることでモノのストーリーを強くする。

ノンバーバル(非言語)

青山スクエアの分析から工芸品は外国人のニーズがあることがわかったのでなるべく文字やセリフではなく、映像のみで伝わる作品に。
また、タイトルや説明蘭は日本語と英語を併記する。

異業種で構成

地域で活動する職人であれば素材や職種などジャンルを問わずに撮影する。視聴者に新しい発見をしてもらえるコンテンツに。

美しい映像

一眼レフを駆使して、背景をボカすなどシネマタッチな映像を撮る。

編集は最小限

時短を意識して編集しなくても仕上がるように一眼レフできれいに映像を撮る。カットやエフェクトは最小限。編集ソフトはiMovieで十分。

【収益構造を考える】

ハンドメイド作家は認知度アップをコストをかけずに行いたいがプロのカメラマンに頼む場合は技術料が必要です。この費用を出せる作家は少ないのでお金の流れを再構築する必要がありそうです。そこで私が考えたのは下記のような仕組みです。

従来型の仕組み

コンテンツ著作権 カメラマン→作家
告知、利用 作家

報酬 カメラマン←作家

職人は動画を作ってもらい、その動画を自分のHPやイベントで流したりなどで宣伝する仕組みでした。
撮影費用が高額で作家は躊躇するでしょう。

再構築した仕組み

コンテンツ著作権 カメラマン( YouTubeチャンネル運営 )←作家
告知、利用 カメラマン( YouTubeチャンネル運営 )

報酬 カメラマン( YouTubeチャンネル運営 )←広告主

カメラマンがYouTubeチャンネル運営を兼任することで広告主からGoogleに支払われる収益の一部を受け取る構造を考えました。いわゆるひとりテレビ局です。YouTubeでは一定の条件を満たせば収益を受け取ることができます。これにより、ハンドメイド作家は動画を無料で撮れる構造になります。広告主、カメラマン(チャンネル運営)、作家のWinWinな関係を作ることができそうです。また、視聴者が飽きないチャンネルにするためにひとりの動画何本も撮るのではなく、地域の作家の動画コンテンツを集めたチャンネルにすることにしました。

メリット
【ハンドメイド作家】
・無料で動画コンテンツが作れる。
・自身のHPなどにYouTubeのリンクを貼り、商品の魅力を伝えやすくなる。
・YouTube上の動画でグローバルマーケットにリーチすることができる。
【カメラマン(チャンネル運営者)】
・チャンネル運営で得た収益を受け取ることができ、場合によっては作家から直接  もらうよりより多くの報酬に変えることができる。
・コンテンツの著作権を持っているのでコンテンツを資産として永久に利用できる。
・報酬を受け取っていないため、自由に構成でき、作家の要望に振り回されず、クオリティーを求められないので気が楽。
・視聴回数が自分の報酬に直結するので、多くの人に見てもらえるように必死で工 夫する。
・ハンドメイド作家からなぜか感謝される。

デメリット
【ハンドメイド作家】
・デメリットはほぼなし。
・技術がグローバルに流出する?

【カメラマン(チャンネル運営者)】
・YouTubeで再生回数が少なかった場合、収益が入らず、報酬を得られなくなる

私の場合、別で事業を持っているのでデメリットは感じませんでした。それよりも自分の周りの手づくり作家が知名度が上がり、売り上げが立つようになってくれる方がはるかにメリットが大きいと感じました。実は私は遊びでしか動画を撮った経験はなく、素人に毛が生えた程度の腕だったのでそもそもプロとして報酬をもらえるレベルではないと自覚がありました。無料であれば、クオリティーや動画の構成など、気にせず自由に撮ることができるなと考えた訳です。
1年後にはプロがどんどん入ってきて太刀打ちができない状況も予想できたので「早く始める!」というのが一番重視したことで着想してすぐに撮影に取り掛かりました。仮にうまく行った場合は動画は半永久に再生されるため、ひとつひとつが資産に変わります。肌感覚で根拠のない自信があったのでおもいきってチャレンジできました。

【まとめ】

ニーズを考える
視聴者、職人のニーズを分析しました。

マーケットを分析する
伝統工芸メディアの徹底的に研究しました。

コンセプトメイキング
グローバルでニッチなドキメンタリー風なコンテンツを作る方向性にしました。

マネタイズポイントをズラす
広告主からカメラマンが報酬を得る仕組みにすることで作家は無料動画を撮れてハッピー。全員がWinWinな関係になりました。

このやり方は広告収入があること前提に設計されていますので、初期の戦略が非常に大事になります。一度軌道にのれば自動操縦モードになり、不動産のように動画が資産に変わります。どのようにYouTubeチャンネルの認知度を上げていったかは別で記事を作る予定です。楽しみにしていてくださいね。

では、また。

運営チャンネル


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