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ミュージカル『マリー・アントワネット』観劇感想(3/6 17時公演)

すごく良かった〜!かつてないほど良い席(一階席最前ブロック)のせいかもしれんけど、内容も歌も役者さんも素晴らしいミュージカルだった!
マリー目線じゃなくマルグリット目線だと「因果は回る」なので面白い。後半の方が面白いと感じる舞台初めてだ…
以下感想の雑文。キャストに関するものもあれば役に関するものも。


マリー・アントワネット

可憐で可愛い(あと歌い方で宝塚出身かと勘違いした)少し繊細な歌い方をする。…フェルゼンに合わせてる?可愛い可愛いおとぎ話のお姫様。現実に存在する王妃様ではなく。

ラスト合唱とカテコ、マリーとマルグリットが手を繋いでいただけで泣いてしまった…本編で見れなかった、最後は通じ合った友人の二人…

前半は夫と子を持つ身でありながら夢見がちにフェルゼンに恋愛するぽややん女だった。農園風の箱庭を作って、フェルゼンへ「側近になってくださらない?これでずっと一緒にいれるわ」なんて頭お花畑発言をする場面によく表れてる。フェルゼンはずっと革命の警告をしているのに今それを言う?

後半は残酷な運命に終始嬲られていた。温室育ちのお姫様。次第に厳しい現実に打ちのめされ、愛する夫も友人も息子も失い、白髪になってしまうのがおいたわしい…。「なんで私がこんな目に」と、ひたすら運命に問いかけていた。
実際この人からしたら普通に暮らしていただけで、贅沢は王侯貴族の特権だった。司祭を処罰するのも権力を持つ王族なら当然の権利だった。…ただ時代が移り、すでに民衆が主役の時代になっただけで。時代に取り残され、その被害を受けた人。

美貌は衰えやつれても、彼女の死を望む怨嗟の渦中にあっても、裁判のシーンで凛と王族らしく振る舞う姿に、あぁこの人は環境がどうとか関係なく「王妃 マリー・アントワネット」なのだと…。(後述するがマルグリットもそれを理解したから後悔したんだろうな。)


マルグリット

小柄なのに勝ち気な性格と生命力を発散してる。ダブルヒロイン両方とも可愛い〜

マルグリットは社会の最底辺で貧困に喘ぐ自分と優雅に宮廷という夢の世界で戯れるマリーを比較してマリーに嫉妬し、彼女を陥れる策に参加するも、逮捕された彼女に情を抱いていく描写が丁寧だった…

マルグリットとマリーは互いに「貴方には私を理解できない」と歌う関係性から、次第に相手を自分に近い存在として認識する友情?に変わるのが良いね(特にマルグリット側)

マリーをずっと嫉妬してのほほん夢幻に生きる彼女を憎み続け、彼女を貶める作戦にもヴェルサイユ行進にも積極的に参加した。侍女になりスパイをやろうと「情が移るわけ無い」と断言するほど。
なのに同じ子守唄を知っていた事やマリーの父が死んだ年にマルグリットの父からの仕送りが止まった偶然の一致から、二人は異母姉妹だと判明する。
その程度じゃマルグリットの憎しみは消えないけれど、父と子と引き裂かれる苦しみに泣くマリー、誠実なフェルゼン、「獣」と呼ばれてもおかしくない狂気の振る舞いをする民衆それぞれの姿を見てマリー側に思いが傾いたんだろうね…。
裁判では始め、マリーと民衆の間に揺れていたマルグリット。ただかつての仲間達が彼女話を聞かず毅然とした態度を崩さないマリーを比較して、マルグリットはマリーを選らんだ。それでも民衆は許さず、マリーを穢らわしいスキャンダルで貶め…結局マリーは死刑になる。
ただこの、嘘偽りのスキャンダルでマリーを貶め馬鹿にしていたのは過去のマルグリットも同じ。むしろマルグリットが宝石事件を起こしヴェルサイユ行進を先導したからマリーはこの窮地に陥った。突き詰めればマルグリット自身がマリーを幸福の絶頂から絶望へ叩き落としたんだ。
同じMAのイニシャルを持ち同じ父親を持つ同年代の女性のこの二人。対称的な人生を送らざるをえなかったこの二人…。マルグリットの貧困は誰のせいでもない(勿論民の貧困を無視し享楽にふけった王侯貴族の責任であるが)が、マリーの不幸はマルグリット自身が悪意から招いたもの。

マルグリット目線だと因果が最悪の形で巡ってきて、マリー処刑後は自身の過去の所業を後悔しているんだろうなと。脱力して何もできない何も歌えないシーンが挿入ってる。(フェルゼンが「死んでしまった…」と歌う場面)

マルグリットはマリーへの後悔、懺悔を感じているからこそ、かつての仲間達(オルレアン公と詩人)を告発したんだろう。少し前まで穢らわしいスキャンダルでマリーを貶める手伝いをしていたマルグリットが同じ仲間を告発するなんて!第三者目線では滑稽でしかないけれど。

このミュージカルは「目には目を、なんて暴力の報復の繰り返しじゃ平和は来ない」とありふれた月並みな結論を出すが、因果を悔やむマルグリット目線だと説得力たっぷり

今回の舞台で総合的に一番良かったマルグリットの人、小柄な身体を十二分に活かして、迸る生命力を見せたり縮こまって哀愁を誘ったり、歌唱も演技も魅せる役者だった。

真夏の夜の仮面舞踏会は可憐な妖精に見えてお気に入りです。ふりふりの白いドレス。

フェルゼン

役者さんは周りと比べると技術劣るしどう思われてるんだろ…(私はこの人を見に来たのだが…)と心配していた。同じ回を見に来ていた友人曰く、「若手だし大したことないと思ってたら予想より上手いし頑張ってるしずっと応援してたわ」と近くの人が褒めていたらしい。ホッ…。私も同感です〜!

今更だが『ベルばら』でも何でもフェルゼンが人気キャラな理由を理解した
愛する人(マリー)を「これ以上秘密の恋人なんてできない」と突き放せるし何度も彼女達家族を逃亡させようと助けてくれるしマルグリットにも優しいし…
(秘密の恋人になるのを拒絶する割に、マリーと密会する度抱き締めてるし愛を見せるし、マリーへの恋愛は変わらないんだな…)
前半フェルゼンがマルグリットを逮捕から救ったおかげで、後半処刑前のマリーとフェルゼンは再会できたのか。善行の因果もここで巡っている。
マリーを愛しマルグリットを気に掛ける、美味しい立ち位置。

今回のフェルゼン役の役者さんを応援してるので、元々興味あったロミジュリはこの方主役の方で抽選申し込みした。当たれ〜
確かミュージカル出演歴まだ二回目か三回目程度じゃない? デスミュ→マリー・アントワネット→ロミジュリ。頑張って欲しい!これからもっと歌上手くなると期待してます!


オルレアン公

周りより声量大きすぎて合唱の時声量抑えてるの笑っちゃう…

役者さんの声量がハンパないことばかりに気が行ってしまうオルレアン公、めっちゃ楽しそうに悪役ムーブしてんので笑顔で眺めてた☺普通に外道。
最後はマルグリットに裏切られて因果応報した。

声量も歌唱力も個人的にはこの舞台随一だった めっちゃ良い席で聞けてよかったな…
この方のソロ歌唱後、カーテンコールで誰よりも拍手が大きかったのが面白ポイント。(カテコは流石にダブル主演の方が拍手されてたが、劇中のソロは確実に)


ルイ十六世

マリー・アントワネットの理解者。夫というより保護者か兄。フェルゼンとの仲も公認するし何なら応援してる?(側近になることを許可したのは陛下なので)
「僕が鍛冶屋ならば〜」と死ぬまでずっと歌っていたこの人も、マリーと同じく温室育ちで現実が見えていなかったのだろう。

自分が改良したギロチンで命を落とす皮肉。

オルレアン公ほどソロ歌唱が無かったが、今回の舞台の中で抜群の歌で魅せてくれた人の一人。


ジャック・エベール

オルレアン公とともにマルグリットを利用し、最後は因果応報で逮捕された人。
ただしオルレアン公より下種。マリーを陥れるネタも下種が好きそうなスキャンダル。
歌の才を見出したからと、マルグリットを自分の女認定しててキモいな〜〜〜!

ローズ・ベルタン&レオナール

詳しくは漫画『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』を読んでくれ。この漫画を以前読んでいたために二人への愛着が強かった。二人がまだ無名だった頃を描いている漫画。

この舞台だと、二人は悪人でもなければ善人でもない。権力におもねるが完全な下種でも無いキャラクター。
王室御用達なのに「貴族は後払いと言って代金を支払わない!おかげで破産寸前!」と嘆いていたシーンの影響。この歌詞のおかげで単なる下種でなくなった。


ランバル公爵夫人

こちらが宝塚出身の女優さん。少し癖はあるが品を持ち鈴を転がすような声音は、控え目でマリーの友人として最適だった。

子ども達をずっと可愛がり宥めている様は本当の母親のよう…。フェルゼンを前に少女と化しているマリーと対比的だった、特に田園風の箱庭のシーンは。

彼女だけでも助かるのかと思いきや、その辺の路上で裁判もなく首を切り落とされ、首を槍の先端に括り付けて街を練り歩く民衆により死を辱められた。この人に罪はないのに…


最後に

思い入れが強過ぎる16年宙組『エリザベート』並ではないにしてもその次に、良い席で見てよかった舞台だ…この人生で出会えてよかった…
めっちゃ語ってしまうけど、最近は何を見ても心が動くことが無く「エンタメに慣れてしまったのかな」と悲観していたが、単に質の良い物に出会えてなかっただけか…………


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