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仕事のミスで部下が泣いた時に言いたいこと

部下に仕事のミスなどを言及すると、泣いてしまうことがある。

僕は怒ったり怒鳴ったりすることはしていないつもりだが、それでもプライドが傷つけば涙を流してしまうのは仕方がない。
泣くのはただの生理現象であり、本人の理性がわざとやっているわけではないだろうから、そのことを責めたり追及したりしても意味がない。
人によって涙もろさも違うわけだし。「何泣いてんの?」などと言うのは論外である。

とはいっても、そのままでは効率よく議論を進めることができなくなるので、何か対処法が必要だ。

誰もが経験があるだろうが、泣いているときは呼吸が苦しくなるし、胸が痛いし、視界も悪いし、自分が情けない気持ちで脳内が充満する。
そのような状態では、普通に会話するのは難しい。ましてや、仕事の話は難易度が高い。

少し涙がにじむ程度であればまだマシかもしれないが、顔を真っ赤にして嗚咽を漏らしながら泣いている場合は、もはや話にならないと思う。

そんな状態で強引に会話をしても、部下は「すみません...」としか言わないし、「やってしまった。次は気を付けよう」ということで頭がいっぱいかもしれない。これでは、ほとんど解決にならない。

なぜなら、「気を付けます」というのは、「私が気を抜けば、また同じミスが起こります」ということだからである。
理想の解決策は、多少気を抜いた状態でもミスが起こらないような仕組みを作ること。それができなければ、強制的に気を引き締めるような仕組みを作ることだ。

話し合うために、冷静に議論できる状態になってもらわなければならない。
僕がやっているのは、仕事のミスが誰かのせいではなく、ただの事象として発生したものだと言い聞かせることだ。

泣いている時はプライドが傷ついているので、それを癒す必要がある。そうしなければ、「私が悪かったです。悔しいです」という考えにしか至らない。
そこでこう言う。「今回の件はあなたが悪いんじゃなくて、ただそういう【現象】が発生しただけなんだ」と。
だから、同じ現象を起こさないように、我々で協力してコントロールしていこうじゃないかと提案する。

失敗を起こした部下の意見は参考になる。顧客が起こした事故が結果的により安全な商品へと改善されていくように、未熟なワーカーが起こしたミスは業務を改善するチャンスである。

ぜひ詳しく意見を聞きたい。そのためには、冷静になってもらわないといけないのと、無意味にプライドを傷つけるのをやめてもらわないといけない。
冷静になった暁には、自分が失敗したときの状況を思い出し、客観的な視点から分析してもらわないといけないのだ。

業務内容が難しかったのか? 
わかりにくかったのか?
間違えやすい部分があったのか?
体調が悪かったのか?
気の緩みがあったのか?

僕としては、ひたすら謝るのではなく、こんな意見を言ってもらいたい。
「私、あの時つい業務と関係ないこと考えちゃって気を抜いていたんですよね。だから、○と△を取り間違えちゃって。〇と△の部分って似ていて間違えやすいと思っていたんです。そこを改善したら良いと思います」
生意気に思うかもしれないが、求めるべき意見は本来こういうものであるはずだ。

単純に「仕事に集中していなかっただけ」というミスでも改善策はある。
多少気を抜いてもミスしないようにする仕組みが欲しい。それが難しければ、「つい気を抜いてしまう」などということが無いように、注意喚起を促す貼り紙とか、チェックリストを作るとか、何かしら考えることができる。
PCであれば、おかしなところがあればエラーやアラートを出したり、表示を分かりやすくするなどプログラムを作ることもできるかもしれない。

これは、道路を作るときと同じである。
とある場所で交通事故が多発したときに、事故を起こした人に「気をつけなさい」と叱って罰則を与えて終わりではない。
たとえ、ドライバーが100%悪かったとしても、注意喚起の標識を立てたり、道路の形を変えたり、見晴らしを変えたりして、道路側でも事故の発生率を上げるための工夫をするだろう。

規模は違うが、自分の仕事でもそのように考えていきたい。
そうすることで、取返しのつかないような大事故も、ヒヤリハットの段階で防ぐことができるはずである。

失敗しても、自信を失わないでもらいたい。そして、自分が犯したミスをあたかも他人が起こしたかのように、第三者の視点にたって分析してもらいたい。やってほしいのは「反省」よりも「改善」である。

どうせ「反省」は、時間が風化させてしまう。
しかし「改善」は、たとえ人が変わっても残り続ける。

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