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須恵器・土器を愉しむ【三鷹の縄文 さわれる展示(東京都三鷹市役所)感想】自然光で観る縄文土器の美しさ

 「須恵器・土器を愉しむ」では、個人的関心事の須恵器・土師器を中心に「考古・郷土全般」に関する都内および近郊の展示に関する感想・情報を綴っていきます。施設側の情報発信が少なく「どこに何が展示されているのか分からない」ことも多いので、参考にしていただければ幸いです。
 今回の展示のポイントは次の3点。
 ■自然光で浮かび上がる繊細な装飾
 ■縄文土器に「触れる」「持てる」展示
 ■オリジナルの良さが映える復元

【自然光のもとで見る縄文土器は見ている時間だけ発見がある】
 三鷹市役所1回ロビーのオープンなスペースに10数個の縄文土器を展示した「三鷹の縄文 さわれる展示」。2018年11月16日(火)13時までの展示にぎりぎり間に合う。告知が少なく、他市区の考古展示でチラシを見ることもなかった。それでも同様に展示目的て訪れた人が数人。他に、市役所利用のついでに立ち寄る人が多くいた。

 三鷹市では、考古史料を常設で展示・公開する施設がないため、年に1回程度、こうした企画を行っているとのこと。
 今回は、初展示や修復完成一歩手前の縄文土器も展示されている。今夏、トーハク「縄文展」を始めさまざまな自治体博物館・資料館の縄文土器を数多く見る機会を得たが、ここに並ぶ土器はどれも技巧が繊細で見応えがある。
 その魅力を引き出しているのが、自然光のもとで間近に観察できることだ。
 土器が作られた時、もちろん電気的な発光照明はなく、太陽の光や炎の揺らぎの中で、制作も使用もなされたわけで、自然光のもとで「見られる・触れられる・近づける」のすべて体験できるのはとても貴重なことだ。

 土器をさまざまな角度や距離で見ている間にも、刻々と変わる、陽射しの傾きや日照の強弱によって文様の陰影が違って見える。その度に印象も解釈も変わって行き、新たな発見があるので見ていて飽きる事が無い。

【ヘラ使いの繊細さ・磨きのなめらかさ・重さ軽さを体感する】
 今回の展示はタイトル通り縄文土器に直接「触れる」ことができる。最近では、土器片に触れることができる展示が増えているが、修復後の土器はほとんどの場合、ガラス越しだ。多摩センター駅の東京都埋蔵物センターでは、一部縄文土器に触れることはできるが、照明のもとでの観察になる。

 上の写真のように表面を指で触ると「文様」も見た目だけではない意味を感じることができる。加曽利式の櫛状のヘラ書き文様の美しさは、均質な力加減でていねいに付けられている。
 造り手が1手1手、どんな力加減で作業したかをイメージできる。

 こちらの3点は「持ち上げる」こともできる。右端の小型土器はずっしりと重く、左端の称名寺式土器は薄く、大きさから受ける印象よりかなり軽い。

 縄文土器なので文様の方に目が行きがちだが、自然光で観るとていねいな「磨き」も印象に残る。なめらかな表面こそが「うねり」の躍動感を生んでいることが分かる。

【オリジナルの良さが引き立つ修復】
 縄文土器や土偶の修復物は、高度にオリジナル同様に再現され、どこがオリジナルでどこが修復か分からない物もある。暗い照明の中での展示をじーっと眺めてたら、実はその部分は再現された部分だったということm多い。

 本展示では、ていねいな修復でありつつ、オリジナル部分との差別化がなされ、「違い」が全体の違和感にならない程度に分かる様に仕上げられている。それがオリジナルの技巧の素晴らしを再確認させる。多摩地区の他の土器より几帳面な文様や表面の磨きに感じたが、それは修復技術が引き出した魅力かもしれない。

現在の井の頭公園の池周辺は、石器から江戸期までの生活が継続的に続いていて、各時代の考古史料も多いようだ。
 武蔵野市でも武蔵境駅もよりの武蔵野ふるさと歴史館に展示がある(下の写真)。

 多くは、江戸東京たてもの園の前身である武蔵野博物館に収蔵されていたようだ。江戸東京たてもの園では、2019年(平成31)2月5日(火)~5月12日(日)に「武蔵野の歴史と考古学 -江戸東京たてもの園収蔵品展-」が予定されているので期待したい。

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フリーランスの編集・ライターとして活動しています。編集・ライター作品紹介webサイト「神楽出版企画」(企画から制作進行・執筆までワンストップ対応)
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須恵器・土器・考古・郷土史等々に関し、都内近郊の博物・資料館・展示の情報を整理記録がてらアップしていく予定です。