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ぼくのにっきちょう その3

◯がつ◯にち くもり

きょう、ぼくはゆきえちゃんちにあそびにいきました。

いえにつくと、「いいとこにきた!」と、ゆきえちゃんがにこにこえがおでむかえてくれました。
「どうしたの?」
「これからおひるごはんたべにいこうよ!」
ゆきえちゃんはやけにたのしそうです。でもぼくは、うーん、とてをもじもじさせました。
「ごはんといっても、ぼく、ぜんぜんおかね、もってないよ。おこづかい、つかっちゃったし……」
しゃつやずぼんのぽっけをさがしましたが、やはりおかねはありません。ほんとはずぼんのぽっけにひゃくえんだまがありますが、これはつかえません。がりがりくんついったーあじをかうためのおかねなのです。ちなみについったーあじはまだみつかりません。

「ふっふーん、それならしんぱいいらないよ」
ゆきえちゃんはにやりとわらいました。ぼくはちょっとびくっとしました。ゆきえちゃんがこんなふうにわらうと、たいていろくなことがないからです。
「どういうこと?」
「これをみよー!」
ゆきえちゃんはむねのぽっけから、なにかをとりだしました。するととたんにあたりがぱーっとひかりかがやきました。あまりにまぶしくて、ぼくはうわっ、と、かおをそむけました。すこしずつまえをむくと、おもわずさけびました。
「そ、それはっ!」
なんと、ゆきえちゃんのてには、はっぴゃくおくまんえんさつがにぎられていたのです!

はっぴゃくおくまんえんさつは、にほんでいちばんこうかなおかねです。いちぶのふゆーそーしかもってないといわれています。ぼくもみたのはとうぜんはじめてでした。
「どうだ!!」
「こ、これが、はっぴゃくおくまんえんさつ……でも、これ、どうしたの?」
「あのね、のーとにがんばってにっきかいたら、みんながすごいね、よかったよっていって、おかねをくれたの。さぽーとっていうんだけど、それがこんなにいっぱいたまったんだ、すごいでしょ」
ゆきえちゃんは、えっへん、とむねをはりました。えっへん、と、ほんとにいうひとを、はじめてみました。


「のーとににっきかくと、みんなからおかねがもらえるの?」
ぼくはくびをひねり、てーぶるにあったゆきえちゃんののーとをひらきました。
「あれ?でもなんもかいてないよ」
「そののーとじゃないの!うーん、わかんないか、まあいいや、とにかくこれでごはんいこう。おごってあげるからさ」
はっぴゃくおくまんえんさつをぽっけにしまうと、ゆきえちゃんはさっさとでかけました。ぼくはあわててついていきました。

「で、なにたべにいくの?」
「もちろん、やまがためいぶつ、ひらたぼくじょうきんかとんのとんかつだよ!たべたことある?すっごいおいしいんだから。ぶたみちゃんもさそったんだけど、なんかたべられない、そんなひどいことできないって。ずいぶんかなしそうなひとみしてたなあ。なんでだろ?」
そ、そりゃ、そうだろうね、とおもいましたが、ぼくはなにもいいませんでした。

やがて、ひらたぼくじょうけいえいのとんかつやさんにつきました。おみせはすごいこんでます。
はいれるのかな。ふあんになっていると、てんいんさんがやってきました。ゆきえちゃんは「とんかつたべにきたよ、ふたりね」とぴーすしました。
「すみません、いまあいにくまんせきでして。それにおこさまだけですと、ちょっと……」
てんいんさんはすこしばかにしたようにいいました。ぼくはちょっとむっとしましたが、ゆきえちゃんはにやりとわらい、ぽっけにてをいれました。
「これをみよー!」
あたりがぱーっとひかりかがやきました。てんいんさんは「ああ!それは!?」と、びっくりしてはっぴゃくおくまんえんさつをまぶしそうにみました。


そして、てんいんさんはぺこぺことゆきえちゃんにおじぎすると、あわてててんちょうさんをよびにいきました。てんちょうさんは、やはりぺこぺことあたまをさげました。
「も、もうしわけありません、おきゃくさま!たいへんしつれいいたしました。さ、こちらです、どうぞ、おい、こちらのかたをびっぷしつへごあんないしろ!」
えっへん、とむねをはりながら、ゆきえちゃんはみせにはいっていきました。ぼくはぺこぺこしながらついていきました。
びっぷしつはてんじょうもかべもゆかも、ぜんぶきんぴかにひかっていました。めがちかちかします。

「おきゃくさま、なにをめしあがりますか?」
「もちろん、さいこうきゅうのとんかつていしょく!ごはんおおもりでね!」
ゆきえちゃんがおーだーすると、てんいんさんは、ははぁー、とおじぎし、へやをでていきました。なんかじだいげきみたいです。
「すごいへやだね」
「はっぴゃくおくまんえんのちからだね、はっはっは」
ゆきえちゃんはふんぞりかえりなが、おちゃをのみました。あくだいかんのようでした。
まっているあいだ、てんいんさんが、ゆきえちゃんやぼくのかたをもんでくれました。さーびすです、と、こーらまでくれました。わお、すごい。

そしてついに、ひらたぼくじょうきんかとんの、さいこうきゅうとんかつていしょくがきました。へやにまけないくらい、ひかっていました。
「いただきます!」
「いただきます!」
さく。ひとくちたべて、ぼくは「うわっ!なにこれ!」とさけびました。とろけるようなあまいあぶらと、しっかりしたはざわりのおにく。あまりのおいしさにきをうしないそうになりました。たべるのがもったいないくらいです。
でも、ゆきえちゃんはぱくぱくと、いきおいよくとんかつをたべていました。なんかもったいない、とおもっていたら、「とんかつ、たべほうだいだよ」と、ゆきえちゃんはにやりとわらいました。
わ、これもはっぴゃくおくまんえんのちからか。

けっきょくぼくはとんかつにまい、ゆきえちゃんはよんまいたべました。うーい。ゆきえちゃんのおなかはぽんぽこりんです。
「じゃ、これでたのむね」
かいけいでゆきえちゃんがはっぴゃくおくまんえんさつをだすと、てんいんさんは、ははぁー、とうけとり、ばーこーどりーだーをぴっとあて、またゆきえちゃんにかえしました。
「え、これでいいの?」
「そ、すごいでしょ」
はあ、こんなふうにつかえるのか。さすが。

ゆきえちゃんちにもどると、ぶたみちゃんはぶたのままねっころがっていました。
「まだふくれてるの?へんなの」
ゆきえちゃんはほっぺたをふくらませたあと、あくびをしました。そしてぶたによりかかって、ぐーぐーとねちゃいました。しかたなく、ぼくはいえにかえりました。

いえにつくと、おかあさんにきょうのことをはなしました。おかあさんは「たいへん!おかあさん、ちょっとゆきえちゃんとこいってくるから、おるすばんたのむわね!」と、でかけてしまいました。はっぴゃくおくまんえん、はっぴゃくおくまんえん、と、ぶつぶついいながら。ちょっとこわかったです。

おるすばんかあ、つまんないなあ。なにしようかとうろうろしていると、つくえにあるのーとにきづきました。そういえばゆきえちゃん、のーとににっきかいて、はっぴゃくおくまんえんもらったんだっけ。ぼくももらえるのかな。そうおもい、さっきからきょうのことをこうしてのーとにかいてますが、どこからもおかねはきません。あれえ。

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