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VOCALOID5の良いところ悪いところを具体的に挙げてみる

最初に言っておきますが、僕自身は5の方針そのものは肯定派です。

よく「お値段が高い」とやいのやいの言われがちなVOCALOID5。
よく「使いにくい」とやいのやいの言われがちなVOCALOID5。

お値段は別として、意外とVOCALOID5に関しては「具体的にどこが良い/悪い」をちゃんとまとめた記事が少ない印象なので、いい機会なので自分なりに書いてみます。

まず、良い点から。

◾️再生時のラグがない

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ボカロエディタは古今東西色々な種類ありますが、「再生ボタンを叩いた瞬間に再生が始まる」エディタはコレだけです。
他のエディタはおしなべて再生ボタンの押下から0.5秒程度のラグが発生します。

3万円払う価値があるかは別として、僕としてはこれだけで5を入れた価値はあると感じます。

◾️Attack Release Effectは相性が合えば使いやすい

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VOCALOID5の新機能「Attack/Release Effect」(言いづらい。
これが、個人的にはVOCALOID5の大本命
使いでがあって好きです。

例えば鳴花ヒメ・ミコトのAttack Release Effectの中に「Tone」と名の付くものがあるんですが、

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コレを普通に1ノートにかけると

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こんな感じで正直「よく分からん」なんです。
でも、これをメロディ全体に一括適用すると、

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こんな感じで、全体を通してピッチに不規則な変化が起きます。
再生してみると、一本調子なボカロが、これ一発ですごく人間臭くなります。
まっすぐ歌う「ボカロっぽい」歌声に、お手軽に人間らしい「癖」が付与できるので、ボカロ曲を作る際には重宝するテクニックです。

※この鳴花ヒメ・ミコト専用Attack/Release Effect、適用してから他のキャラに切り替えると、ピッチ情報は維持してくれるので、他のボカロにも適用可能です

ちなみに、Attack/Release Effectはどうも発音タイミングも微妙に変化するようで、このToneを全体適用したメロディを重ねると、同じメロディラインを鳴らしてても綺麗なユニゾンをします。

「ユニゾンなんてデュエットしなきゃ使い道ないだろ」って人は音楽を知らない。
1人でユニゾンも普通にあります(具体的にはハモをダブルにするとか)。

人間だったら、ハモを広げたいときは2テイク取って左右に振れば解決ですが、ボカロの場合はそうもいかない(普通にやると、全く同じ波形が生成されるので、ただ音量が倍になります)。
そういう時、ハモを左右両端にコピペして両方にヒメ・ミコトのToneをそれぞれ適用するだけで、人間だったら当たり前のコーラスワークがボカロでパッと適用できるワケです。

これめっちゃ便利。
これには3万円の価値があると思う。本気で。

◾️VSTで起動できる

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DAWと同期して走らせられるのは有難いです。
一応マルチアウトもできます。

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、、、が、ここを境に苦言に転じさせてもらうと、

・VSTiの.dllインストール先がインストール時に選択できない

のは正直意味が分からないと思います(.dllインストール先指定のないソフトは初めて触れました)
VOCALOID公式に以下の記載はあるのですが、

「VOCALOID5 VSTi.dll」が格納されている以下の階層が、DAW側で認識できているか確認してください。
C:\Program Files\Common Files\VST2 (windows)
Library/Audio/Plug-Ins/VST (Mac)
(引用元 : https://www.vocaloid.com/support/faq/560 )

.dllをここから移動してしまうと、VOCALOID5にアップデートがかかる際に.dllを再度コピーする必要が発生することもあります。

なんで音楽制作ソフトのホスト側ではなくクライアント側の都合で.dllのインストール先を指定されなければならないんだ。
、、、とは、正直すげえ思います。

ってことで、以下、不満点を具体的に挙げていきます。

◾️画面分割が使いにくい

前述のAttack Release Effect等を使うエディットパネルが、何故か「ピアノロールの下」。
これを展開すると、作業環境がこんな感じになります。

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ハッキリ言って見づらい。

イマドキ、PCのディスプレイはみんな横長ですよね
普通、横長の画面が多い状況で、横分割の多いGUIって禁忌でしかないと思うんですよ。
なのでCubaseもStudioOneもAbletonもLogicも横は2分割、縦に3分割のGUIを採用してます。

VOCALOID5の開発の人は、縦長ディスプレイで開発してるんですか?

◾️操作系に一貫性がない

VOCALOID5、同系統の操作に対して、操作系が全く違うってことが散見されます。

例1 : パート分割と結合

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DAW上でリージョンの分割と結合って、割とセットで使う機能だと思うんですよ。
ところがVOCALOID5の場合、

・リージョン分割 : はさみツールに持ち替えてのクリックでのみ可能
・リージョン結合 : メニューコマンドでのみ可能

となっていて、頭が混乱します。

ちなみに、後者にはショートカットがありますが、前者には割り振られていません。

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普通、のりツールくらい作るんじゃないの?!
なんで同系統の操作で操作系が違うのさ?!

例2 : トラックの削除
「トラックの削除」は「トラック」メニューにはありません。
どうやって削除するんだ、、、と悩んでトラックヘッダーを右クリックすると、、、

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主語!主語を書いて!お願い!!
ここを「トラックを削除」に変えるだけでストレスが段違いなんですよ?!
(実際、他のDAWはだいたい「トラックを削除」です)

上は一例ですが、結構こういう「どうしてこうなった」事案が多いです。
「できるからいいでしょ?」って話じゃないんですよ。

◾️ラインツールが消えた

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何故消した。。。

パラメータは全てフリーハンドで書けというのか。。。

というかラインを引く方法そのものはあるんですが、パラメータの書き方がCubase式になってしまって、グリッドのクオンタイズ値でしか書けなくなったのは、「VOCALOID使ったことありますか?」って聞きたくはなります。
(一応、Ctrl+ドラッグでクオンタイズ値を小さくできます)
たぶんCubaseに操作系合わせたかったんだとは思うんですが、これがCubaseなら、オートメーションでMIDIパラメータを書くとか、回避法があるんですよね。

◾️パラメータのデフォルト値に合わせづらい

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64がデフォルト値のパラメータをエディットする際、普通は動かし終えたらデフォルト値に戻しますよね。
コレをね、戻す手段がね、

・Ctrl+クリック

だけなんですけど、、、これが、マニュアル隅々まで読まないと実行できないし、プルダウンメニューにすら載ってないんです。。。
(マニュアルのP91に記載があります)

重ねて書きますけど、「手段はあるからいいでしょ?」って問題じゃないですよ?

◾️字が細かい

僕のAbletonの画面と比較してみましょう。

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なんでこの文字サイズにしたよ。。。

◾️無駄な画面が多い

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一個前と関連するんですが、エディタ画面で歌手名のトコ、VOCALOID4までの感覚だと、ここクリックすると歌手を変更できると思うじゃないですか。

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できないんですよ。

歌手を変えるには、一度別画面に遷移しなくてはいけません。

また、この画面、歌手を変更してもした感じが薄くて、実際声聞くまで「本当に変わったのか」不安になります(実際、歌手の切り替えミスが頻発しました)。

「歌手は変わってるからいいでしょ?」ってお話では、当然ないです。

■総評

長々と書いていましたが、VOCALOID5って良い点も悪い点も割と「些細なこと」なんですよね。
良い点は僅かな改善だし、悪い点はただの「不親切」が大半です。
再生時のラグも、操作系の不統一も、どちらも「慣れれば/そうと分かっていれば気にならない」部分です。

でも、DAWで大事なのって、そういう「些細な事」の積み重ねですよね。
Ableton Liveが1世代バージョンアップしたからって、革新的な機能が一気に追加されることはそんなにないです。
多くは「フォルダトラックが入れ子にできる」とか「エフェクトが追加される」とか、そういう細かい追加・変更ばかりでしょ。
抜本的に色々変えたLogic Xの阿鼻叫喚は記憶に新しいところですね。

その点VOCALOID5って、なんかこう、「抜本的に色々変えようとして間に合ってない」感がすごい強いのですが、オープンベータならオープンベータだとハッキリ言ってほしいです。
それならそれで付き合うからさ。

以上!

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